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4-(2-2)

「もうっ! 何でこんなに人がいるのよっ」

「何か、宇宙人がどうのって言ってたぞ?」


 コロップの言葉に、すなをは不満を爆発させる。

「宇宙人なんて、いるわけ無いじゃん。なに非科学的な事言ってるのよ。全く、人間って本当に馬鹿ね」

「あの人間もいたぞ?」

「こっ、コーヘイも? ……ま、まあ、夢を持つのは人間として悪い事じゃないわねっ」

 すなをは、慌てて付け加えた。

「うむ。髪の長い人間と親しげに喋ってたな」

「えっ? そう……」


 ……ほのか、って子かな


 すなをの奥底から、もやもやとした物が吹き出すが、頭を振り、それを押し込めた。

「そっ、そんなことより、どこか良い場所無いかしら」

 すなをは歩みを速め、すっかり人気の無くなった道を進みながら周りを伺う。

 既に、かなりの時間をロスしている。

 早くしないと、探せなくなってしまう。

 耕平との今朝の一件があるが、それとこれとは別だ。

 あの後、色々冷静に考えてみれば、要は結果を出せば良いことに気付く。

 そもそも、耕平が怒るのはいつもの事なのに、何で耕平の言葉があそこまで気に障ったのか、改めて考えるとよく解らない。

 耕平だって、すなをが願いをちゃんと叶えさえすれば、すなをを認めてくれるに違いない。

『ありがとう、さすがすなをだね。僕が間違っていたよ。ごめん』なんて言うのだろうか。

 すなをは、耕平の父親を連れて帰った時の場面を想像し、顔がほころぶ。

 ……そうよ。そうすれば、どちらがコーヘイの役に立つのか、はっきりするんだからっ

 その結果、耕平との親密度が増して……。

「いにゃああ、そんなぁ……」

 すなをは、自分の想像に赤面する。

「妄想に浸っているところ、申し訳ないんだが」

 コロップの冷静な突っ込みに、すなをは我に返る。

「もっ、妄想なんかしてないし」

「ああそう。っで、さっきから、つけられているぞ?」

「何よ、その言い方! ……じゃなくて、まさか、コーヘイ?」

「男の気配だが、違うな。とにかく、意識がこちらを指向している。要注意だ」

 すなをは、ゆっくりと後ろを振り返るが、真っ暗な道に人影はなく、確認出来ない。

「誰だろ?」

 首を傾げ、再び歩き始めるすなを。

「困ったなぁ、人がいたら飛べないじゃん」 


 すなをは、コンクリートの壁が切れたところで、右に曲がり、トンネルに入った。

 トンネルの壁を伝って、足音が追いかけてくる。

 すなをが再び確認する必要はなかった。

 不意にタタタッと近づいてくる足音、ついで、

「きゃ――!」

 すなをは、いきなり羽交い締めにされ、口を塞がれる。

「お、大人しくするんだ」

 男性であろうか、はぁはぁと言う生臭い息と共に、囁くような声が、ねっとりと耳に入ってくる。

 口を塞ぐその手からは、むせるような独特の臭い。

 その声に、その臭いに、すなをはかつて感じたことのない不快感を覚え、全身の毛が逆立つ。

 相手の意図が全く分からない。

 ただ、おぞましさが身体中を満たす。

 自分の行動を妨害する新手の敵?

 こんなことしている場合じゃない。早くしないと、時間が……。

 その、すなをの自由を拘束している腕が、ゆっくりと下がってゆき、腰の辺りで止まる。

 荒い息づかいが直に耳から侵入し、気持ち悪さで身体が震え出す。

「――!」

 すなをは、感じた。

 頭では解らないが、本能で。

 耕平の手と違い、脂肪で覆われたブヨブヨの手が、スカートの境目にかかる。

 すなをは、身体をよじり、男の手から逃れようとした。

「お、大人しくしていれば、な、何もしないから」

 言葉とは裏腹に、スカートにかけられた手に力がこもる。

 すなをは、はっきりと感じた。

 自分が、生命以外の、しかし、絶望的な危機に晒されていると言うことを。

 ……コーヘイ、ごめんねっ!

 すなをは目をつぶり、本日二度目の決意をする。

「ぐぇっ――」

 瞬間、背後で鈍い音がし、耳元で、蛙が潰されたような声がした。

 すなをを拘束していた腕の力が抜け、ずるずると下に落ちていく。

「大丈夫か?」

「コ――!」


 頼もしい男の声に、微笑みかけたすなをの表情が、その人物を確認するなり固まり、僅かの後、ため息をついた。

「……意外に遅かったじゃない」 

「我々にも、色々と事情があってね」

 ぼんやりとした月明かりを浴びた、全身黒ずくめの男性は、ちらりを空を見上げ、少し変な発音でそう言うと、口の端を上げた。


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