3-(3-1)フラグ
穏やかな曲が空間を満たす。
明るい室内では、にぎやかな話し声が飛び交っている。
大山は、自分の隣にちょこんと座っている、明るいブラウンの髪を肩まで垂らし、薄ピンク色のブラウスを着ている少女に、『てつ☆あゆ』と書かれた、名刺サイズのポイントカードを見せた。
「すまん、あゆみ。また、ためなきゃならんな」
大山は、ポイントカードの『残P 25P』と言う部分を指差し、申し訳なさそうに呟いた。
「何言ってるのよ。あたしもOK出したんだし、鉄ちゃんが謝ること無いじゃん」
何て言うか、やることなすこと無茶苦茶なのに、こう言った、どうでも良いところで、妙に気を遣うところが大山らしいなぁと、あゆみは微笑む。
「それより」と、あゆみは、窓の外の、すっかり日が暮れ、暗くなった道をちらりと見ると、大山を見上げた。
「浅倉君、上手く行ったの?」
「ああ、デート自体は上手くいったのだが……」
「『が』?」
大山の煮え切らない言葉に、あゆみは眉をひそめる。
「うん。どうやら、浅倉君は、思ったよりも瞬間沸騰タイプだったらしく……」
「つまり?」
あゆみの声のトーンが下がる。
「いきなり上り詰めて、ブルーになったと思われる」
「ふ~ん。ほおふぁんふぁ~」
あゆみは、「な~んだ」と、適当に頷くと、アイスコーヒーのストローをくわえた。
「いや、『そうなんだ~』って、正直、けしかけて正解だったのか、私も悩んでいる」
大山も、湯気の立つカップを持ち、あゆみを見下ろすと、眉間にしわを寄せる。
あゆみは、アイスコーヒーをすすりながら、しばらくの間、ぼんやりと店内を眺めていたが、おもむろにストローから口を離すと、笑みを浮かべた。
「鉄ちゃん、考えても仕方ないって。だって、振られたんなら、そりゃ、みんなで慰めるとか、やりよう有るけど、そうじゃないんでしょ? きっと上手くいくって。後は、本人達の問題。時間が解決するし」
「そういうものか……」
「そうそう」
あゆみは、再びストローをくわえた。




