2-(4-1)想い
ぴゅうぴゅうと風切り音が聞こえる。
その音が、吹き付ける風が、心地よい。
いや、心地よいのは、身体だけではない。
何て言うか、心の中がぽかぽかとした暖かさで満たされている。
こんな感覚など、今まで無かった。
「綺麗な世界ね……」
すなをは、流れる灯りを眼下に眺めながら、嬉しそうに首から下がっているコンパスを手に取る。
「あれはただの街明かりだ。『綺麗』と言うのが、どの部分か解らん。今までの世界と大きく違うとは思えないが、どこか異なる所でもあるのか?」
「んー、どこって言われても……。でも、綺麗だわ」
コロップの言う通り、眼下に映るのは、今までいた世界と大きな差はない、人間の営みの風景。
だけど、この世界は、何故かとてもキラキラしているように感じる。
その灯りは、時折、ゆっくりと流れるような変化をし、まるで、すなをと一緒に空中遊泳を楽しんでいるかのよう。
何故、そんな風に感じるのかしら……。
この綺麗な世界、コーヘイにも見せてあげたいなぁ。
そうだ、コーヘイと一緒に見たら、何故か解るかもしれないわね。
あ、でも、魔法は禁止でしょ、って怒られちゃうか……。
「……でも、今日は楽しかったわ~」
しばらく考え込んでいたすなをは、その思考を放棄し、ファミレスでの場面を思い出すと、笑った。
「楽しい? 何故だ?」
「え?」
「今日は、特に何事もなかった。敢えて言えば、あの人間に連れ出され、騒がしいところに行っただけだ。楽しい、と言う場面が何処の部分なのか判らぬ」
「そこに行った事が、楽しかったんじゃない」
「そう言うものか?」
「もう、コロップってば、さっきから。そんなことばかり言ってると、人生つまらないよ?」
すなをはちらりと腰の辺りに視線を移すと、再び前を見る。
「人生……ねぇ。まあ、契約者に気に入られるのは良いことだ。契約解除されるリスクが少なくなるからな。そういう意味では、お前の考えは正しいのかも知れぬ」
「そうね。契約解除されないためにも、もっと気に入られなきゃ」
……違う! そう言う意味じゃないし
すなをは、自分の発した言葉と心のギャップに戸惑いながら、夕方の出来事を思い出す。




