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面倒なので転生ボーナスで最初からファッション奴隷を選んでみた

作者: (鉄)

ヤケクソになって書いてしまいました。

反省はしてるが後悔はしていない。

「種族はエルフ――いや、ハーフエルフですね。なるほどいいとこどり狙いですか。手足はスラッと長く、キュッと引き締まったお尻がチャームポイント。そのくせ胸は大きめと……わかりやすい。

 年齢設定はおよそ14歳。あどけなさを残しつつも、生意気そうな目鼻立ちで、攻めにも受けにも回れるようにですね。白い肌に桜色の小さい口は必須! とか鼻息荒くおっしゃってましたね。流石ですご主人様。

 光の透け方によっては青みがかった銀髪で、肩まで伸びたあざとい若干の内巻きカール。目は碧眼か蒼かで迷ってたみたいですが、髪に合わせたテンプレの赤ですか。実にいいと思います。オッドアイという手もありましたが、人によっては苦手な方もおられますからね。流石ですご主人様。

 服装はフリフリのよくあるミニスカメイドですね。

 生足が見えるのがいいか苦悩なさってたようですが、絶対領域を重視しての黒ニーソですね。クラシカルなロングこそ至高とほざいてらっしゃったようですが、いざとなると欲望に忠実なエロゲメイドですか。ハハ、流石ですご主人様。

 なるほどなるほど……。男の欲望をわかりやすく、これでもかと詰め込んだあなたのエロフです。初めましてご主人様」


 目の前で俺の理想そのものが、残念なことを喋っている。

 

「どうされました? 念願の異世界トリップで俺ツエーー。奴隷ハーレムもあるよ(はぁと)の幕開けですよ。流石ですご主人様」

「いや、なんか思ってたのと微妙に違うような」

「流石ですご主人ザマーーww」


 おい、なんか今微妙に違ったろ。


「まさか、ご主人様ageage要員の私ですよ?」

「心の声を読むな」

「常にご主人様のことを考えてる私チョー有能。ちなみに決めセリフは喜ばれると思って、一生懸命練習してきました」


 心外そうにしていたメイドが胸の前で小さくガッツポーズをする。

 クソっ、騙されてるとはわかってるが可愛いなこいつ。


「あー、君は俺の奴隷でいいのかな?」

「もちろんです。なんなりとお申し付けくださいご主人様」


 ふわりとスカートを持ち上げながら優雅に一礼する。

 ただでさえ短いにもかかわらず、眩しいほどの太ももが露出を増していき、自然と目が追う。が、決して下着までは到達しない。

 あざとい、あざとすぎるよこのメイド!!

 なぜか無表情にもかかわらず、ふふんと勝ち誇ったような表情を浮かべているように見えた。


「ゴホン、つまりはあれだ。アーアー、俺の言うこと聞いてくれちゃったりするのかな? なんでも」

「もちろんです。炊事洗濯に掃除はもちろんのこと。戦闘から下の世話まで完璧です。アレやコレやなキャッキャッウフフです」


 キタコレ! これで勝つる!!

 父さん母さん、隼人は大人になります。


「ご主人様がわざわざお作りになった豪華な食事を毎日いただけるんですね。現代料理無双ですね。とりあえず私カラアゲとプリン食べたいです」

「ん、まぁそれぐらいは。え、毎日?」

「何着も新品の服は当然で、宝石なんかもバンバン買っていただいて。俺のことなんかどうでもいいからお前は常に着飾っていろよと言われ」

「誰が? 俺が?、宝石? バンバン買っちゃうの?」

「王都の豪邸に住んで、お風呂も入り放題の溢れ放題。いえ、王都は煩わしいかもしれませんから別荘にして、第二都市ぐらいに本宅がいいですかね?」

「いいですかね? ってちょっと待ておかしいだろ」

「ご主人様は奴隷のために、チートで働く存在じゃないんですか?」

「いやいや、どこの世界にそんなご主人様が――アルェ?」

「ファッション奴隷とかビジネス奴隷とか言うんですね。ご主人様の知識から引っ張り出してきてますから間違いないです」

「いや、間違いじゃないけど。すっごく正しいけど!」

「奴隷なのにわざわざ、世話を焼くなんて流石ですご主人様」

「いやいやいや、待てちょっと待て」


 まずは深呼吸で心を落ちつけよう。

 目の前にいるメイドを盗み見る。――んむ、チョーかわぇええ。チョー理想。

 この子とやれんならいいんじゃね? もう楽になってもいいんじゃね?

 うん、ヤりたいです!!


「あーチミチミィ」

「はいなはいな」


 ノリいいなコイツ。


「ビジネス奴隷ということは。そのー、対価を要求してもいいのかね。たとえばそのー体とか」

「もちろんお任せください。大部分のニーズによりバッチリ処女です。ニッチな需要に答えるスキマ産業狙いでもよかったのですが、ここはド直球でいってみました」


 なぜか自信満々に、胸を叩いている。

 ……おう、それに合わせてプルンプルンしてる。

 何かとは言わないが、俺のハードディスク換算で2テラ分保存しているものだ。


「じゃ、じゃあ早速」

「お待ちくださいご主人様」


 豊満な胸に触れようとする直前でおっぱいが喋った。

 いや、落ちつけ俺。


「初めてはこのような場所ではなく、宿かなにかをとってお願いしたいのですが」


 俺は改めて周りを見渡す。

 鬱蒼とした森の中で、時折ギィギィと何かが鳴く音が聞こえてくる。


「ん、んーでもなぁ」


 おっぱいぞおっぱい。そちはおっぱいを待てと申すか? いいや、限界だ押すねっ!

 いざ行かん双丘。目指すはその間よと、再び顔を近づけ――近くの茂みから鳥の群れが盛大な音を立てながら羽ばたいていった。


「続き、なさいますか? ちなみにですが、森はモンスターのテリトリーとテンプレで決まっております」


 俺は静かに首を森の奥へと向けた。

 遠くで集団が草をかき分けるような音が聞こえてくる。


「先ほどのは危険な気配を察知して逃げ出した、と考えるのが相場ですね」

「でも最初にでてくるモンスターなんてゴブリンとかが基本だし……チート大活躍というノリじゃ」

「ご主人様はまだレベル1です。付け加えるなら、ボーナスポイントも私を作るのにほぼ全て貢ぎ、もとい注ぎ込みましたのでオレツエーーできないと愚考します。それでも挑むとは流石ですご主人様、蛮勇が荒ぶっております」

「に、逃げようか」

「承りました。こちらが森を抜けるのに一番近いようです」


 軽やかな足取りで先へと進んでいくメイドの後を慌ててついていく。

 歩くこと数分、森を抜け視界に広大な草原が広がる。


「ひとまずはここまで来れば大丈夫だと思います」

「そ、そうか。森がこんなにも歩きにくいなんて」


 汗を拭いながら、肩で大きく息をはく。

 対照的にメイドは、息一つ切れていない。道中、俺が通りやすいようにだろう、小枝を折りながらの淀みのない動きだった。

 このメイドなら素手で撃退できたんじゃないだろうか。


「現代人そのままのステータスですからしかたがありませんね」

「早いとこレベルあげたほうがよさそうだな」

「それでは一番近い街に向かいましょうか?」

「ああ、そう言えば正式に自己紹介してなかったな。俺の名はハヤト……あー、ハヤト・スメラギだ」

「ス、メ、ラ、ギww 日本で3番目に多い名字は捨てて、厨二真っ盛りに心機一転するんですね。流石ですご主人様」

「ウルセー、ファンタジーの世界に来たんだからいいだろ」

「ご存知かと思いますが、カレンと言います。私にピッタリな素敵な名前をいただきありがとうございます」


 極上のスマイルに思わず見惚れてしまう。もつかの間、ムフーとドヤ顔で鼻を鳴らした。

 俺の想像した中の人はどこへいったんだろう……。


   ◆◇   ◆◇


 森沿いに作られた街道を案内されるままテクテクと歩く。

 あれ、なんか俺主導権握られてね?

 そう思い始めた矢先、刃物がぶつかる音が響き渡った。

 遠くに街道を塞ぐように馬車が一台横転していた。

 胸ぐらいの高さのが複数、それとは別に三人ほど人影が争っているようだ。

 個々の能力では上なのだろうが、三人は徐々に追い詰められていってる。


「テンプレキターー」

「は?」

 カレンが突如奇声をあげると、喜悦を浮かべながらこちらを振り返る。

 今にも走り出しそうなアイドリング状態だ。


「イベントですよイベント。ご主人様さぁ行きましょうすぐ行きましょう」

「いやいやいや、ちょっと待て」

「うへへへへ、オークですか。ここはゴブリンであってほしかったところですね。欲を言えば盗賊だと高ポイントだったのですが」

「ダメだこいつ早くなんとかしないと」


 とりあえずヨダレふけヨダレ。

 クソ、誰だこの設定したやつ。俺だよっ!


「さっき森で逃げてきたばっかだろうか。ここで戦ったら意味ねぇだろうが。あの人たちには申し訳ないが、自力でなんとかしてもらうしかない」

「大丈夫です、うちはアフターサービスもバッチリ完備です。こんなこともあろうかとSOSポイントがあるです。これさえあればチート無双待ったなしです」

「なんだその後ろに団をつけて、大いに盛り上げたくなるポイントは」

「それ以上はいけないっ!」


 ……お前いきなりキャラぶれてねぇ?


「説明しよう。SOSとは『流石ですお兄様』の略である。これを消費することによって一時的に身体能力などを増加させることができるのである。

 なお、テンプレ的行動をとったりイベントをクリアすることによって増加し、アイテム交換などもできるチート能力なのだ!」

「いや、お前奴隷でメイドだろ」

「大丈夫です。妹属性も私ついてますから。それに売上テンプレ最強は『流石ですお兄様』と聞いてます。……私は見た事ありませんが。

 ちなみにSAOポイントという案もあったのですがこちらは却下しました」


 それ以上はいけない!! なんだか他世界の住人を大勢敵に回しそうだからっ。


「まぁ、それを使えばいけるんだな」

「はい、最初ですから安全のため100ポイントも使用すれば大丈夫じゃないでしょうか」

「ちなみに何ポイントあるんだ?」

「残高は30ポイントとなってます」

「おい、クソ底辺のどこぞの作者の評価ぐらいじゃねぇか」

「失敬ですね。豆腐メンタルの、今にも連載を投げ出してしまいそうなド底辺作者の評価よりはるかにあります」


 それ以上はいry


 そうこうしている内に一人が倒れ、それを庇うように残り二人が防戦一方の展開へと移っていた。


「オイ、本格的にやばそうだぞ」

「しかたがありませんね。助ければ100ポイントは堅いでしょうし、気が進みませんが今回だけは借金という形で前倒しします」

「それじゃそれでよろしく」

「では参りましょうか。制限時間は異物混入事件なインスタント食品と同じです」


 たった3分だけか……ギリギリだな色んな意味で。


「いえ、あれ3分を謳ってますが2分ちょいでちょうどいい固さだと思うんですよ。ご主人様はどう思います?」


 知らねぇよ。ってか、心の声拾うな。

 もう少しというところでこちらに気づいたのか、オークはゴフゴフ警戒音を鳴らした。

 気付かれずに奇襲したかったが仕方がない。


「すまない。お前たち助けてもらえないだろうか」


 女性の内の一人が明るい表情をこちらへ浮かべたが、すぐに落胆の色へと変わった。

 武器一つ持ってない男とメイドが来たところでどうしようもないと思うだろうな。

 もう一人はオークを牽制するように、間合いをとっている。

 倒れている男は護衛だったのだろうか。仰向けに倒れてはいるものの、呼吸はしておりこちらに視線を向けている。


「さぁご主人様、見せ場ですよー」


 カレンがそういった直後、体の内から圧倒的な力が溢れだしてくる感覚を覚えた。


「ハハ、これがチートか。これなら十分やれそうだ」

「グギッ?」

 

 オークが何かしようとしているが構わない。

 一気に加速する。

 手近なオークに狙いを定めると、顎に向けて矢のような左ストレートを放つ。

 続けて右アッパーで沈めると、そのまま頭に向けて右足を力の限り踏み抜く。


 ――ゴシャリ――


 頭蓋骨が折れる鈍い感触と共に音が消えた。

 周りを見ると、全員が俺に注視していた。

 いや、一人だけ動いてる人間がいる。

 いつの間にかカレンが倒れている男の横にしゃがみこんでいた。

 何かをつぶやき頷くと、男のもっているロングソードを丁寧な手つきで受け取る。

 それに気付いた数体のオークが、グギグギと不快な声を上げながらカレンへと襲いかかる。

 その中を、慌てることなくカレンは淡々と回避していく。

 その表情は場違いなほどゆったりとしたものだった。

 演武の模範のように白刃の中を俺の元へと歩いてくる。

 塵一つつけていなかったにもかかわらず、片膝をつけて両手で恭しく俺に剣を差し出してくる。


「それ、お前が使ったほうが早くね?」

「私はあくまでご主人様の後ろをつき従うメイドですから」

「そっか。それと今度からはそんなことしなくていいぞ。綺麗な肌が汚れる」


 俺は立たせると、パンパンと土をはらってやる。

 全く俺の最高傑作をなんだと思ってやがる。


「ふふ、ご主人様の恰好いいところ見せてくださいな」

「全て倒してしまってもかまわんのだろう?」

「……」


 氷のような冷たい眼差しで見られた。

 開けてはいけない扉を思わずダイヴしそうだ。

 ……3倍の赤いほうが良かったのだろうか。




 そこからは圧倒的だった。

 ものの一分足らずで全滅させると、倒れている馬車を戻したところで効果が消えた。

 幸いにも男も命に別状はなく。数カ月はじっとしていれば治るらしいとのことだった。


「すまない本当に助かった。それにしても、そちらのメイド含め恐ろしく強いのだな」


 リーダー格と思われる女性が頭を下げてきた。

 整った顔立ちで、青色の少し切れ目が凛々しさをいっそう醸し出していた。

 金髪をポニーテールにしてるのもグッドだ。

 ぜひお近づきなりたい。 

 しかし、見るからに鎧も立派でどこぞの騎士か、もしくは貴族の娘かもしれない。

 目立ちたくない(チラチラ)したほうが無難だろうか?

 ……隣でカレンがなぜかサムズアップしてるが無視しよう。


「ぜひお礼として我が実家で手厚く歓迎したいのだが、実は急用ですぐにでも立たねばならぬのだ」

「いえいえ、お気遣いなく。困っている時はお互い様ですし」

「そう言ってもらえると助かる。しかし、何もしないというわけにも……代わりにこれを受け取ってはもらえぬか」


 女性はそういうと一本の剣を差し出してきた。

 美しい装飾が施された鞘に納められており、素人から見ても一品物だとわかる。 


「姫様っ。それは旦那様から――」

「――姫騎士キターー!!」


 あ、やべぇカレンが発症した。


「ぐふふ、本物の姫騎士となれば盗賊ではなくオークこそが至高。セットとなると高ポイント倍プッシュだってなもんですよ。いやいやオークさんいい仕事しますね」

「その、そっちのメイドは大丈夫なの、か?」

「ちょっと病気なんだここの。しばらくしたら治まるから」

「あ、ああ」


 頭を軽くコツコツと指で叩いた俺を見て、何かを察してくれたようだ。

 いい神官を紹介しようかと言われたが断っておいた。


「で、受け取ってもらえるかな?」

「姫様――」

「くどいっ。命を助けてもらったのだ、それ相応の酬いねばならんだろ。それに私にはまだもう一本あるだろう」


 なるほど。さすがに家宝とかではないが、恐ろしく高価なものなのだろう。

 従者の様子を見る限り、値段以上の思い入れかなにかがある類だろう。


「……姫様ご相談があるのですが」

「私にできることでよければ力になるぞ」


 興味深そうな表情で即す姫とは対照的に、従者の視線がいっそうきつくなった。

 

「実はお恥ずかしい話。森の中で追剥にあいましてね。荷物を犠牲になんとか逃げおおせたのですが、これが全財産をなくしちままして」

「ほう、あれほどの力をもったそなたたちがか?」

「いや~、多勢に無勢で面目ないです。ですから剣ではなく現金でいただけると嬉しいかなと思いまして」

「なるほど……」


 姫さんはチラリと自らの侍従を眺めると、軽くため息をついた。

 ちなみに侍従はよくわかってないのか、疑問の表情を浮かべながらなりゆきを見守っている。


「なるほどわかった。オイっ、路銀を分けていた袋があるだろ。とってきてくれ」

「わかりました姫様」


 侍従は剣を渡さなくてすむと、ご機嫌な様子で馬車へと乗り込んでいった。

 ああいう単純な子もあれはあれで可愛いものだ。


「気を遣わせてすまんな」

「なんのことでしょうか?」

「ふふっ、ならばそれでいい」


 しばらく待ち、俺は侍従が持ってきた革袋を受け取る。

 この場では中身は確認しないが、おそらくかなりの大金が入っているのだろう。


「それから、これも今後君たちの役に立つかもしれないから受け取ってくれ」


 そう言われ、一枚の金属板を受け取る。

 カイト型のシンボルとバラのマークが刻印されている。おそらくはある程度身分を保障してくれるものだろう。

 盗まれるのはもちろん、あまり使うのも気がひける代物だ。


「これを使うことがないを祈りますよ」

「ははは、多少の融通がきく程度に思ってくれればいいよ」

「さて、名残惜しいですが俺たちはこの辺で失礼します」

「ああ、方向が同じなら乗せて行ってやれるんだがな」


 握手をかわし、予定していた街へと歩を進め始めたところで、背中に言葉をぶつけられる。

 

「ああ、そういえば。金がないなら魔石を剥げばいいと思うのだがな?」


 俺は思わず、横にいたカレンに視線を向けた。

 見れば目が泳いで、口をとがらせてる。

 下手くそが。完全に空気もれて音なってねぇじゃねぇか。完全に忘れていやがったなこいつ。

 俺は錆ついたネジのように体を反転させる。

 イタズラが成功した幼い子供みたいに、姫がニヤッと笑っていた。


「ええ、ですが。たんまりと弾んでいただけたのでしょう?」


 俺はまだ中身を確認していない、金貨十数枚は入ってるだろう革袋を軽く持ち上げる。

 大きく目を開いた後、もちろんだと朗らかな笑顔を背に俺たちは再び歩きだした。


   ◆◇   ◆◇


「まさかお風呂があるとは。いいお湯でした」

「さいですか」


 湯あがりに、スッキリした顔でカレンが部屋へと戻ってきた。手にはコーヒー牛乳らしきものが見える。

 ここは街でも屈指の高級宿で様々な温泉が楽しめるのが売りになっていた。

 なお当然のごとく、男女別でイベントの起きようもなかった。

 テンプレでポイントためる必要があったんじゃないんですか。ねぇ、カレンさん!


「しかし、思った以上に大金で助かりましたね」

「ああ、かなりあるだろうとは思ってたけど。かなり余裕がもてるな」


 そう貰った金額は、この宿を二年間は泊まれるほどだった。

 金貨だろうとは思ってたけど、その上の白金貨か。

 これ普通の平民だったら見ることねーんじゃねぇか?


「ここでのんべんだらりとするのは、それはそれでいいですけど。少なくともご主人様は働いてください」

「俺だけかよっ」

「とりあえず、明日は定番の冒険者ギルドに行きましょう。そして絡まれてください」

「そっち目的かよ!」

「当たり前です。ド定番中のド定番ですよ? わかっててもニヤっとする新喜劇イズムです」


 これだから大阪人は。コテコテのゴリ押し笑いがとれると思っていやがる。

 今やさらっとした笑いがいいんだよ。

 一発ギャグとか作ってコースに乗ったばかりに、一瞬で使い潰される芸人がどれほどいるか。


「笑いはわかりませんが。ポイント( 評価)はもらえるかもしれませんよ。ベタでいいんですベタで。余計なひねりなど不要です!」

「まぁ今日のでわかったが、ポイントは大事だよな。いつ魔物に襲われるかわからないファンタジーだし」

「ええ、ファンタジーには魔物が潜んでいるんです。短編コメディーが好きなくせに……無茶しやがって」

「今、SOSポイントの話だよね?」

「え?」

「え?」


 なにかが大きく食い違ってる気がするが、それを明らかにするのは危険な気がする。

 ……これが主人公補正というやつか。


「あーー、とりあえず寝るか」

「そうしましょう」


 いや待て。なんか忘れてないか?

 すげぇ大事な当初の目的があったようなかったような?


「カレンさんやらせてください。マジお願いします」

「うわっ、これがジャパニーズドゲザですね。本当にその気があれば、鉄板焼きの上でもお願いできますよね?」

「その無駄な俺知識が憎い」

「はぁ~、別にかまいませんが高いですよ私」


 マジで? おkなの? もう終盤クライマックスなの?

 起承転結がない、平坦なダラダラ続く勿体ぶりとかないの? 今や時代はアップテンポと聞いたけどそんなにクーガーの兄貴してていいの?


「お金でも労働でもばっちこい。普通の高校生の力みせつけてやんよっ。古武術は習ってないけどな!!」

「SOSポイント10万ほどです」


 謙虚堅実をモットーにしても2回もできねーじゃねぇか。

 ふざけんなよ、ファンなめんなよ。あれで俺はここ知ったんだからな。

 つっこまれたらこの一文削除するぐらい余裕なんだよこっちは。ってか、もう何回か更新したら2回は余裕でできるっちゅーねん。


「落ち着いてくださいご主人様。なにやら心の声がダダ漏れです」

「で、ポイントまかりませんか?」

「まかりまへん。ちなみに、目安としましては魔王を倒したら10万ポイント手に入ります」


 俺に世界を救えと言うのか。

 たった一人の息子さえ守れない漢が世界を救えると思うなよ!


「大丈夫です。ご主人様の息子さんは大事に守られておりますから」

「……このことは内密にな」

「本格的に寝たほうがいいと提案します」


 はぁ、しかたがない。とりあえずの寝るか。

 さすがに疲れた。初日だし。

 そのうち危険なイベントや任務やらなんやらで『ドキッ私実はご主人様のことが』みたいな愛を育む形にもっていこう。


「ご主人様ご主人様、今なら格安で、少しえちぃ寝巻に着替えることが可能ですが」


 ……チラッ。


「いかほどで?」

「そうですね。初日特価で20ポイントで交換でいいですよ。ちなみに残高130ポイントです」


 20か……オークに姫騎士セットのテンプレ特盛りでも200しか得られなかった。

 100で切り札としてあの力が使えて、明らかにワリにあってない。

 ……チラッ

 いくら理想のエロフだからってなぁ~。今後の異世界無双のことを考えたら節制――


「――ピンクのキャミでお願いします」

「かしこまりました」


 おっぱいには勝てなかったよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんな奴隷、育てちゃうに決まってるだろ…! 文書力あるのに他に作品書いてないとは…惜しい
[一言] 俺は4分派だ♪(o・ω・)ノ))
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