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追放(する側)勇者  作者: 睦月色
19/21

2人目(15)

機は熟したのか、敵の本陣からいよいよ魔法と物理、両方の遠距離攻撃が飛んでくる。


「敵も味方も関係なし、か」


ほぼ大勢は決したとはいえ、前線には魔族はまだ残っている。


様々な属性の魔法が人も魔族も飲み込んでいくのを眺めて、相手の恐ろしさを改めて感じた。


リックが作り出した結界の薄い膜のせいだろうか、他人事のような―――まるで映画でも見ているように残酷な光景を眺める。


「ブレイブ、デカいのが来るぞ」


リックの声に、自然と体が緊張した。


確かに、強力な魔力を感じる。十中八九、指揮官の攻撃だろう。


リックの結界から歩み出る。


自身を落ち着かせるように、焦らず、ゆっくりと。


そうすることで、恐れが和らぐような気がした。


近くに刺さっていた、誰のものとも分からぬ剣を引き抜く。


と、同時に前方より強大な魔力の塊が飛んできた。


炸裂すれば多大な被害が出るだろう。


勇者の加護―――それは対魔族に特化した能力だ。


魔の存在を否定するかのように、俺の魔力は魔族を蝕む。


傷口から流れ込めば衰弱し、回復魔法も効果が薄い。


とどめを刺せば、死体すら残らず霧散する。


前世のRPGゲームで敵を倒せば消えるのとそっくりだ。


そして、それは魔族の魔力に対しても効果を発揮する。


山かと思えるほど巨大な魔力の塊に、ちっぽけな剣を片手に飛び掛かった。


剣を媒介に、魔力を大きく広げ、壁を作り出す。


剣が軋み、刀身が蒸発していくのを眺めながら、魔力の塊を受け止めた。


俺の魔力が塊を溶かすように削っていく。


激突の瞬間は一瞬だっただろう。しかし、恐怖から永くゆっくりと時が流れた。


少しでも壁が途切れれば、あっという間に魔力の塊に飲み込まれ、いかに退魔の体質だとしても命を落としてもおかしくはない。


単純な物理攻撃にこの能力は通じないし、質量を伴った魔力の攻撃も不得手だ。


剣から展開された魔力の壁頼りとなるが、あいにくリックのように強力な防御ではない。


氷や土などの物体が混ざっていれば、容易に突き抜けていくだろう。


来るかも? 有るかも? と考えれば考えるほど、死へのイメージが増大していく。


早く終われ、早く終われと念じれば念じるほど、塊の進みは遅くなった。


震える体、こわばる顔……ああもう、いつになっても恐怖ってやつは慣れやしない!


―――逃げ出したい心をまとった体が暖かな光に包まれる。


リックか!


この感じは……身体能力向上の強化魔法と回復魔法。


それは、何よりも背中を支えて勇気づけたくれたのだった。


気付けば震えが止まっている。


剣を握る手に力が入り、魔力をさらに放出した。


敵の攻撃魔法を飲み込むかのように覆いかぶさり、次から次へと霧散させていく。


その時にはもう、悲観的な考えは一切頭の中にはなかった。


俺が止める。止められる。


使命感と自信を伴った気迫が、魔力の壁を更に厚く熱くしていった。

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