2人目(11)
それからしばらく、大軍に出くわすこともなく、小さな群れを見つけては大砲で散らすといったことを何度かしただけで、順調に進んだ。
「んー……ブレイブー、ちょっと望遠鏡で見て?」
監視をしていたアヤチが、怪訝な顔で話しかけてくる。
「どうした、何か珍しいものでもあったか?」
イレーツの望遠鏡でアヤチが指差す方向を見る。
「これって、私たちが目指している拠点の方角よね? あの煙って、ちょっと黒くない?」
「どれどれ……」
望遠鏡を使ったとしても、一筋見える程度ではあるが、確かに黒い煙が上がっている。
目的地までそこまで近くはない距離で、しっかりと色が分かるほどとなれば、結構な火の手であることがうかがえる。決して煮炊きではないだろう。
「イレーツ、ここから拠点まではどのくらいだ?」
「ちょっと待っておくれ、ええと、今がここら辺だから……街道をこのまま進んだら、一時間半くらいだね」
時間の概念が俺の居た世界と同じで助かる。などと、どうでもいいことにありがたみを感じている暇はない。
今侵攻されているとすれば、このままだと手遅れになるかもしれない。
「イレーツ、船で飛ぶぞ! 御者さん! 角笛を二回お願いします」
「八人乗りで良いかい?」
「いや、荷馬車の護衛が必要だ」
二回の角笛は集合の意味。
慌ただしく他の四人が集まってきた。
「先行部隊は俺、イレーツ、リック、それにリアだ。アヤチはこのまま先頭の馬車で引き続き監視、何かあれば狼煙を上げる。リッターもアヤチと一緒に居て、戦闘の際は指揮を頼む。ジャンは……殿の馬車でクンと仲良く安全にな?」
「ダイジョウブ、ジャンハトモダチ」
「そりゃ何よりだ」
むしろ俺が残ろうかと思った。
ぶっちゃけ不安すぎる。
「ブレイブ、いつでも行けるよ」
「よし、頼む。アヤチ、最後に方角と仰角の指示を!」
「はいはーい」
何もない空間に、船が浮かんで現れる。
それに飛び乗ると、アヤチがイレーツに指示をした。
「もうちょい右ー、もうちょい上ー……あ、そこらへん」
アバウトな指示だな、おい。
何度かやっているこの移動法で、アヤチの勘を頼りに修正するのが一番精度が高いと分かってはいるものの、不安になるのは仕方ないだろう。
「じゃあ、行くよ! 振り落とされないようにな!」
とイレーツが、船を文字通りぶっ飛ばした。
緩やかな加速ではなく、ジェットコースターのような加速に内臓が気持ち悪い。
さて、酷いことになっていないといいのだが……。
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