2人目(17)
アースウォールを解除する。
こういった使い方の自由度があると、自分は土魔法向きなのだと改めて実感した。
石突きからの魔力放出を開始し、イレーツの船を加速させる。
それとともにバカでかい火球が俺たちを追い越し、敵陣へ着弾した。
リックの援護を受けて、さらに勢いを増して船ごと突っ込む。
さぁ、乱戦の始まりだ。
「ブレイブ、合わせて!」
横薙ぎの姿勢を取っているリアが俺に指示を出す。
「アースウォール!」
リアの足元に弧を描き、三度のアースウォールを放った。
盛り上がった地面はリアのグラウンドスイングでぶっ飛ばされる。
先程とは質量が桁違いの礫が一気に敵を薙ぎ払っていく。
「おまけだよ!」
途端、視界が薄暗くなる。
俺たちが合流した時に使われた船団が、再度浮き上がっていた。
いや……どれも船の形を保っていないから、船団というよりもただの木材の塊にしか見えない。
船の数にして五隻分の木材、それが一気に降り注ぎ、ドドドと地響きを立てながら敵を押しつぶしていった。
「なぁ、油って出せるのか? イレーツ?」
「まぁ、船にまつわるものだからねぇ……ただ、大量には出せそうにないよ」
「ふむ、やめておくか」
「ちょっとブレイブ、また変なことを考えているんじゃない?」
いやな顔をしながら、リアは俺に聞いてくる。変なことかどうかはともかく……。
「このまま火を点けようと思ってさ」
「やっぱり、そんな野蛮な盗賊みたいなこと考えて…………勇者がそんなことしていいの?」
苦虫を嚙み潰したような顔のリアを見るに、もしかして火攻めはこの世界では倫理的にダメなのだろうか?
「まぁ安心してくれ、視界が悪くなりそうだし、イレーツも油は出しづらいみたいだし止めることにする」
「そうして!」
「さて、お二人さん、いちゃつくのはその辺にして、本腰入れていくよ!」
「い! いちゃ……!!」
「だってよ、リア。このままもう一発グラウンドスイングだ」
「あーもう! 分かったよ!」
やけっぱちのように放った木片を含んだグラウンドスイングを、敵の本陣は見えない壁できっちりと防いでしまう。
あれを完璧に防ぐとはね……雑魚をあらかた片付けられて良かった。これで本陣に集中できる。
ふと、リックの方を見てみると、一人で敵の遠距離攻撃をさばいていた。
おそらく、こっちに飛んでくる攻撃も迎撃してくれているのだろう。
改めて規格外の男だと感心した。
「行こう、リックが頑張ってくれてる。とっとと片付けないと、後で何をされるか分からない」
「確かに、あの生臭坊主なら金でも要求してきそうだ」
イレーツが俺の右横に並んで歩みを同じくする。
「お金だけだったらいいんだけど」
反対側の左に、リアも追い付く。
さあ、いろいろとやってきたが、これからが本番だ。
戦力は兵隊全部合わせたって、きっとアイツの方が強い。