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見積もりが甘かった、そう言われればそれまで。
悪魔としての資質を問われるかも知れない。
とにかく、すなをは、そのために、基地に侵入を試み、銃撃を受ける羽目になった。
何の悪意も感じない無機質なものからの攻撃を受け、すなをは文字通り生命の危機に陥った。
もっとも、死に対する恐怖など、悪魔には無いから平気。再生すればいいだけ。
しかし、想定外の出来事が、すなをを危機に陥れた。
旋回の際、耕平との唯一のつながりを取り落とした瞬間、身体が恐怖で支配されたのだ。
コーヘイに嫌われる!
冷静な判断機構は全て停止、無我夢中でそれを取り戻そうとした。
無機質な攻撃は、焼けるような衝撃でもって、無防備になったすなをの身体を幾度も貫いた。
『もう再生が間に合わない! 消滅するぞ!』
コロップが繰り返し叫んだ気がする。
……あと少し、あと少しで届くから! もう少しだけ耐えて、あたし!
そして、すなをは薄れる意識の中、差し伸べた手の中に、確かなつながりが戻ったことを確認し、夢中でゲートを開いた。
耕平の下に還りたい! と念じて。
すなをは、手の中のコンパスを見つめる。
消耗した身体での、規定を遙かに超えた超長距離の空間移動。
無事に還れたこと自体が、奇跡。
開かれた扉の向こうに耕平を見つけ、
奇跡を生み出した、耕平との繋がりに感動し、
頬の痛みすら、いとおしく感じた瞬間。
しかし、そんなすなを行動を、耕平は『悪戯』の一言で片付けた。
挙げ句は『迷惑』とまで言ったのだ。
もちろん、すなをは耕平に説明した訳じゃないから、何があったかなど知る由もない。
でも、理屈で分かっていても、いくら自覚していても、声に出して言われると、その刃は、どこまでも深く、心の奥底に突き刺さる。
……コーヘイなら解ってくれてると思ってたのに
自分の感じている距離と、耕平のそれとが違っていたことに気づき、絶望感に苛まれた。
所詮は人間と悪魔の関係。
悪魔は道具であって、それ以上でもそれ以下でもないのだ。
耕平にとっては、ほのかとか言う子の事が大事なのだ。
思わず発してしまった言葉は、さらに怒りのループを発生させ、自分自身を痛めつけながら、収拾がつかなくなってしまった。
売り言葉に買い言葉の応酬。
結果、耕平に嫌われてしまっては、意味が無いじゃないか。
……あたし、何やってんだろ
こんなにも悔しく、悲しい思いをするのなら、現れなければ良かった。
「――っ!」
突然、すなをは、弾かれたように顔を上げた。
鋭利な刃物で切られるような、鋭い痛み。
「どうした?」
コロップの怪訝そうな声。
高鳴る鼓動の中、すなをは、自分の身体の異常をチェックし、痛みを発する場所を探す。
「ぐっ――」
再び、焼けるような痛みが走る。
すなをは思わずうめき声を上げると、布団をはね除け、暗闇で目をこらす。
「……ああ、傷口が開いたようだな。興奮しすぎだ。その部分は、応急的な処置で、ちゃんと再生させていなかったようだな。あまりに多すぎて、忘れていたか」
冷静な声でコロップ。
すなをが、足首を触ると、ヌルッとした生暖かい感触。
ハッと息を呑むすなを。
「どうした? 他にも痛む場所があるのか? それなら――」
「布団、汚しちゃった。……どうしよう。また、コーヘイに怒られちゃう」
「……すっかり馴染んでしまったようだな」
コロップのため息の直後、足首が温かくなり、やがて、痛みが完全になくなった。
「あと、これもお願い」
すなをは、コンパスを布団の上に置いた。
ふと、コロップの視線に気付き、すなをは、慌てて鈍い痛みを発する腕を押さえた。
ふわりと、白い包帯の結び目が揺れる。
「こっちはいい」




