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夜空と星  作者: 小田桐
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大岡裁き


「気持ちよさそうに寝てるわね」


「起こそうか?」


「かわいそうよ」


 休日の朝、ゆっくり眠っている俺の部屋で話し声が聞こえた。

 声からすると三人居るような感じだが、気にせず眠ろうとがんばる俺。

 それでも話し声がする部屋で眠れるほど俺の神経は図太くなかった。


「おはようございます」

「おはよう」

「今日は早起きだね」


 優子が俺の部屋にいるのはわかる。妹だし、同じ家で暮らしているのだから。

 佐織がここにいるのも納得はしないが認めよう。半分は妹みたいなモノだし。

 でも、なんで星子までここにいるのさ・・・・。



「今日は何処行こうか?」


「潤平と一緒なら何処でもいいよ」


「ジュンくんと一緒っていうだけで私は楽しいよ」


 星子とデートすることになった。俺は星子を連れて出かけようとしたら、優子と佐織までついて行くことになった、2人曰く「私たちって暇なんだよね」だってさ。


「潤平、これ見て。可愛いよね」


 アクセサリーの露店を見つけて、星子は握っている俺の手を引っ張る。


「ジュンくん、あっちに可愛い犬がいるよ」


 佐織も抱きしめている俺の腕を思いっきり引っ張った。


「二人ともひっぱるなって」


 休日の街は人通りが多く、じゃれ合いながら歩く俺たちにいくつもの視線が投げかけられていた。特に男性からのやっかみの視線が。

 星子は誰もが認めるほどの美人だ。K高の2大美女と呼ばれるほどの。

 佐織は幼く見えるが改めてみると美少女と言ってもおかしくない容貌をしている。年齢よりも下に見られることも多いけど、今の佐織はそれなりの服装をしているからしっかりと中学生に見える。

 そして、兄のひいき目かもしれないが優子も可愛いと思う。星子や佐織にように目立ってはいないけど控えめな可愛らしさがある。もし、優子と血が繋がっていなかったら、優子を恋人にしたいと思えるほどだ。

 そんな3人を容姿がぱっとしない俺が連れて歩いて居るんだ、周りからおまえの存在が邪魔だって視線を投げかけられても仕方がないのかもしれないのだ。


「潤平、こっちきてよ」


「ジュンくん、こっち」


 対抗意識を燃やしたのか二人ともむきになって俺の手を引っ張っている、微笑ましい光景と言いたいところだが引っ張られる俺はマジで痛い。二人とも見かけよりも力あったんだね、知らなかったよ。


「お兄ちゃん、私も抱きついた方が良い?」


 優子、勘弁してくれ。普通に手が痛いし、周りの視線だって痛いんだぞ。

 そんな状況に置かれながら、江戸時代の逸話を考えていた。


「なんか、大岡裁きの子争いみたいだね」


 優子がぽつりと言った。

 奇遇だね、俺も同じことを考えていたよ。



「少し小腹が空いたね」


 そういうわけで俺たちは近場のファーストフード店に入った。

 3人を席に座らせ、俺は人数分の飲み物とポテトを買う為に営業スマイルが可愛いバイトの店員さんの前に並んでいる。


「申し訳ありませんが当店では二股、三ツ股のお客様のご来店はご遠慮させていただいているんですが・・・」


 やっと、俺の順番になったときに目の前の店員さんが申し訳なさそうに言った。

 冷静に考えたらそんなことで来店拒否されるはずはないのに、


「えーと、一人は妹だし、別に二股とかかけてる訳では・・・・」


 慌てて言い訳している俺。なんか、情けない。


「冗談ですよ、ジュースとポテトになります」


 可愛らしく舌を出してトレーを俺に差し出してくれた。

 どうやら、俺はからかわれていたようだ。



「これ、おいしいよ。食べて」


「ジュンくん、食べさせてあげる。アーンして」


 俺の意志とか関係なく、俺の口にはポテトが詰め込まれていた。

 星子も佐織も無理矢理、俺の口にポテトを詰め込んでいた。正直、ポテトの味がわからない。


「お兄ちゃん、どうぞ」


 優子だけが俺をわかってくれているみたいでジュースを差し出してくれる。

 ジュースで無理矢理ポテトを流し込むとやっと少し落ち着いた。


 食べさせることに夢中で星子も佐織も自分では全然食べてないみたい。なんかもったいないね。それに俺も味わって食べてないし、3人とも損した感じ。

 そう思ってるとくだらないことが頭に浮かんだ。

 これが三方一両損か、星子も佐織も自分で食べなくて損、俺も味わっていなくて損。




 家に帰ったときには俺はボロ雑巾のように疲れこけていた。

 公園でベンチに座れば、二人とも膝に座ってくるし、おもしろそうなモノを見つけると二人とも俺の手を引っ張る。両手に花だったのかもしれないが、とにかく疲れた。


「お兄ちゃん、今日は楽しかったね」


 ぐったりとリビングで座る俺に優子が話しかけてくる。


「まぁね」


 確かに疲れはしたが、楽しかったといえば楽しかった。

 また、みんなで何処かに行くのも悪くはないかもしれないと思っている自分がいる。



いつも読んでいただいてありがとうございます。

「子争い」と「三方一両損」は大岡裁きの有名な逸話ですが、実際はこの作中のようなものではありません。って当たり前ですねw

昔の逸話とかは結構好きなので本で読んだりしています。また、おもしろそうな逸話とかがあれば無理矢理に当てはめていきたいと思っています。

遅くなりましたが、感想を送ってくれた方ありがとうございました。また、いろいろな感想等をお待ちしております。

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