真夏の労働
「起きろ、いつまで寝てるつもりだ」
「五月蠅い、もう少し寝させろ。噛みつくぞ?」
「なんでもいいからさっさと起きろ。飯の支度が出来てるぞ」
貴重な睡眠時間を祐介に妨害される。
アルバイトに来ているのだから、仕事の時間と言えばそれまでだが俺としてはぎりぎりまで寝ていたかった。
眠い目を無理矢理こじ開ける。
祐介は身支度を終えていた。とりあえず、着替えて顔を洗うために部屋を出た。
「雨夜くん、おはよう・・・」
俺と同じような表情の由美さんと廊下で出会う。
完璧そうに見えていた由美さんのほころび、なんだか親近感が沸いてきた。
「みんなは?」
「亜美や星子は着替えて食堂に行ってる。私は朝食は食べなくて良いからぎりぎりまで寝ていたいのに」
「ホントだよ。俺もぎりぎりまで寝ていたかった」
2人でめいっぱいの文句を言いながら顔を洗った俺たちはそれぞれの部屋に戻って身支度をする。こぢんまりとした食堂には美味しそうな和食が並んでいた。
「遅かったな」
「お腹すいた・・・」
「待たせるのもいい加減にしてよね」
3人から歓迎の言葉を受ける。
俺って集団生活に向かないんだろうな。と思いながら朝食を口にした。
美味しかった。
「見た目よりハードだな、これ」
「ああ、辛いのは最初だけだ。そのうち慣れるから」
暑い、重い。
きっと、今の心情を漢字で表したらこんな感じになるだろう。
ボックスにアイスやジュースを詰め込んで売って歩く。
日光浴をしているお兄さんやお姉さん達に。
「まいどありがとうございます」
そして思ったよりも需要ってあるらしい。
確かに、こんな暑いところに来ているのだからのどだって渇くだろう。
「意外と早く終わったな。やっぱり2人だと早い」
けろっとした祐介と違い俺はかなり疲れている。
これが奴の体力の秘密か・・・・。
「さて、戻ろうぜ。お姫様方がお待ちだ」
店の中では星子に亜美さん、由美さんが薄着にエプロンを付け接客している。
店内は涼しく気持ちいい。
水着姿を期待したのだがちょっぴり残念。
どうせ、後でみれるんだからいいんだけどね。
「潤平くん、祐介。おかえり」
祐介のおばあさんからねぎらいの言葉を受ける。
ぐったりした俺と違い祐介はそ商品のジュースを手に取り飲み始めた。
「動労の後の一杯は美味しいね」
大げさに息を吐き出す。
俺も遅れながらおばあさんに出されたジュースを飲み干す、確かにこの一杯で生き返る気はする。
「今日はこれであがって良いよ。午後からは遊んでいきな」
やっと仕事から解放された。