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追放(する側)勇者  作者: 睦月色
16/21

2人目(12)

目的地に近づくにつれ、煙の存在が増してくる。


戦場の予感をひしひしと感じさせた。


船のスピードにも慣れた頃、三人に指示を出す。


「到着前にイレーツはありったけぶっ放せ。俺とリックはそのタイミングで補助魔法、素早さ優先で順にかけていく。着地した後、リアは味方の最前線に切り込んで、可能なら盾役を連携を。俺もリアに続いて前線へ行く。リックは回復もこなさないといけないかもしれないから、後衛はイレーツが指示を執ってくれ」

「ブレイブ、回復は前線の兵が優先でいいだろう?」

「ああ、後退している兵なら、味方の回復役がどうにかしてくれる……って思わないとキリがない」

「ははは、確かに」


俺の発言に、笑い声で応えるリック。


こういうドライなところも嫌いじゃない。


「ぶっ放す先はどうする? 前と後ろに分かれていたら、どっちを狙えばいい?」

「後を優先してくれ、強化を重ねられちゃ困る」

「じゃあ、そのまま私は着地後も後ろ狙うとするかね」

「だな。横から抜かれそうであれば、その都度リックと連携して対応してくれ」

「あいあいさー」


俺が教えた異世界の言葉をたどたどしく話す姿は、まるで少女のようにも見えてしまうから不思議だ。


「あのー、私はなんか細かい指示とかある?」


おずおずと手を挙げてリアが聞いてくる。


「細かいのはない……けど、デカい指示はある」

「え、デカい?」

「敵の指揮官っぽい奴まで、戦線から一気に切り込んでいってくれ。で、出来れば仕留めてくれるか?」

「あ、つまり……」

「そう、いつも通り」

「了解!」


さて、もうすぐで到着だ。


合戦の音が聞こえてくる。


風と戦いながら、望遠鏡で見てみると拠点がしっかりと魔族に攻められている。


しっかりと、とはどういうことかと言えば、軍としての陣形を保った魔族の集団が相手だということだ。


ただでさえ強靭な体の魔族が、鎧や武器に身を包んでいる。それだけでも大変な脅威であるにも関わらず、指揮に従って動くなんて、脅威どころか悪夢に近い。


「敵は統率が取れてそうだ。イレーツ、予定通り後方にぶち込んでくれ。俺とリックは詠唱開始」


俺たちの体が淡い光を帯び始める。


重ね掛けの状態でも足りないかもしれない。なんて弱気になっている自分を何とか押しとどめた。


情けない話だ。


勇者とは勇ましき者ではないのか。


恐怖に塗られていく心を、見栄とプライド、ほんの僅かな義侠心で勇気で塗り返していく。


「いくぞ! 武器を構えろ!」


そうそう、到着前に頼みごとが一つあったんだ。


「あ、ごめん、イレーツ、剣貸して?」

「ほんと、しまんないねぇ、ブレイブ……」


一番付き合いの長いリアが、呆れ顔でこちらを見ている。


やめろ、俺だってかっこつけたかったのに、恥ずかしさで死にそうなんだから。


「ははは、変に気負うよりはよっぽどいい。大物だな」


リックが背中をバンバン叩きながら楽し気に笑う。


「さ、これでよかったらいくらでも使って。船を横に向けるよ!」


二振りの海賊刀を抜き身でもらい、船の動きに体を合わせる。


即座に砲撃を始めるイレーツの海賊船。


その隙に戦線を確認し、リアを先頭に船から飛び降りた。


着地しながら魔族を一薙ぎすると、船が魔法で攻撃される。


…………うん、もう少し早く降りても良かったかもしれないな。


突如としてド派手に現れた俺たちに、魔族はうろたえていた。


反対に、味方は雄叫びを上げ、士気が高まったようだ。


リアと並走するように、そのまま敵陣を切り払っていく。


結果として戦線を押したことになり、同じ付近に降りたリックとイレーツも、後衛の位置になっただろう。


怒涛のごとく進んでいくが、既に海賊刀は一本折れている。


とてつもなく便利なのだが、強度に問題があるのが欠点だ。


しかし、これだけ魔族が居れば、問題ない。


敵が突いてきた槍をかわしてそのまま掴み、すれ違いざまに首を落とす。


リアの後方の敵に最後の海賊刀を投げ、魔族の槍を構えた。


うん、しっくりくる。



魔力を通さずとも、突ける切れる、石突きで殴ってもビクともしない。


なかなか良い槍だ。


間違いなく国から支給されているものよりもいいやつだ。しっかりしろ国。


欲を言えば、もう少し刃渡りがあるとうれしいのだけれども。


薙刀―――そんな形のものがベストだ。


祖母が習わせてくれた薙刀の経験が、まさかこんなところで活かされるなんて。


前世の記憶を思い出す……なんてことやってる場合じゃない。


その昔の経験を活かして、どんどん敵を倒していくんだよ!

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