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追放(する側)勇者  作者: 睦月色
2/21

1人目(1)

宿屋の部屋で考え込む。


四人部屋だが、俺以外は泥のように眠っている。


体はへとへとだが、とても寝付ける状態ではなかった。


「どうするかなぁ……」


つい、声が漏れてしまった。


その声で仲間が起きてやしないか心配になる。


……どうやら大丈夫なようだ。


まずは、国へのお達しを伝えるかどうか。


これを伝えることで、もしかしたらボランティアとして部隊についてきてくれる仲間も居るかもしれない。


腐っても、勇者との正義の任務だし。


問題は、俺にそこまでのカリスマ性があるかどうか。


それに『この中の誰かがクビになる』と思ったら、モチベーションにも影響する。


チクってくる奴も居るだろうし、ゴマをする奴も居るだろう。


そうなると、チームとしての機能不全になりやしないかが心配だ。


反対に、クビにならないようにと張り切る奴だって出てくる。


それが空回りした時が怖すぎる。


俺の仲間が無能というわけでもないが、やる気のある無能が一番迷惑なのだ。


これは社会人経験から痛いほど身に染みている。


それに、頑張って頑張って、めちゃくちゃ頑張って失敗するのは、精神的にキツイ。


さらに、身の丈以上の努力や成果を挙げようとするのなら、失敗するのは目に見えている。


一般企業やスポーツなら、それも経験ではあるけれど、命がかかっている以上反動もデカい。


次に活かすなんてことは未来永劫訪れない確率も低くない。


「やっぱクビってのは言えないよな」


なら、クビにすることは伏せておいて、資金の減額だけ伝えるか?


一度俺が全員の賃金を回収して再分配。


金額は減るのだが、これならば仲間たち同士で不信感を生み出すことはない。


…………いや待てよ?


そうなった場合、俺が皆の賃金を着服しているように見えてしまうのではないだろうか?


俺ならそう見るし。


普段の信用がものを言うのかもしれないが、俺だって人間だ。


そりゃたまには散財することもあった。


いつも節約だの金の管理だのを行っている俺が、そんな風にすると、普段から金遣いの荒い奴に比べて落胆の色合いが強かったのを覚えている。


その不信感が結局仲間のモチベーションに影響を与える。


死線を超えてきた俺たちは、士気がどのくらい戦闘に大事なものか、十分承知していた。


しかし、俺に不満を持つということは、部隊から抜けたいと申し出る奴も居るのではないだろうか?


そうなれば、俺としても願ったり叶ったりな訳だ。が、戦力が低下してしまうのは何としても避けたい。


ふむ、ならば言わないようにするのが、良い……のかもしれない。


―――分かっている。


これが保留というの名の逃避であることは、重々承知している。


これがジャパニーズスタイル、とりあえず保留である。


いやいやいや、そんな直ぐに決められないって! などと開き直りながら、とりあえず俺はどうやって仲間にそれを伝えるかを考え始めた時―――。


「ブレイブ、起きてる?」


扉が開き、聞きなれた声が俺を呼んだ。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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