〜夏の思い出〜
夏休みがあとわずかになってきた。
何もすることがない平日の午後、両親は仕事に出かけていていない。優子は友達と遊びに行くといって午前から家を出て行っている。
退屈だったから星子や祐介に連絡を取ろうと思ったがすぐにやめた。
今日は優子の家庭教師の日だから星子とは夜に逢える。
祐介とは昨日遊んだばかりだ。
せっかくの天気なので外に出ることにした。図書館まで。
真夏でも図書館の中は涼しかった。冷房が入っていて、読書するのに心地良い。
そんな中、窓際で参考書を広げている佐織が目に入った。
佐織は受験生。優子よりも数ヶ月早く生まれた佐織は優子と同い年だけど、学年は一個上だった。
「ジュンくん、どうしたの?」
俺を見つけた佐織が声をかける。
俺は指を口に当てて静にと合図する、そしてミステリが置いてある棚から本を取り佐織の横に座った。
「本を読みに来たんだ」
そう言って俺は表紙を見る。
大きな河が表紙に描かれている、この本を初めて読んだのは中学生の時だった。
ちょうど、今の佐織と同じ中学三年生の今時期に。
あの頃の俺は本を読む習慣なんてなかった。
だから図書館に来たのは宿題として出された読書感想文の為に本を読みに来ただけ。
読書をしたことの無かった俺はどんな本を読んで良いのかをわからずに図書館の中を徘徊していた。
きっと、他の人たちにとって迷惑だったのだろう。1時間以上俺は本棚を見て歩いていたのだから。
だから彼女は俺に気づいていた。
高い位置にある本を取ろうと、悪戦苦闘している女性を見つける。
その人は女性でも背が低いらしく、頭ひとつぐらい俺よりも小さい。
俺は彼女の後ろに立ちその本を取ってあげる。
「ありがとう」
「いえいえ」
とびっきりの美人って訳でもなかったけどなんか控えめの感じのする可愛い人だった。
身近な人で例えるなら優子を少し大人っぽくした感じの雰囲気を持ってる人。
「さっきからウロウロしてるみたいだけど読みたい本がないの?」
やっぱり、目立っていたらしい。
俺は事情を説明することにした。
「そうなんだ、私も去年同じように宿題を出されたよ」
「へぇ、そのときは何を読んだんですか?」
訪ねると少し移動して2冊の本を出してくれた。
「なんか、難しそうな本ですね」
「うん、でも面白かったよ。でもこれは中学生の宿題向きじゃないかな」
そう言うとまた別の棚に案内される。
「夏目漱石とかが読みやすいんじゃないかな?『坊ちゃん』とか」
今でこそ、定番で読みやすい本だと言うことぐらいはわかる。
だけど、ガキだった俺は莫迦にされたような気になった。
あの人は分厚い上下巻の本で感想文を書いて俺に薄い本を読めっていうのは。
「ん〜、俺もあなたと同じ本にするかな」
「いいと思うけど、読書感想文に向かないよ」
「その本を読んで先生になんか言われたの?」
「もっと、中学生らしい本を読めって言われたわ」
その人は俺が知っている教師の真似をして口にした。
お互いに少しだけ笑いあった。
「なら、俺も同じこと言われるのが楽しみかな」
俺はその人にお礼を言ってその本を借りて家に帰った。
確かに感想を書くのが難しい本、内容だってわかりにくい。
俺が書いたのは感想文というよりもあらすじを書いた感じになっていた。
潤平の初恋の話を書いてみました。
もちろん、この話は続きます。
ホントはまとめてアップしたかったのですが、時間が無く完結できなかったので前半だけアップすることになりました。