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夜空と星  作者: 小田桐
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未来の思い〜水鏡由美〜


 まだ母親に抱かれて眠る幼子を少年は脅かさないようにのぞき込んでいた。


「この子は夕月って言うのよ。リオくん、仲良くしてあげてね」


 リオくんと呼ばれた少年は腫れ物を触るようにおっかなびっくりしながら幼子の手を握る。柔らかく温かい手だと思った。


「夕月、この人はお母さんの親友の息子さんだよ。大きくなったら、貴女も私たちのように仲良くなってくれると嬉しいわ」


 眠っている愛娘に母親は語りかける。

 幼子をベットに乗せ、少年の母親と昔話に花を咲かせた。

 少年はその間、ずっと幼い子をのぞき込んでいた。



・・・リオくん、あなたのお母さんはとっても積極的な人だったんですよ・・・


・・・夕月、あなたもそう言う人と恋に落ちて幸せになりなさいね・・・


・・・あなたとリオくんが恋人になるのもいいかもしれませんね。でも、星子みたいになってはいけませんよ。ふふふ・・・



 水鏡由美は親友の学生時代のことを思い出し、懐かしい笑みを浮かべた。






「昨日、家まで押しかけて告白してきた?」


 私の友人は信じられないことを口にした。

 全然面識のない人の家に押しかけるなんて、花も恥じらう乙女のすることじゃない。


「うん、それでね、今日返事を聞きに行こうと思ってるんだ」


 可愛い顔をして大胆なことを言う私の親友。

 昨日始めていった家に返事を聞きに行こうとしているなんて星子がこんなに積極的だとは今で知らなかった。

 だけど、積極的っという言葉で片付けられないほどに彼女の行動は異常だと思う。

 だからこそ星子を夢中させる雨夜潤平という男に興味を持った。


「その雨夜くんって人は迷惑じゃないのかな?」


 雨夜潤平、私たちの幼なじみである香山祐介の友人ってことは私も知っている。

 姉と同じ学校に通っているはずだから、もしかしたら彼のことを知っているかもしれない。


「どうだろ?私なんかが突然押しかけて迷惑だったのかもしれないかな・・」


 星子じゃなくても突然押しかけていったら迷惑だと思うよ・・・・。

 そう思いつつも、暗い顔をされたら


「大丈夫だよ。星子みたいな可愛い子に迫られて迷惑だと思う人はいないって」


 と、親友の応援をしてしまう。

 まだ逢ったこともない雨夜潤平くんに心の中で謝っておいた。


「そっかなぁ・・・」


「うん、自信もちなよ。星子は可愛いんだから」


 学校で一番可愛いのは星子だと思う。

 この子自身自覚はないだろうけど、男子生徒はみんな彼女を見ているのにその視線に気づいていないなんて。


「うん、由美にそう言われるとがんばれる気がする」


 心の中であまり迷惑をかけちゃダメだよと注意を促す。

 そんな風に星子と話していたら、目の前の知らないおばさんに星子が反応した。

 ちょっと綺麗なお母さんって感じのその人はスーパーに入るところだ。その私の知らない人はもちろん星子のお母さんでもない。


「こんにちわ」


 星子が駆け寄っていく。

 そのおばさんは少しギョッとした顔を見せたような気がしたが、笑顔で星子に応えている。誰だろう?


「えーと、星子さんでしたよね?」


「はい」


 その反応で解ったような気がする。

 きっと、雨夜くんって人のお母さんだ。


「もし、よかったらお返事を伺いにおじゃましてもよろしいでしょうか?」


「ええ、まぁ・・・」


 星子みたいな美少女が息子に好意を寄せているのを見てどう思うんだろう?って考えながら私は店を出た。

 星子はそのまま、雨夜くんのお母さんと一緒に買い物をしていた。




「告白の返事もらったよ!」


 星子からの電話の第一声がそれだった。


「つきあってくれるって」


「良かったね」


 電話越しの彼女はすごい嬉しそうだった。

 星子のそういう声を聞くのは久しぶり。


「しかもね、帰りに送ってもらっちゃった」


「それはすごいじゃない」


「手も握ったんだよ」


 恋する乙女って星子のことを言うのだと思った。

 私はその雨夜くんって人のことを知りたいから姉に尋ねることにしようと思った。


水鏡由美は私の別の作品「嫌いな主」「月と太陽」で出てくるヒロインである水鏡夕月のお母さんです。

二つの作品では登場することがなかったですが、いつかは彼女の話を書いてみたいと思い、書いてみました。

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