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またもや説明回です
エルレイン殿下は正妃、マーガレット王妃陛下の実子である。
対して5つ歳上のヴィクトレイク殿下は正妃との間に何年も子が出来ずに設けられた側室、フィルメリア様の子。
ネイトフィール王家に側室が設けられたのは実にうん10年ぶり(フローラがごまかしていたからどうやら知らないみたいである)らしい。
ネイトフィールでの王位継承権はいかなる場合でも
出生に序列する。
例え側室の子でも先に産まれたもののほうが継承位は高いのだ。
しかし王家の血筋的にはエルレイン殿下の方が断然優れている為彼を次期国王に、との声も多くさらには両王子とも甲乙付け難い優秀さでどちらが次期国王になってもおかしくないとされているわけで。
主に貴族間ではどちらの王子が次期国王になるか、そしてどちらについた方がいいのか、バチバチ火花が散らされているらしい。
そんなこともあり、ヴィクトレイク殿下が3つの折漸く産まれた王子の婚約者にと国で4家しかいない公爵家のうち3家が歳の近い娘を差し出した。
その2年後に産まれたエルレイン殿下にマーガレット王妃陛下は己の面子とプライドと威信をかけて名だたる身分の婚約者候補を侍らせ力を示したかったのだが、公爵家3家は既にヴィクトレイク殿下の婚約者候補となっているものだから、どうにかルーファス公爵を説得しアルトステラと、家柄のランクが足りないなら数で勝負とばかりに侯爵家から3人婚約者候補をお選びになったらしい。
フローラの話によるとだいたいこんなところで、彼女はくだらないわ、と呟いた。
彼女の話には大変同意するが、変な期待を持たせただけで、結局嫌いな女と結婚させられることになるエルレイン殿下が可哀想で仕方が無い。
それとも彼ははじめからわかっていたのだろうか。
分かっていたからこその態度だったのか。
彼がわたしをあの冷めた瞳で見る理由をやけに納得したのを覚えている。
というか、興味が無い云々にしても当時のわたし、知らなすぎである。
まあ、あれだけ露骨に避けられていてまさか婚約者に選ばれると思いもしなかったのもあるけれど。
これは公爵家の娘として由々しき事態だ。
へたに父公爵にどうにかできないのかと縋りつかなくて正解だった。
ああ、そういえばフローラはこうも言っていた。
「高貴な産まれの女性ってプライドが馬鹿みたいに高くて困るわ」
物憂げにアーモンド型の瞳を伏せる彼女はそれは美しく会場の男性の視線を集めていたけれど、それよりもわたしは「お前が言うか」というおよそ淑女とは思えない言葉を飲み込むのに必死だった。