2人目(14)
砲撃の位置を頼りに、二人との合流を目指す。
「リア、後ろはどんな感じだ?」
「んー、立て直している感じかな? 直ぐには襲ってこないと思う」
「よし、それなら俺たち二人で前線を挟み撃ちして、リック達と合流しよう」
「分かった!」
勢いそのままに、剣を持った魔族に槍を突き刺した。
リアはすぐさま剣を奪い去り、切り付け始める。
「フレイム!」
土属性が得意だが、他の属性も使えないというわけではない。
ただ、上手ではないというだけで。
とりわけフレイムに関しては、人様が見れば笑ってしまうほどだ。
本来なら火球を相手に飛ばす魔法だが、俺の場合、手からそのまま炎が噴出され、飛んでいかないのである。
リックは大笑いしたし、ジャンは手の解剖をしたがる始末。
それだけ訳の分からない現象らしい。
しかし、火炎放射器のような俺のフレイムは、こういった集団戦において最適だと思っている。
誤射の心配が少ないけれど、なかなかの範囲を攻撃できるって、この為にあると思いませんかね?
火だるまになって、もがいた敵が陣形を乱してくれるのも見過ごせない効果である。
その様子を機と見たリックとイレーツが、俺たちと合流した。
何も言わずとも意図が伝わるのは助かる。
「ブレイブ、行ったり来たり忙しそうだな」
駆け付けるやいなや、敵を殴りつけながら軽口をたたくリック。
「ああ、手伝ってくれリック」
「そんなに手強そうなのか」
「多分な。護衛の連中で奇襲を防ぎやがったし」
「ふむ、指揮官の実力はまだ分からず、か。不確定要素が多いなら万全で挑むべきだな」
「ただでさえ部隊を分けているし」
「ブレイブ、私はどうする? また船団で奇襲をかけるかい?」
「そうだな、俺が合図するまでの間で船団を準備してくれ。リアはその護衛」
「了解、リア、頼んだよ?」
「分かった!」
両手を胸の前に組み、仁王立ちするイレーツ。
何でもこの姿勢がチャージする姿勢だそうで。
さて、本陣の様子を見ると、陣形が直され、こちらへ遠距離攻撃の準備をしている。
あまり時間はなさそうだ。
「誰か、メイスとか調達できないか? 鉄杖でもいいけど。正確に言えば刃物以外」
「まったく! ブレイブといい、リックといい、行き当たりばったりすぎるでしょ!」
リアが雑にメイスをリックに投げて寄越す。
結構な勢いだから、ちょっと怖い。
行き当たりばったりの行動は、今の彼女には逆鱗らしい。
「これは、支給品より上等な品だな」
「リックのもか。俺の槍も支給品よりずっと良い。剣を三振り、槍とメイス一本ずつを用意しておこう」
「なかなかメイス持ちが居ないんだがなぁ……」
すると、俺の足元にドスドスと武器が飛んでくる。
未だお冠のリアの仕業だ。
「……仕事が早いことで。イレーツ、今で何隻だせる?」
「二隻だね」
「了解。敵の遠距離攻撃の後に、ありったけの船団で突っ込むぞ、それまで増やしておいてくれ」
さて、ここまで敵を減らせば、国の兵士たちだけでここを抑えられるだろう。
少数精鋭部隊の本領を見せる時が来たのだ。




