表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【十七文字のポエム】落語風

作者: 紫李鳥

 



 梅雨が大幅に伸びちまって、暑っちい、暑っちい、って嘆いた夏はどこへやら。あっという間に、もう秋だ。


 やっぱ、なんてったって秋は魅力的だ。


 なー?食欲の秋に、スポーツの秋。秋刀魚(さんま)は、もう食ったか?


 不漁のせいで高くて買えねぇから、食いたくても食えねぇだと?


 同感だ。団扇でパタパタしながら七輪で焼く、あの秋の風物詩が見られないのは寂しいよなぁ。


 運動会はどうだった?ビリだったか?


 昨今は、徒競走がねぇんだって?あのかけっここそが運動会の醍醐味(だいごみ)じゃねぇか。


 一等賞を狙って全速力で走る。それこそが子どもの闘争心を育むのに役立つと思うんだがな。


 ま、ものの見方、考え方は人それぞれだ。深入りはやめとくよ。


 それから、芸術の秋に、読書の秋だ。


 絵は描いてっか?写生の一つもしろ。


 本は読んでっか?マンガばっか読んでっと頭がパッパラピーになるぞー。


〈灯火親しむべし〉


 なんて、いい文句があるじゃねえか。


 格好の季節だ、本をいっぺぇ読みなって意味だ。


 えー?読書はスマホでしてるって?


 スマホもいいが、紙もなかなか味があるぜ。


紙魚(しみ)”なんて、乙な日本語もあるじゃねぇか。


 紙を食う虫のことだ。


 なー?なかなかいいもんだろ?


 スマホにはそんな乙なもんはねえだろ?


 えー?乙はねえが、丙はあるって?


 なんでい、そりゃ?


 読み終わった後に、「へー」って納得するって?……単なるダジャレじゃねえか。


 日本人は幸せもんだ。なぁ、このわび・さびは、ストレート好きな外人さんには伝わらねぇだろうな。


〈目病み女に風邪引き男〉なんて、粋なことわざがあるが、外人さんに直訳したら、「Oh no!ダイジョーブでしゅか?オダイジに~」って、同情されんのがオチだ。


 えー?こりゃあ、江戸時代の美意識を言った文句だ。


 なー、目を病んでる女は、その潤んだ目が(なまめ)かしく見え、風邪を引いてる男は、喉に白い布を巻いた様子が小粋に見えるてぇ意味だ。


 なかなかのもんだろ?日本語ってぇのは、奥深いやなぁ。


 おっとー、制限時間が迫ってらぁ。本題の方が短くなっちまったぜ。やべえ、やべえ。


 秋を詠んだ句も数多(あまた)あるが、中でも有名なのが、


【柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺】(正岡子規)


【菊の香や奈良には古き仏達】(松尾芭蕉)


【秋深き隣は何をする人ぞ】(松尾芭蕉)


 なんてな。なかなか味わい深いだろ?


 えー?俳句はちんぷんかんぷんで興味ねぇって?


 ま、若いうちから俳句に親しんでたら逆にキモいやな。


 若いうちはポエムでいいさ。もうちっと大人になったら、十七文字のポエムにも興味を持つようになるさ。


 人を好きになったり、失恋したり、突然、季節の草花を愛でたくなったり、ぼーっと空を見上げるようになったら、自然と詠むようになるもんよ。


 ここで一つ、(おい)らの句を披露すっか。


木洩れ日(こもれび)(しおり)にしたる秋の昼】


 どうだ、いいだろ?え?いまいちピンと来ねぇって?じゃ、恋をするまでの宿題だ。


 家ん中でケータイ読書ばっかしてねぇで、小さな秋を見つけに散歩でもしたらどうだい。


 公園のベンチで読書してたら、もしかして恋が生まれて、十七文字のポエムが閃くかも知れねぇぜ。


 え?“落語風”なら、最後にオチがあるだろうって?


 オチは言わねぇでも、季節柄、落ち葉の舞い散る頃じゃねぇか。もう、オチてるよ。


 幕もそろそろ、オチるぜ。



※語り:秋風亭流暢しゅうふうていりゅうちょう(架空の噺家)






 ■

 ■ ■

 ■ ■ ■

 ■ ■ ■ ■

 ■ ■ ■ ■ ■

 ■ ■ ■ ■ ■

 ■ ■ ■ ■ ■

 ■ ■ ■ ■ ■

 ■ ■ ■ ■ ■

 ■ ■ ■ ■ ■

 ■■■■幕■■■■

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ