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私の住むせかい ~ 一つの願い事 ~  作者: みずはら
(第五章)一つの願い事
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5ー(2ー1)真実

 窓の外には、すっかり夜の帳が降りている。

 耕平は、机に向かい、ノートPCに白いUSBメモリーをセットした。


 あの後、あきらと、マッスバーガーでハンバーガーを食べながらくだらない話をし、本屋に行って、ゲーセンに行って、それなりに気分が元のレベルに戻ってきた。

 念のため、帰ってきた時にすなをの部屋を覗いたが、すなをが帰ってきた様子はない。

 そりゃそうだ。

 自分に愛想を尽かせて出て行ったのだから。

 昨日の黒服達と。

 あきらと会話するに連れ、作りかけのパズルのように抜け落ちていたピースが一つ一つはまり、最終的に、すなをが黒服達と耕平の前を立ち去るまでが、辛うじて復元された。

 その後は、どうやっても思い出せないが、今の耕平には、それだけの記憶で十分である。

 どうせ、打ちひしがれて、夜道を歩いて家に帰り、すぐ寝たに違いない。

 そんな情けない場面を、わざわざ思い出したいとも思わない。

 一つだけ収穫だったのは、あきらからフーファイターのクリップをもらっていたことを思い出したこと。

『昨日も言ったけど、超レアだからなぁ。絶対見ろよ~』

 テリヤキバーガーを頬張りながら、あきらは耕平に念を押した。

 しかし、その後問いつめると、実は、あきらが漫喫でダウンしたのではなく、PCにささったまま忘れてあったメモリーに入っていた物で、それをこっそりコピーしたのだと判った。


 その白いUSBメモリーの他に、見慣れた黒いUSBメモリーがもう一つ。

 どうやら、大山からも貰ったようだ。

「まず、あきらのからだな」

 耕平は、画面に開いたウィンドウを操作する。

『激ヤバ』というファイル名のムービーを選択する。

 ……ネバダの、限りなく『本物』って言ってたな

 程なくして、プレーヤーが立ち上がり、戦闘機が映し出される。

 耕平は、ごくりとつばを飲み込んだ。

 そのまま、視野が広がっていき……。

「!」

 戦闘機が追いかける先には、丸みを帯びた、ちょうど人の形のような黒っぽい物体。

 耕平の身体に戦慄が走る。

 よく見ようと、顔を近づけた耕平は、吹き出した。

「ネバダ、……ねぇ」

 しかし、耕平は、コーラの瓶をけなげに攻撃している戦闘機のムービーを三回リピートし、そのたびに笑った。

 僅か十五秒のクリップ。

 そのクリップから、友人の暖かいメッセージが伝わってくる。

「さてと……」

 アイコンのポップアップをぼんやりと見ていた耕平は、息を吐いた。

 幾分か気分が上向きになったところで、大山のUSBメモリーに差し替える。

「浅倉君、元気?」と言うファイルを選択する。

「先輩まで……」

 耕平は微笑むと、そのままプレイヤーにドラッグした。

 戦闘機が、何かの物体を追いかけている。

「さて、先輩のは、どうせガセだから、まず合成箇所の確認からだな」

 耕平は、画面を食い入るように見つめ、二体の飛行物の周りを入念に確認していく。

 しかし、その物体がノイズだらけでよく分からない。

 何度も旋回を繰り返し、追いつめる戦闘機。

 耕平は、それが嘘だと判っていても、つい食い入るように見てしまう自分に呆れながら、次の展開に期待する。

 と、突然、画面が青白くフラッシュした。

「ん? 事故映像か?」

 耕平が身を乗り出すと、画面が元の風景を映し出し、

「!」

 白っぽいもやが画面に浮き上がる。

「……懐かしのアニメシリーズかいっ! 三分も溜めてっ、暇なやつめ!」

 どくろ型に浮き上がる白い雲のような物体を、引きつった笑みで眺める耕平。

 全く、三分損したし! 耕平はため息をついた。

 これで、月曜日に大山が耕平の逆鱗に触れることが確定する。


 プレイヤーを閉じると、ファイル一覧になり、アイコンからポップアップが表示された。

「……あれ? え?」

 瞬間、耕平の背筋を衝撃が突き抜ける。

 〈種類 flvファイル。サイズ 10.4MB〉

 何のことはない、ただのファイルインフォメーション。

 しかし、耕平は、ある不自然さに気付いてしまった。

 震える手で、メモリーを抜き取ると、あきらから貰ったUSBメモリーを差し込んだ。

 程なくしてウィンドウが開き、「激ヤバ」と言うファイルが表示される。

 三秒。

 ポップアップが表示される。

 〈種類 flvファイル。サイズ 12.9MB〉

 確定!

 鼓動が高鳴り、興奮からめまいを催す。

 解像度は同じだった。でも、大山のは三分で十メガ、あきらのは、十五秒で十三メガ。

 つまり、これの意味する事は……。

「ファイルが偽装されている?」

 耕平は、慌ただしく、本棚より『偽装解除ソフト集』と書かれたCDを取り出す。

「どれか、ヒットするかな……」

 耕平は、次々に開くウィンドウを操作する。


 十分後、三重に偽装されていたファイルが、やっと姿を現した。

 同じような、ムービークリップ。

 ネット上の形式ではなく、mp4と言う良く知られているムービー形式。

 ファイル名も文字化けしており、この国の物でないことが判る。

 念のために、ネットワークのケーブルを外す。

 どこかで逆探知されるようになっていたら大変だ。

 三重に偽装を掛けておき、しかも、それを告知していない。

 つまり、ほとんどの人は、ただのギャグクリップとして笑い飛ばすだろう。

 そんなことをする理由は、他には思い当たらない。

 これが、限りなく〈本物〉であると言うこと。

 そして、何らかの目的でもって、これを見るべき相手に送られた物だと言うこと。

「確認したら、すぐ先輩に報告だ」

 耕平は、逸る気持ちを抑え、プレイヤーにファイルをドラッグする。

 真っ白な画面から、徐々に露光補正がかかっていく。

「真昼か。てか、つい最近のじゃないか!」

 画面右下のOSD表示で、その映像が一昨日の午前十一時半頃の物であることが判る。

 撮影に慣れていないのだろうか、画面が左右に激しく動き、気持ち悪くなる。

 英語らしき男性の声が、ノイズに混じって切れ切れに聞こえる。

 どうやら、飛んでいる物体を追いかけているようだ。

 たまに、黒っぽい物体が画面に収まるが、すぐに枠から外れる。

 最新の追尾機能付きカメラなのだろうか、シューティングゲームのようなアイコンが、黒っぽい物体を囲み、激しく画面内を移動する。

「もうっ、三脚ぐらい使えよな」

 耕平は苛立ちを隠せない。

 その、物体との同期が、合った。

 一秒、

 二秒、

 三秒、


「え?」

 耕平は、硬直する。

 画面から消える物体。

 再び画面内に物体が現れた。

 今度は、一直線に急降下しているように見える。

「あっ、攻撃している」

 戦闘機から、光る筋が断続的に進行方向へと伸びていく。

 戦闘機に比べ、小さすぎる物体。

 撮影者が限界を感じたのか、映像を広角に切り替えた。

 二つの点が落ちていき、

 戦闘機の前方が、青っぽく円形に光った。

「なっ、消えた?」

 直後、何もない空間を戦闘機が旋回し、再び上昇していき、

 画面が真っ黒になる。

 耕平は、慌ただしく画像解析モードを選択し、ノイズ除去作業に取りかかる。

 耕平の中で、既に解析結果は出ていた。ただ、それを確定させるだけ。

 ……いや、本当は、そうでないことを確認したかった。

 物体が映っている部分だけを切り出し、処理をしながら再生を繰り返していく、

 その物体がはっきりと拡大され、マウスを握る耕平の指が、カタカタと勝手に動き出す。

「最大倍率です」と、画面にエラーのウィンドウがいくつも表示される。

 全身が、氷水をかぶったかのように震え出す。

 手が、足が、言うことを利かず、バラバラに動き出す。

「なんで? え? ネバダってこと? え? どうして? どうやって?」

 自分でも何を言っているのか判らない。


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