未来の思い〜芦屋理央〜
青年は慣れた手つきで携帯からメールをうっている。
相手が側にいなく、逢えないときでも連絡している。つい先日までそのメールの相手とは不仲だったとは思えない。
「兄さん、誰にメールしてるの?」
弟に尋ねられたけど、笑みを見せるだけで相手の名前を言わない。
言う必要がないからだ。
父も携帯で母に電話をしていた。
両親が俺と同い年だったころにはこういった便利なモノはなかったはず、それなのに父と母は出会って恋に落ち結婚したという。
それはすごいことだと改めて思ってしまう。
「母さんを迎えに行ってそのままご飯でも食べてこようか」
父はそう言って身支度を始めた。
息子達も文句はないらしく、同じく身支度を始めてる。
「理央、真央。何食べたい?」
「父さんの好きなモノで良いよ」
父は肉が好きだ。
ということは今日は焼き肉のバイキングになることだろう。
・・・今更だけど、父さん達の息子として生まれて良かったと思ってるよ・・・
・・・口に出したら陳腐になるけど、俺はあなたを尊敬しています・・・
叔母や祖母から父と母のエピソードはある程度聞いていた。
そして、母の実家のこともだ。
だからこそ、俺は今ある縁を大切にしていきたいと思っている、もちろん恋愛感情とかじゃない、ただ大切にしていきたいだけだ。
俺の未来はどうなるかはわからない。
だけど、後悔をするような生き方だけはしたくない。
出来ることなら自分の望む道を歩みたいと思っている。
父のように。
俺は心でそう思いつつ、父の芦屋潤平の背中を見ていた。