1人目(2)
「どうした? リア?」
扉を開けたのは、俺の幼馴染で女戦士のリア・ウォーだった。
天職の啓示により、戦士としての道を歩む彼女は、俺たちの部隊では欠かすことのできないアタッカーだ。
今日の拠点奪還作戦だって、司令官で幹部のクリスタルゴーレムの打倒は、彼女無しでは困難であった。
その実績を含めて、リストラとはかけ離れた人物だろう。
などと思ってから、自分が既にリストラを考えている、受け入れていることに驚いた。
「ちょっと、装備について相談があってね」
「……分かった、外で話そう」
おそらくは新調かメンテナンスについてか。
金のことで悩んでいたのに、金の相談とは皮肉が効きすぎている。
宿屋を出て、広場にある丸太に腰かけた。
予算が決まっている以上、各自の装備を購入する際には、優先順位をつけさせてもらっている。
とはいえ、購入した記録と証書さえ国に送付すれば、それは経費として国が補填してくれていた。
こちらの懐は痛まないのだが、とりあえずの支払いは部隊の金から出さなければならない。
故に、いつでも潤沢に資金があるわけではないので、部隊の長である俺にお伺い立てることが、暗黙のルールとして成り立っていた。
まぁ、その暗黙のルールも今後は無くなってしまうかもしれないんだけど……。
「で、どうした? 今使っている装備は不満か?」
「そうだね、不満と言えば不満になるのかな? 実はだけれど、さっきの戦闘で剣が壊れちゃってね……見て?」
と、手に持っていた剣を鞘から抜いた。
「これは……酷いもんだな……」
その剣は、どうなったらそうなるのか分からないほど、剣先から根元に至るまで刃こぼれしていたのだった。
「クリスタルゴーレムを切ったせいだね」
「まぁ、硬かったしな……。とにかく、明日は鍛冶屋に行ってみよう。新調しなくちゃならんかどうかも俺には分からん」
「よろしく!」
……欠かせない人材、なのだが前衛職ということで防具をおろそかにするわけにはいかないし。彼女の力では、鋼の剣も容易く欠け、折れ曲がる。
攻撃を受けること多いのだから、治療や回復というコストがかかってしまう。
よって、部隊で一番の金食い虫が彼女なのだ。
冷静に考えてみれば、俺の幼馴染だし、賃金をカットしたとしてもなんだかんだ了承してくれそうではあるし、この戦争が終わったら金を渡すという約束しておくなんてのも出来そうだ。
付き合いの長さと深さで、一番リストラしやすい人物だなんて笑えなさすぎる。
「あと……もう一つお願いがあるんだけどさ?」
粗探しをしていた思考を、現実世界に戻して答える。
「どうした? なんか欲しい装備があったりするのか?」
「いや、逆。あの鎧なんだけど、少なくしてもいいかな?」
軽装備にしたい、ということか?
で、あればコストがかからなくて済むな!
渡りに船な提案に、ちょっとテンションが上がってしまう。
「少なくっていうのは、どういうこと?」
平静を装いながら、期待を込めて聞き返す。
「最近、敵も攻撃力が増えてきて、鎧じゃ防ぎ切れないことも多いじゃない? 魔法とかもそうだし。それなら、身軽になって避けやすい方が良いのかな? って考えた」
「なるほど」
よぉーし、よしよしよし! よおーーし!
心の中で小躍りしているくらいには、喜んでいる。
「そしたら、他の人達に防具とか買ってあげられるじゃん?」
なんだコイツ、タイミング良過ぎないか!?
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