表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/68

3-(3-3)

 ざわめく木々。

 木々のざわめきに応じて、月の光がまばらに降り注ぐ。

 その光が、真っ黒なキャンバスに、様々な模様を描きつつ変化していく。

 ぼんやりと地面を眺めるすなをの髪が風に靡き、透き通る青に月光の黄色が混じり、不思議な色を演出する。


「ねぇ、コロップ。風、止まないかなぁ」

「あと、一分で止むはずだ」

「そう……」

 すなをは、ぼんやりと、地面で変化する黄色い光を見ながら、ため息をつく。

「何か、気になることがあるのか? 一分が、それほどのロスとは思えないが?」

「え? あ、別に、それはいいの」

 コロップの問いに、自分の腰の辺りに視線を移し、すなを。

「じゃあ、何故ため息をつく必要がある?」

「……今日は、還ってこられるかな」

「どういう事だ?」

 すなをが顔を上げる。何か思い詰めたような表情。

「……ああ、昨日は大変だったからな。だが、銃撃を受けようとも、危なくなったらすぐゲートを開いて逃げれば良い。ゲートを開くだけの力を温存しておけば、還ること自体は問題ない」

「解ってるわ。昨日は少し深追いしすぎたし。今日は、攻撃受けた時点で、すぐに逃げるわ」

 すなをは頷く。

「そうそう、昨日のは一度の空間移動距離としては規定ギリギリだ。あれ以上だと、どこにたどり着くか判らないぞ。何度も言うが、願い事の件は、『出来れば』程度でいいのだ。あんなに必死になる理由が見当たらない。大体、お前の行動は無計画極まりないのだ、もう少し考えてだな――」

「うるさいわねっ! 解ってるって言ってるでしょ? 無理はしない。あと、コーヘイの所までゲート二回の移動でギリギリ、通常は三回で移動すべき。そう言うことじゃん。今日は上手くやるし!」

「解っているなら良いが……」

 その時、風が止んだ。


 コロップを睨み付けていたすなをは、呼吸を整えると、表情を改めた。

「さあ、行くよ!」

「何処に行くの?」

 突然、背後でする張りのある少女の声。

 すなをは、文字通り飛び上がった。

 気を失わんばかりの動揺を必死に抑え、暗がりに視線を走らせる。

「……あおい……ちゃん?」

 ひときわ大きな木の脇に佇んでいる、長身で髪を一つにまとめている、高山学園の制服を着ている少女。

 右手に何かをぶら下げている。

 知っている人、と言うことで、幾分か鼓動が落ち着く。

 動作を再開した、すなをの記憶回路が二日前の映像を映し出す。

 ジャージか制服かの違いだけで、間違いなく、葵である。

「よっ! 覚えててくれたんだ~。嬉しいな」

 葵は、笑顔を作ると、軽く左手を挙げた。

「ああおいちゃんは、どうしてここに?」

 気付かれていませんように、と祈りながら、様子を探る。

「どうして? ってのは、あたしが聞きたいね。すなをこそ、こんな夜更けに、人気のない公園で何してるのさ。てか、趣味は独り言か?」

「えっ? あ、……えっと」

 まるで、審判者のような厳しい追及に、すなをは言葉に詰まる。

 実際は、ただ単に、思った事を口にしただけだろうが。

「あたしはさ、家がこの近くだし。今は部活の帰り。さっきまで漫喫でみんなとだべっててさ、っで、通りかかったら、すなをがいたってわけ」

 すなをの動揺に気付いたのか気付いていないのか、葵は、右手の鞄をすなをに見せる。

 葵は、そのまま、すたすたとすなをに近づいてきた。

 何故か、再びすなをの鼓動が速くなる。


「あのさ、今日は、あまり日が良くないし、止めた方が良いよ?」

 ずい、とすなをに顔を寄せ、葵は囁いた。

「えっ? な、何を?」

 すなをは、思わず一歩後ずさり、ひときわ大きな木の陰に入る感じになる。

 葵が何を言っているのか解らない。

 いや、言葉の意味は分かる。葵がどういう意図で、その言葉を発しているのか解らないのだ。

 (この人、何者?)

 すなをの中で、何かが警告を発する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ