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夜空と星  作者: 小田桐
22/31

夏祭り〜優子〜


 一家団欒の夕食の時間。目の色を変えて、親父と唐揚げを取り合ってる。

 もちろん、言葉の比喩で俺はそんなに卑しくはない。

 自分ではそう思ってる。


「そういえば、縁日っていつまでなの?」


 近所の神社で盆踊りと縁日がセットになったお祭りがあったのを思い出し、訪ねてみる。


「明日から三日間だったかな」


 答えてくれたのは母親。

 せっかくだし、星子でも誘っていってみようと思い、食後に星子に電話することにした。





「優子、暇なら縁日でも見に行かない?」


 遅い朝飯兼やっぱり遅い昼飯を食べ終わった俺は妹に提案する。

 家にいても予定はないし、暇だったから。


「別に良いけど、星子さんとはいかないの?」


「明日行くことになってるから、今日は暇なんだ」


「そうなんだ」


「うん、ついでに佐織も誘ってみたらどうだ?」


「ん〜、無理だと思う。今日は出かけるって言ってたから家にいないはずだよ」


「そか、それなら2人で行こうか?」


「いいよ。準備してくるから待っててね」


 たまには兄妹の水入らずでお祭りを見に行くのも悪くはないだろう。



 てっきり浴衣で来ると思っていたが、部屋から出てきた優子はいたって普通の普段着だった。別に妹の浴衣姿を期待していたわけじゃないけどね。

 いや、ほんとに・・・・。


「なんか、2人でお祭りにいくのって久々だね」


「そうだな、いつもは佐織も付いてくるのにね。今日は何処に行ってるんだろうね?」


「ああ、お母さんと買い物に行くって言ってた」


 あそこの母子は仲が良い。

 別にうちが親子間に問題があるとは思わないけどね。やっぱり、一人っ子だと親の愛情のかけ方が違うのかなって少し考えたりもする。

 うちはどっちかというと放任主義だし。

 だから、俺がこんな風に育ってしまうのか・・・・・。


「金魚すくいでもやってみようかな」


「いいよ、見ててやるからがんばってきな」


 上手い・・・・。

 1回で2匹を同時に掬うのなんて初めて見た。

 しかも、それだけじゃなかった。

 200円で20匹の金魚を掬っていやがる、こいつはどんな才能をもっているのさ。


「家で金魚は飼えないから返すね」


 そう言って優子は金魚たちを青い小さなプールに戻した。

 唖然としてる店長さんと優子の金魚すくいを見てた小さな子供達。

 もちろん、俺だって言葉に詰まってるし。


「ねぇ、見て。この指輪懐かしいね」


 小さな女の子がほしがるようなおもちゃの指輪を見つけ優子が懐かしそうに目を細める。そういえば昔欲しいとおねだりされてかってあげたことがあったかな。


「そうだな。指輪が欲しいってだだをこねてた日が懐かしいよ」


 子供だった優子は母親の結婚指輪を見て自分も欲しいと言い出した。

 もちろん、お袋は優子に指輪をあげていない。子供にはまだ早い物だったし、お袋自身、親父との大切な思い出なのだろうからそう簡単に譲ったりはできなかった。


「お兄ちゃん、綺麗になるから指輪買って」


 優子が思い出すように子供の時に言っていた台詞を口にする。


「優子は指輪がなくたって可愛いんだから必要ないって」


 そう言って俺は優子をなだめた。でも、子供だった優子はあきらめてくれない。


「可愛いじゃなくて綺麗になりたいの。お母さんみたく」


 俺もそうだが、優子もその日のことをちゃんと覚えている。

 だから、2人とも子供の時の台詞がちゃんと言えるんだ。


「わがまま言うなよ。おいていくぞ」


「買ってくれるまで動かないから」


 そう言って俺は座って指輪を見ている優子から離れる。

 でも、少し歩いてからまた引き返す。


「これ買ったら、綿飴とかたこ焼きとかお焼きを買えなくなるんだぞ。それでもいいの?」


「うん」


 子供だった時のことをそこまで再現してからお互いに笑いあった。

 こういう些細な思い出とかを共有することが兄妹の特権なんだなぁってつくづく思ってしまう。

 これから星子とどんなに親密な関係になったとしても、子供だったときの思いではお互い別々のモノ。だけど、優子とはこれから先どんなことがあっても兄妹。

 それをどう感じるかはその人次第だけど、俺はそういう思い出は悪いモノとは感じてはいないことだけは確かだ。


「ねぇ、お兄ちゃん。盆踊りを踊ってから帰ろうか?」


「いいよ」


 子供だった俺たちはその後一緒に盆踊りを踊ってから家に帰った。

 子供の時のように優子が俺の手を握ってくる。

 久々に握った優子の手はいつの間にか大きくなっていた。


「あのときはありがとうね」


 小さな声で優子が言ったのを俺は聞き逃さなかった。

 もちろん、俺は聞こえなかったふりをした。。

 久々に踊った盆踊りはそこそこ楽しかった。



愛読していただいた方がいるというだけで励みになります。調子に乗って二日続けて投稿しました。

実際の季節と本編の季節が違うので書いてて記憶の引き出しを開けるのに苦労します。

これからもご意見、ご感想を取り入れ書いていきたいと思います。もし、読んでる方がいらっしゃったら何でも良いので一言でも書いてもらえると幸いです。

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