彼女の幼なじみ達
「明日暇だよな?」
予定があってもキャンセルしろよ。みたいな言い方をする友人は1人しかいなかった、祐介だ。
「ああ、特に予定入ってないが」
そして、本当に暇だった俺。
「なら、みんなで遊びに行かない?」
「みんなって誰さ?」
「俺とおまえ、それから亜美と由美と星子で」
祐介の幼なじみ、全員集合じゃないか?!
「もちろん、良いだろ?由美がおまえと会いたいって言ってるし」
そりゃ、親友に恋人が出来たら会ってみたいと思うだろうけど。
俺はまだ心の準備が出来ていないんだよ。
「もちろん、オーケイだよな?」
気乗りのしていない俺の表情を読み取ったのだろう、祐介は強引に話を進めてくる。俺は仕方なくオーケイの返事をした。
俺は気の弱い典型的なイエスマンなのかもしれない・・・・。
翌朝、祐介との待ち合わせの場所に俺はいた。
といっても、祐介の家に俺はいる。俺以外はみんなこの近所に住んでいるから遠くで待ち合わせる必要なんてなかった。
「おまえが星子と付き合うとは思っても居なかったぞ。例え別の誰かに告白されても断るモノだと思ってたからな」
みんなが揃うまで祐介の部屋でくつろいでいる。
部屋に置いてあるソファーの座り心地が気に入っている。
「ああ、俺もそう思ってた。
だけどさ、家に来て告白されてさらに返事を求められてさ。それも家族の前で、そんな状況で断るのは無理だったよ」
確かにそうだった。本当は断るつもりだったのだから、誇れるモノが何もない俺にだって想い人の1人はいたんだから。
「ははは、確かにそうだな。それもあんな美少女だったら絶対に断りにくいな」
「それに、俺と星子さんじゃ釣り合わないのは解ってるしね」
「それは卑下しすぎだ。結構お似合いだと思うぞ」
何処をどう見たらお似合いに見えるか聞いてみたいモノだ。
そうやって話してるうちに全員が揃った。
香山祐介、芦屋星子、如月亜美、如月由美。
4人とも美形でなんか普通の俺が一緒にいるのが場違いな気がしてくる。
「あなたが雨夜潤平くんだよね?はじめまして」
亜美さんに双子の妹がいると聞いていたけど、本当にそっくりだった。
ウェーブのかかった赤い感じのする茶色い髪がとっても似合っていて大人びているようにも見えるし、可愛らしい少女にも見える。
「はじめまして、あなたのことは祐介から聞いてます」
「私も雨夜くんのことは星子からたくさん聞いているわ」
そう言って彼女は妖しい笑みを見せた。いったい、どんな話を聞いているのだろうか・・・・。
「えーと、どんな話しをかな?」
心配になって聞いてみる。
「ふふふ、内緒ですよ」
亜美さんとは違った妖しくも可愛らしい笑みを見せてはぐらかされた。
不覚にもその表情に胸がキュンと来た。
「由美、私の潤平さんを誘惑しないでね」
不意に星子さんに腕を取られた。
みっともないことに俺はふらつくように星子さんに抱えられる。
「大丈夫だよ。俺なんてきっと相手にされないから」
星子さんを安心させるように俺は言うが由美さんは
「それはどうかしら」
と妖しい笑みで俺に微笑んだ。
ボーリングなんて久しぶりだった。
結局俺たちはボーリングをしに街まで出ている、得意ってわけではないが初めてやるわけでもないので恥をかくことは無いだろうとたかをくくっていた。
「ビリになったら罰ゲームってルールでやらない?」
そんなことを言い出すのはもちろん祐介。
「いやよ。この前、私がビリだったし」
自信なさそうな由美さん。
「やってもやらなくてもいいよ」
勝つとも思っていないが負けるとも思っていない亜美さん。
「ビリの人がトップの人の言うことを何でも聞くっていうのは?」
トップになるつもりでいる星子さん。
「ところで、みんなって上手いの?」
ちょっとだけ不安になってきた俺。
それでも自分がビリになるとは思ってもいないが。
甘かった。
彼女たちは勉強やスポーツだけなく何に対しても万能だったのだ。
「よしっ!!」
初っぱなからストライクを出す祐介。
俺たちは手を挙げて彼を迎える、罰ゲームがかかっていたから内心は相手のミスを望んでいたのは口には出せないが。
次に投げた亜美さんはスペア。
3人目の由美さんはスペアを外すも9本倒してる。
「あらら・・・」
俺が投げた玉はちょうど真ん中に辺り、左右にピンが一本ずつ残る結果となった。
2投目も同じように真ん中を通り8本で終わる。
そして、星子さんは緩やかなカーブを描き見事にストライク。
嫌な予感はしていたんだ・・・・。
祐介はストライクの後はスペア、亜美さんも由美さんもスペアをだす。
少し焦った俺はストライクを狙って思いっきり投げるが慣れないボーリングでうまくいくはずもなく、スペアどころか3本ほど残した結果となった。
「今日は調子良いみたい」
上手だとは思っていたが、星子さんは2回目もストライク。ビリの俺との差が広がっていく。
「ストライクだわ」
「っち、スペアか・・・・」
「倒れて良かった」
「上手くいったみたい」
4人とも上手すぎるよ。
なんで普通に130を超えるかな・・・・。
星子さんに至っては160を超えてるし。
「結局ビリは潤平かな?」
敗者を見下ろすように祐介は俺に言う。
そして、トップの人は俺になにをさせるか考えていた。