陛下の進言
可愛い弟へ
やあ、エル。
先日はどうもありがとう。世話になったね。
ジークにも相当気を使わせてしまっただろうね。彼にも謝罪と感謝を伝えておいてほしい。
久しぶりに兄弟で話が出来てよかった。
お前は忙しそうだったけど元気な顔が見れて良かったよ。
さて、早速本題に入ろうと思うのだけれど、
アルトステラ嬢は王都には戻らないらしくてね。
もう知っているよね。
彼女が王都に戻ればついでにきっとお前も着いてこようとするだろう?
それはとても都合が良いと思っていたんだけどね。
彼女ったらなかなか殊勝なことを言ってきたものでね、驚いたよ。
どうやら彼女はただのお人形を卒業したらしいね。
なかなか素敵じゃないか。
正直、お前の趣味が悪いとしか思っていなかったけれど今の彼女は悪くないね。
ああいう、反抗的な目は悪くないよ。うん、ねじ伏せてつい泣かせたくなってしまうよね。
実に悪くない。
………待って、ごめん、エル。冗談だから、冗談だからね破るのだけはやめてよ。
話を戻すけど、
ただね、行ったり来たりする彼女とお前が分散するのは都合が悪い。
行ったり来たりする君ら2人を監視して守るというのはさすがに私も手が足りないからね。
この件に関してこっそり使える手足というのはあまり多くないんだよ。
だからお前がアルトステラ嬢を守りたいというのならできるだけ共に行動してほしい。
私は有事の場合、損害の多い方を優先するからね。
この場合、優先すべきはお前の方だ。
分かったね、忠告はしたよ。
肝心なお前が死ぬことは絶対に許さない。
お前の死に場所はまだここではないからね。
いい?絶対にだ。いまお前を失うのはひどく、惜しい。
本来ならアルトステラ嬢に王都に滞在してもらって社交界で目立たせてそれを囮にのこのこやってきたフィルメリア御一行とそれに付随する城以外の反乱分子を捕まえる予定だったんだけど。
その間、お前のことは拘束でもして牢かなにかにぶち込んどこうかなって思ってたんだよ。
それが1番手っ取り早くて安心安全だろう?
まったく………うまくいかないものだね。
仕方がないか、昔からお前は兄の言うことを聞かないやつだったからね。
フィルメリアのことは本当にすまない。
お前の大事なお姫様を使うことになったことも。
ただ禍根はすべて摘んでおきたいんだよ。
わかって欲しい。
追伸
お前の邸の食事、どうにかならないのかい?
あのかったい味のないパンと薄い味の木の実が毎日毎日……そりゃあ痩せるはずだよ。
とにかく、まともなものを食べなよ。
ジークだって嫌気がさして出て行ってしまうんじゃないかな。
料理ができないのなら召使いの1人でも雇いなさい。
お兄ちゃんより




