言葉
さかなが、このちいさな水槽から出て行きたがっている。
ひろい海に出してやろうとすると、外から蓋をされた。腹が立って、内側からも、さかなが出ないように鍵をかけた。
でも蓋をしてきた奴が、他のさかなを無理矢理引っ張り出していく。
水槽の水が沸騰しそうだ。このままではさかなが死んでしまう。
だから私は、他の世界に旅に出る。
深く、深く、沈んでいく。
さかなが死んでしまわないように。
お湯を水に戻すために。
水を水のまま保つために。
さかなは、どんなさかなでも、どんな色でも、どんな見た目でも、海に出してあげないと、きっとそのうち、溶けて消えていってしまうだろう。