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追放(する側)勇者  作者: 睦月色
17/21

2人目(13)

槍に持ち替えて、広範囲の敵を相手取れるようになると、進軍スピードは加速した。


態勢を崩しさえすれば、リアが勝手に仕留めてくれる。


俺も負けじと倒していくが、リアの攻撃力には敵わない。


既に結構な数の敵を倒しているし、戦線も押し返しているように思える。


すると、リアから一つ提案された。


「ブレイブ、大技使っても良い!? 後ろまでぶった切る!」

「ああ、良い案だ。その前に、ちょっと上に飛んでくれ!」


まるで重力を感じさせないかのように、ふわりとジャンプしたリア。


それに合わせて槍を回転しながら横に薙ぐ。


魔力にまとわせ、リーチと破壊力を増した槍は竜巻のように敵をなぎ倒していった。


「行け、リア!」


大技の隙を生まないために、辺り一帯を片付けておいた。


これで安心して技に集中できるだろう。


「極大魔力剣!」


見上げると首が痛くなるほどの大きさの魔力の剣を、そのまま振り下ろすリア。


敵の後衛まで一気に切り裂き、道がすっかり出来てしまった。


横薙ぎは出来ないらしいが、それでも十分広範囲だと言える。


「このまま突き進むぞ、リア!」

「了解!」


今度は俺が前に出る。


魔力剣の応用で、槍の石突きの部分から魔力を噴出させ、ロケットのように推進力を得る。


それに応じたリアが俺に乗っかって、おんぶのような格好になった。


背中に柔らかな感触を感じるが、今はそれを堪能している暇はない。


不格好ではあるが、これが一番早く移動できるのだから仕方がないだろう。


その間にも、イレーツの砲撃が敵の動きを阻害してくれており、リックも魔法を飛ばしている。


タスクが多いにもかかわらず、リックも器用にこなしてくれるものだと感心した。


いや、もしかしたらイレーツが無理やりやらせたのかもしれない。それでも実行できるのは大したものだが。


敵の後衛の配置を見る。


数の減った魔族が陣形を整えていた。


前後が入れ替わろうとしている。おそらく魔法攻撃組と後詰の前衛が動いているのだろう。


その中で動かない一団、とりわけ威圧感を放っている存在がいた。


コイツが指揮官か。


「リア、槍か剣を調達してくれ」


おんぶから離れて、リアが瞬く間に二体を仕留めた。と同時に俺は推進力を回転に変え、その場で旋回してから投擲した。円盤投げのような感じだ。


さて、今度は槍の即席魔力爆弾である。


危険度が分かっているのか、護衛の巨大なゴブリンがこれまた巨大な盾で受けていた。


「なかなかに厄介そうで……」

「地道に行こう、ブレイブ!」


リアが槍を投げて寄越す。


それを言葉もなく受け取ると、どっしりと構えなおす。


「地道、ね。じゃあ頑張りますかね」

「そうそう、直ぐに二人も来るよ」

「二人が来たら……よし、撤退だ」

「は?」


素っ頓狂な声を上げながらも、襲い掛かる敵をなぎ倒していくリア。


「いや、だから撤退するぞ、って」

「え? ちょ、そういうところいけないと思う。なんか、変に潔いというか、諦めが早いというか」

「冷静かつ合理的と言ってくれ」


ここまで引っ掻き回したのなら、十分効果はあっただろう。


奇襲による混乱も少ないみたいだし、護衛がちゃんと護衛の働きをしている。


「そしたら、またブレイブに運んでもらえば良いの?」

「物分かりが良くて助かる。でもって、またぶっ放してくれるともっと助かる」

「はぁ、分かったよ……でも、剣がもう限界だからね?」

「そこらの兵士さんから貰ってくれ。ここから引いて、挟撃する形を取るよ」

「分かった、じゃあよろしくね!」


リアそう言い切って直ぐ、目の前の敵に飛び掛かり、剣で一突きした後、その体を土台に飛び上がる。


さっきと同じ要領だ。


ただ、同じ技だと芸がない。


「土魔法、アースウォール」


地面を槍の穂先でなぞる。


その跡から、土の壁が波のように敵に襲い掛かった。


俺の得意な属性が土なのだが、勇者ってもっと光とか火とか雷とかそういうのじゃないのか? とも思う。


汎用性があるというが、もっとかっこいいものが良かった。


と、心の中で愚痴を言うと、隣にリアが降り立ち、再び大上段で構える。


「飛翔斬撃!」


魔力で出来た幾重の刃を塊にして飛ばす技。チェーンソーが飛んでくるイメージだろうか。


俺のアースウォールを事も無げに切り裂き、指揮官が居たであろう位置へ飛んでいく。


先程よりも範囲は狭いが隙も少なく切れ味も良い。


何より、アースウォールが目隠しとなっているのが良い。


極大魔力剣だと目立って仕方がないし。


リアが打ち終わるやいなや、俺はまた魔力の噴射を始めた。


慌ててリアがしがみつくと、敵陣に背中を向けて一直線に戻っていく。


ここでもアースウォールは背後から狙われるリスクを低くしてくれていた。


あれ? 土魔法、やっぱり便利なんじゃね?

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