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モノローグ

私は魔法使いに会った事がある。

もう随分と前で、幼かった私はどんな人だったかもよく思い出せないけれど…

金色の長い髪と黒いマントが風になびいて、なんだか持っていた物語の絵本から出てきたんじゃないかと思ったのは覚えている。


その彼女は私に色々な魔法を見せてくれた。

何も無いところから杖を取り出したり。

その杖を向けて呪文を唱えると自分たちの周りの花が瞬く間に咲いたり。

いつの間にか出てきた箒が浮かんで空で一回転したり。

特に炎と水が妖精のような姿になって踊るのはすごく素敵で…綺麗で…何度も飽きるまで見せてもらった。

自分でも使ってみたくて、教えてくれとせがんだ。

タネのある手品なんかには見えなかった。

だから私はあの時の彼女の言葉を小学校低学年の頃まで守っていたのだ。


『あなたには才能があるわ…これから教える呪文を毎日唱えていればいずれ魔法使いになれるかもよ…』


今考えてみれば、幼い子供だった私への単なるリップサービスだったのかもしれない。

しつこくせがんでくる私が面倒だったから適当なことを言ったのかもしれない。

だけどその呪文は、唱えるとなんだかあたたかくて…勇気が湧いてくるようで…

時間が過ぎるとともに毎日は唱えなくなってしまったけれど、寂しい時や、頑張りたい時にはいつもその呪文を唱えた。


あの事故の時も。


お父さんもお母さんも、飼い猫のノルも帰ってはこなかった。

私だけがここに帰ってきた。

お医者さんは奇跡だと言っていた。


『************』


この言葉は本当に何か魔法の呪文だったのだろうか…


だから私だけ…


もしも…もし、私があの時まできちんと毎日呪文を唱えていたら…

魔法を使えるようになっていただろうか。

そして私だけでなく、お父さんもお母さんもノルもここに帰ってこれたのだろうか…

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