3-(4-5)
「一体どういうつもりだ?」
「――」
枕に顔を埋め、肩を揺らすすなをにコロップが咎めるような口調で問う。
「あの人間に、あのような発言をし、本当に契約解除されたら、どうするつもりだ!」
「――」
「いいか? こんなチャンスは二度と無いのだぞ? 最後の最後でチャンスを掴んだのに、それをみすみす無にするのか?」
「別にっ……良いもん」
くぐもった声で、すなを。
「……あのな、少しは冷静になれ。一体どうしてしまったというのだ。ここ数日のお前の行動は、常軌を逸している。まず、何が大切かを考えろ。事情を知らない人間の言葉にいちいち反応して、こちらまで挑発してどうする。契約解除されたら、全てが終わってしまうのだぞ」
「終われば、……じゃない」
コロップは大きくため息をついた。
「……終われば良いって、全く、世話の焼ける。……いいか? 私は、お前の『今の』目的は、解っている。……解っているつもりだ。でも、だからこそ、もし、そうなったら、今日まで、身体を張ってきた、意味がないではないか」
今度は諭すように一言一言ゆっくりと言うコロップのその言葉に、すなをは嗚咽を漏らす。
そう、別に認めて欲しいとか、そう言うことは望んでいない。
自分の存在が耕平に迷惑をかけている、そんなことぐらいすなをも解っている。
でも、だからこそ、そんな耕平の願いを叶えるために、
今までに、すなをは、二度も生死の境をかいくぐってきた。
だが、それは、契約のためなのか?
正直、すなをにも、それが判らなくなってきている。
そもそも、願い事を無理に履行する必要など無かったのだ。
七日間契約解除さえされなければ、願い事など放っておいても、すなをが生き残る道はあるのだ。
すなをがこの世界に来た目的は、すなを自身が生き延びること。
その目的を達成する手段として、契約者を怒らせないこと。契約解除されないこと。
それだけ守れと、そう言われた。
その他の事は一切考えるなと言われた。
だけど……
あの日、すなをの頭に手を乗せて発した耕平の言葉は、すなをの身体に染み込み、すなをの中にあるスイッチを切り替えた。
恐らく、その辺りから、本来の目的の『本来』の定義が少しずつ変わっていったのかも知れない。
守るべきものが何なのか、それが判らなくなってきた。
そして、契約のことよりも、『そちら』を優先するようになった。
それが、自身を追いつめていることも、最初の頃は自覚していたはずだ。
コーヘイの喜ぶ顔を見たかった
たった、それだけの理由。
だけど、とても大きな理由。
そのために、自分に出来ること。
魔法を使っても、失敗して怒られてばかり。
そうだ、願い事を叶えよう。
人捜しなら何とかなると思う。
場所も判ってるし。




