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3-(4-6)

 見積もりが甘かった、そう言われればそれまで。

 悪魔としての資質を問われるかも知れない。


 とにかく、すなをは、そのために、基地に侵入を試み、銃撃を受ける羽目になった。

 何の悪意も感じない無機質なものからの攻撃を受け、すなをは文字通り生命の危機に陥った。

 もっとも、死に対する恐怖など、悪魔には無いから平気。再生すればいいだけ。

 しかし、想定外の出来事が、すなをを危機に陥れた。

 旋回の際、耕平との唯一のつながりを取り落とした瞬間、身体が恐怖で支配されたのだ。


 コーヘイに嫌われる!


 冷静な判断機構は全て停止、無我夢中でそれを取り戻そうとした。

 無機質な攻撃は、焼けるような衝撃でもって、無防備になったすなをの身体を幾度も貫いた。

『もう再生が間に合わない! 消滅するぞ!』

 コロップが繰り返し叫んだ気がする。

 ……あと少し、あと少しで届くから! もう少しだけ耐えて、あたし!

 そして、すなをは薄れる意識の中、差し伸べた手の中に、確かなつながりが戻ったことを確認し、夢中でゲートを開いた。

 耕平の下に還りたい! と念じて。


 すなをは、手の中のコンパスを見つめる。

 消耗した身体での、規定を遙かに超えた超長距離の空間移動。

 無事に還れたこと自体が、奇跡。

 開かれた扉の向こうに耕平を見つけ、

 奇跡を生み出した、耕平との繋がりに感動し、

 頬の痛みすら、いとおしく感じた瞬間。

 しかし、そんなすなを行動を、耕平は『悪戯』の一言で片付けた。

 挙げ句は『迷惑』とまで言ったのだ。

 もちろん、すなをは耕平に説明した訳じゃないから、何があったかなど知る由もない。

 でも、理屈で分かっていても、いくら自覚していても、声に出して言われると、その刃は、どこまでも深く、心の奥底に突き刺さる。


 ……コーヘイなら解ってくれてると思ってたのに


 自分の感じている距離と、耕平のそれとが違っていたことに気づき、絶望感に苛まれた。

 所詮は人間と悪魔の関係。

 悪魔は道具であって、それ以上でもそれ以下でもないのだ。

 耕平にとっては、ほのかとか言う子の事が大事なのだ。

 思わず発してしまった言葉は、さらに怒りのループを発生させ、自分自身を痛めつけながら、収拾がつかなくなってしまった。

 売り言葉に買い言葉の応酬。

 結果、耕平に嫌われてしまっては、意味が無いじゃないか。


 ……あたし、何やってんだろ


 こんなにも悔しく、悲しい思いをするのなら、現れなければ良かった。


「――っ!」

 突然、すなをは、弾かれたように顔を上げた。

 鋭利な刃物で切られるような、鋭い痛み。

「どうした?」

 コロップの怪訝そうな声。

 高鳴る鼓動の中、すなをは、自分の身体の異常をチェックし、痛みを発する場所を探す。

「ぐっ――」

 再び、焼けるような痛みが走る。

 すなをは思わずうめき声を上げると、布団をはね除け、暗闇で目をこらす。


「……ああ、傷口が開いたようだな。興奮しすぎだ。その部分は、応急的な処置で、ちゃんと再生させていなかったようだな。あまりに多すぎて、忘れていたか」

 冷静な声でコロップ。

 すなをが、足首を触ると、ヌルッとした生暖かい感触。

 ハッと息を呑むすなを。

「どうした? 他にも痛む場所があるのか? それなら――」

「布団、汚しちゃった。……どうしよう。また、コーヘイに怒られちゃう」

「……すっかり馴染んでしまったようだな」

 コロップのため息の直後、足首が温かくなり、やがて、痛みが完全になくなった。

「あと、これもお願い」

 すなをは、コンパスを布団の上に置いた。


 ふと、コロップの視線に気付き、すなをは、慌てて鈍い痛みを発する腕を押さえた。

 ふわりと、白い包帯の結び目が揺れる。

「こっちはいい」


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