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夜空と星  作者: 小田桐
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初めてのデート?


「待たせたかな?ごめんね」


「ううん、楽しみで私が早く来すぎただけだから」


「お兄ちゃん、デートに妹を同伴させるのって間違ってると思うよ」


 星子さんに日曜日にデートにと誘われたが妹との約束があると言って断った。

 それなら私も一緒について行って良いですか?と言われ今に至る。


「似合ってますか?思いっきりおしゃれしてきました」


 クルリと一回転して見せる。淡い色をしたスカートがフワリと揺れ不覚にもドキドキしてしまった。

 何を着ても美しいと思っていたが今日は一段を綺麗だ。


「うん、すごい似合ってるよ」


 俺は思ったことを素直に口にする。

 妹は呆れたように


「惚気るなら私が居ないときにしてよ」


 と呟いた。





 男と女って生き物として何かが違うと思う。

 特に買い物、周りを見ても退屈そうに待たされている男どもがやることもなくベンチに腰をかけたり無感動に恋人の後を追いかけている姿が目に付いた。


「お兄ちゃん、これ似合うかな?」


 可愛らしいフリルの着いたワンピースを手に取った優子がはしゃいでいた。


「潤平さん、これ似合うと思います?」


 星子さんはちょっと大人びたデザインのブラウスを手にとって鏡に自分を映している。


「2人とも似合ってるよ」


 と俺は言う。もっと言葉があるだろうけど、同じ事を何度も繰り返されたらさすがに疲れてしまう。

 この店に入ってすでに1時間ほどたとうとしていた。



 優子と星子さんはすっかりうち解けていた。

 星子さんはうちの両親とも仲が良くなっている。


「とりあえず、何処かで休まないか?」


 元気いっぱいの彼女たちに俺は提案する。

 2人とも服を見て楽しかったかもしれないが、待たされる俺としては疲れる時間だった、別にそれを言うつもりはないけどね。


「そうだね、のど乾いたよ」

「うん、そうしましょう」


 俺の意見が受け入れられて少しほっとした。

 このまま、別の店に行くとなると俺はきっと死んでしまう、いや大げさだけどね。


 ハンバーガーが売りのファーストフード店に俺たちは入った。

 俺はポテトとコーラを注文し、優子と星子さんは飲み物だけを注文した。

 予想はしていたが、お金を出すのもトレーを運ぶのは俺だった。


「潤平さん、ごちそうになります」

「お兄ちゃん、ありがとうね」


 2人から礼を言われる。だが、優子は俺が金をだして当たり前的な表情だ。

 妹の育て方を間違ったかな・・・・。


「いいよ、気にしないで」


 さすがに妹が同伴だと、同じ飲み物にストローを2本さして飲むっていう恥ずかしいことは要求されなかった。

 残念なようで少し安心した。


「星子さんってK高に行ってるでしょ?頭が良いんですね」


「そんなことないですよ。たまたま受かっただけで」


 謙遜しているが、星子さんはそのK高の中でも成績がトップクラスなのを俺は知っている。


「私も勉強したらK高に受かるかな?」


「優子ちゃんなら大丈夫だと思うよ。私が家庭教師でもしてあげようか?」


「ホント?」


「うん、優子ちゃんにもうちの学校に来てもらいたいから」


 こうやってみてると、俺よりも星子さんのほうが優子と姉妹に見える。

 もっとも、顔は星子さんよりも俺に似てるけどね。


「そんなこと言ってもらえると嬉しいなぁ」


 ホントに笑顔で優子は答える。

 優子は女の子にしては髪が短くボーイッシュ的な髪型をしているが、顔や表情は女の子特有の柔らかさを持っている。正直、可愛いと思えるほどに。

 基本的には俺も優子と同じような顔の作りをしているはずなのだが、男と女の違いで俺の場合は可愛くもないしかっこよくもない。少し弱々しい男の顔だ。

 俺も女に生まれたら可愛くなったのかもしれないと何度か思ったことがあった。


「俺と同じ学校に行きたいって言っていたのはどうしたんだ?」


 昔はお兄ちゃんっ子だったのに、中学生になって兄離れが進んできている。

 兄は少し悲しいぞ・・・。


「もう、忘れて。やっぱり、自分の可能性に挑戦したいし」


 なんだか、俺の可能性は安っぽいモノに聞こえてしまう。


「まぁ、いいけどね」


 と、俺は締めくくった。




「今日は楽しかったです」


 夕方になりかけるところで今日のデートがお開きになった。

 2人きりのデートならもう少し一緒にいるべきだろうけど、妹同伴のデートならお開きになっても良い時間だ。


「うん、今日はつきあわせてごめんね」


「いいですよ。ホントに楽しかったですから」


「星子さん、よかったら今度うちに来てくださいね」


 優子は星子さんにそう言って手を振る。

 ホントに懐いてしまっていたようだった。


「送っていこうか?」


 と、俺は言うが妹さんと一緒に居てくださいって気を遣われてしまった。

 なんだか、俺よりも家族の方が星子さんと仲が良い気がする。

 そう思っていたら、俺だけに聞こえる声で


「今度は2人きりで何処かにいきましょうね」


 って耳打ちした。俺も星子さんにだけ聞こえるように「うん」って答える。



 そうだね、今度は2人きりで本当のデートをしようね。

 って心の中で星子さんに呼びかけた。

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