妹の家庭教師と俺との関係
暗記することは苦手だった。
数学や物理の問題なら1つの公式を覚えていればそれを応用していくつかの問題を解くことが出来る。だけど、国語や歴史などは覚えたことを1つに付き1つの問題しか解くことが出来ないのだ。
だから、俺は教科書と睨めっこしながら問題集に答えを埋めていく。こんな歴史の年号を覚えて将来の役に立つのかは解らないが。
「ここ違うわよ」
間違いを見つけたらしく先生が後ろから声をかける。
先生と言っても俺にとっての教師じゃない、妹の家庭教師だ。
「俺の勉強は見なくてもいいよ」
間違いを指摘されてちょっと反抗的な態度を取ってしまう俺、そう言うところが子供っぽい。直そうとは思っているのだが。
「だって、同じ大学に行って一緒にキャンバスライフを楽しみたいんだもん。私のために頑張ってね」
星子さんは優子との約束通り本当に優子の勉強を教えている。それも週に3回、うちに来てくれているのだ。
ついでに星子さんよりも成績の悪い俺も勉強を教わることになってしまっていた。
そりゃ、2人が勉強してる最中に俺だけが遊んでいるわけにもいかなかったし。
「星子さん、ここ教えて」
優子は数学の問題を指さした。
その問題ぐらいなら俺でも解るのだが、優子曰く俺よりも星子さんのほうが教え方が上手だと言う。
「この公式を使えば解けるのよ。xとyにそれぞれ数字を当てはめて計算してみてね」
星子さんは自分の勉強をしながら、妹が解らないところがあればそれを教えている。
一緒に勉強をして思ったのだが、彼女は本当に頭が良かった。
2時間の勉強が終わると俺たちは休憩することにしていた。
あまり遅くまで勉強してると星子さんの帰りが遅くなるからだ。
「さて、今日は終わりにしようか」
だから、俺は勉強を終わらせることにした。
「優子がわがままを言ってごめんね。めんどくさかったら無理しなくてもいいんだから」
勉強が終わると俺は星子さんを送るのが習慣となっている。
夜道を女の子1人で帰すわけにはいかないし、なにより最近は彼女と一緒に歩くのが楽しいと思い始めていた。
「いいのよ。こうやって潤平くんに送ってもらえるんだから」
そう言って彼女は俺の手に指を絡ませてくる。
俺は自分が思っている以上にウブだったらしく、最初のうちは思わず手を引いてしまっていた。慣れてきた今でもきっと、顔が真っ赤になっているだろう。
そんな俺とは正反対に彼女は積極的だった。
「もし、感謝してるならお礼にキスして欲しいな」
上目遣いで彼女は俺を見る。
そんな目をされたら、断れないよ。
それでも、俺は
「もっと、ムードのある時にね」
と、言ってなんとか断る。
心の中では彼女とキスをしたいと思っている自分がいる。
だけど、そんなことをしてしまったら、きっと今以上に彼女に惹かれてしまうだろう。
もし、近い未来に彼女と別れることになったときに俺が彼女から離れられなくなってしまうのが目に見えている。だから俺はなるたけ彼女に惹かれないようにと心がけていた。
でもね、星子さん。それでも俺は君が大好きなんだよ。