ゆたんぽ
君に僕のゆたんぽあげる。少しばかりで温いんだ。損するだろう。それでもいいかい。
僕の体温で温めた奴だから、温くっていけないね。
ゆたんぽは熱いくらいじゃなくちゃいけないよ。
それでも欲しいかい。僕のゆたんぽ。そーかい、勝手にしな。持ってってくんな。
……待てよ待て待て。本気にする奴があるかい。まだそのゆたんぽは僕のものだ。持ってってもらっては困る。
あ、いや、困らない。ゆたんぽなんてそこいらにあるからね。また温め直すだけさ。
何だよ。持ってけ泥棒三途の河。あの世もこの世もゆたんぽなんか吐いて捨てるほどあらあ。
僕のゆたんぽ。僕だけのゆたんぽ。
温めるのどれほどの歳月を要したかなあ。
やっぱり受け取らないなら温くくなるまで預かるよ。
ゆたんぽの勝手は僕がちゃーんと把握してますからね。