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家に帰り、すなをの部屋に行った。
部屋の隅にちょこんと座っていたすなをは、耕平が部屋のドアを開けるなり、駆け寄ってきた。
そして、大山に言われた通り、耕平が恐る恐るジョーズカフェに誘うと、神妙な顔をしていたすなをは、ぱあっと表情を輝かせ、「行く!」と即答しかけた後、ハッとした表情で口に手を当て、「けっ、契約者の命令だし。断る理由はないわ」と付け加えたのだ。
「何で行かなきゃいけないの?」のような、最悪の事態が起こらなかった事でほっとしていた耕平は、その変化に気付かなかったわけだが。
目の前で山盛りのケーキと格闘しているすなを。
ああ、こうしてみると、すなをって見た目は結構可愛いんだな、と言うより、今はまるで、小学生のようだ。
耕平は、こぼれる笑みを抑えられずにいた。
それにしても、正直、ファミレスに連れてきただけで、すなをがここまで機嫌が良くなるとは思わなかった。
先輩って、伊達に可愛い彼女と付き合っている訳じゃないんだな。
耕平は、大山に感心する。
「ねぇ、コーヘイは食べないの?」
思考を現実に戻すと、すなをがフォークを片手に、耕平を上目遣いに見上げている。
「うん、僕はジュースが飲めればいいから。それよりもさ、ケーキ美味しい?」
耕平は、笑った。
正直、すなをの山盛りのケーキを見てるだけで、お腹いっぱいである。
「うんっ」
最初は雲行きが怪しかったが、甘いものを食べて心に余裕が出来たのか、他愛のない会話をしているうちに、すなをは、耕平の発言にいちいち突っかかってこなくなった。
そう、会話のキャッチボール。
今は、それが、確実に出来ていると思う。
何だか、こういう場面だけ切り取れば、普通の高校生のカップルに見えなくもない。
昨日と異なり、すなをは、薄ピンク色のブラウスにクリーム色のベスト、胸元には水色のリボン。
つまり、高山学園の制服を着ている。
経緯については耕平もよくわからないが、美佐がすなをに着るように言ったらしい。
まあ、制服は似合っているし、普通にしていれば十分可愛いし、見ての通り、今は凄く素直だ。
もしかすると、徐々に関係が進展していき、その先は……。
「コーヘイ? どうしたの? あたしの顔に何か付いてる?」
気付くと、すなをがこちらを見ている。
「あっ、や、べ別に、何でもないよっ」
耕平は、下らない妄想に浸っていた罪悪感から、嫌な汗が噴き出し、
「そ、そうだ。すすなをは何かおかわり飲む? オレンジジュースで良い?」
慌てて立ち上がると、すなをの返事を待たずにカップを受け取り、ドリンクバーコーナーへと向かった。
「ふふ、変なコーヘイ」
あっけにとられた顔で耕平の後ろ姿を見ていたすなをは、再び笑みを浮かべると、今度はティラミスの山と格闘を始めた。




