2人目(6)
ジャンの広範囲の強力な魔法であっても元々の数が多い、撃ち漏らしがひるむことなく襲ってくる。
後続の人型の魔族は範囲が居であったし、魔法が効きづらそうな見た目な奴も居た。
さらに、馬や牛の形をした魔獣はなかなかのスピードだ。突破されれば、馬車は回避出来ないだろう。
前衛が交戦する前に少しでも数を減らしておかなくては。
走りながら、簡単な魔法を使う。
仕留められずとも、動きを鈍らせられれば良い。
ジャンやリックの魔法も飛んできているし、弓手のアヤチが精密な射撃で確実に仕留めていった。
とはいえ、数の差は歴然。
ついに、近接戦闘と相成った。
数体まとめてリッターが盾で押し込めば、リアはガンガン敵を切り払っていく。
その中で白眉はクンである。
血走った体を爆発させるかのように、目にもとまらぬスピードで屠っていった。
まさに狂戦士と言うに相応しい荒々しさに、美しい体術が組み合わさり、一種の芸術とさえ思わせた。
「速度増加!」
俺も前線に到着すると、まずは味方にバフを掛ける。
そして、腰に下げた二刀の剣を抜いた。ようやく参戦である。
支給品の細身の二本は体の大きい魔獣相手には心許なく、直ぐにでも折れてしまいそうだ。
しかし、俺にはリアのような膂力はない。ロングソードを使ったところで、骨まで断つのは難しいだろう。
故に、俺が多用しているのは刺突での攻撃であった。
それに斬った時の肉の感触が未だに慣れないというのもある。
皮膚を切った時。
筋肉を裂いた時。
骨を断った時。
そのどれもが生を感じさせたが刺突なら幾分緩和する。
それに、こんな乱戦なら肉に食い込みづらい刺突の方が良い。
冷静に喉、横っ腹、みぞおちに当たる部分を突いては動き、突いては動きを繰り返していった。
どれだけ注意を払っていても肉や骨に食い込んで、剣が抜けなくなる時は来る。
魔獣がもがいて、巨体を揺らせば剣はあっさり折れてしまった。
折れた剣はそのまま投擲し、残るもう一本で戦闘を継続する。
元々ちゃんとした二刀流というわけでもないし、戦力が落ちることもない。
もう一本が折れれば、素直に後退して魔法で攻撃するとしよう。
所詮安物だ。むしろ折にかかる勢いで。
「魔力剣」
魔力を剣にまとわせる魔法だ。
込めた魔力の量で切れ味とリーチが増すものの、剣の耐久度は大きく落ちる。
しかし、その切れ味は、屈強な魔獣の肉体をまるでケーキを切っているみたいに切り裂いた。
リアやクン、そしてジャンのようなポイントゲッターではないが、俺も少しはスコアを稼がせてもらおうか。




