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2-(3-3)

「……で、これは何ですか?」


 目の前に差し出されたカードを見ながら、耕平。

『てつ☆あゆ様』とプリントされたポイントカード。

 表示によれば、千五百二十五ポイントたまっている。

「そのポイントカードを、浅倉君に譲ろうと思ってね」

「すみません。全く話が見えません」

「それを持って、あの子とデートに行きなさい」

 耕平の反撃を軽くかわし、大山は、ビシッと耕平を指差した。

「はい?」

 あまりにも予想外すぎて、耕平は、驚く事を忘れ、その意味を必死に考える。

「なるぅ~! 名案だし。さすがは先輩! 普段はボケ老人なのに」

「褒められてるのか、けなされているのか」

「勿論、褒めてますよ~」

「ごめん、ほのか、本当について行けてない」

 耕平は、大山に笑顔を向けているほのかを見た。


 ここまで来ても、デート云々は置くとしても、そもそもポイントカードの意味がわからない。

「だからぁ、ジョーズカフェのね、千五百ポイントで、確か、ケーキバイキングがペアでタダになるわ。ドリンクバーも付いてるし」

「おおっ! さすがは神崎君。その通りだっ」

「はぁ、……で、ジョーズカフェに行って、ケーキバイキング頼んで、どうするんですか?」

 耕平のこの言葉に、大山とほのかは顔を見合わせ「思ったより重傷だな」「すみません、教育が悪くて」と口々に呟く。

「あのね? 耕平。どうするって、そりゃ、お互いの理解を深めるために、会話したらいいじゃん?」

 耕平の手の中のポイントカードを眺めながら、ほのか。

「会話? 別にジョーズカフェじゃなくても……」

「家で……って言いたいんでしょ? でも、家では会話が弾まないんでしょ? だったら、雰囲気を変えるの。基本よ?」

 ほのかは、「もう、高校生にもなって、そんなこと説明させないでよ」と呟く。

「そんなんで、会話が弾むとは思えないんだけど」

「いーや、それは違うぞ? 浅倉君」

 大山は腕を組むと、

「女の子ってのは、……まあ、男も同じだが、異性の相手から誘われて悪い気はしない。むしろ、自分のことをそれだけ想ってくれてると考えて、気分が上向きになるものだ。だから、普段喋らない事とかも、色々喋る事が出来ると思うぞ?」

 そう言い、うんうんと何度も頷いた。

「さすが、経験者は語るってやつですね~」

「そ、そう言うものかな……」

 これは耕平。

 いや、関係だろ? 別に険悪って訳じゃない。

 それ以上でもないけど。

 て言うか、契約者と悪魔との関係だ。

 ……言えないけど。


 だけど、と、耕平は考える。

 今のすなをとの関係って何なんだろう。

 そもそも、自分はどう思っているのだろう。

 契約者と悪魔との関係、と言っても、何か自分の感じている、もやもやとしたものは、それとは異なる気がする。

 大体、悪魔を呼び出したくて呼び出したんじゃない。

 たまたま目の前に現れたのが悪魔だっただけだ。

 当初は鬱陶しいと思っていた。それは事実。

 だけど、今は違うような気がする。

 すなをの色々な姿を見るたびに、慣れてきたのか、感じ方が変わってきている。


 すなをはどうなんだろう?

 考えて見れば、当初と違って、偉そうな態度も取らなくなった気がする。

 まあ、契約解除されたくないってだけなのかも知れないが……。

 でも、昨日だって、一緒に帰る事について特に嫌そうでもなかったが、終始無言で、家に着くと、無言のまま自分の部屋に消えてしまった。

 正直、何を考えているか、解らない。


 自分とすなをとの間に、あとどれほどの距離があるのか……

 確かに、その答えが見つかるかも知れない。

 見つかった先に何があるのか、それは判らないが……。

 ここで、耕平は、大前提となる大きな問題に気付く。

 そもそも、すなをが誘いにのるか、と言うことだ。

 万一、「何企んでるの?」とでも言われたら、かなりへこむ。


「なおっ! 今ならこれも付けちゃう!」

 大山は、大げさなアクションで、バンッと、ポイントカードの脇にUSBメモリーを置いた。

「リベンジだ。今日は二本だけ」

 見上げる耕平に、大山は口の端を上げる。

 しかし、大山も、よくもまあ次から次へとフー・ファイターのビデオクリップを見つけてくるものだ。

 世の中に、あからさまに偽物とわかるクリップが無数に存在していることは、耕平も知っている。

 大山は、その中でも『もしかするともしかして』と言う、厳選に厳選を重ねたデータだけを耕平に渡すのだ。

 まさに数万、いや、もっとあるかも知れない、その中で選ばれた数個ということだ。

 昨日の『偽物』も、耕平ほどの知識がなければ、偽物と断定することは困難である。

 それだけ、高度なデータであることは、間違いない。


「わかりました。どうなるか分かりませんが、誘ってみますよ」

 ビデオクリップの魅力に惹かれたと言えばそれまでだが、耕平は頷いた。

「よしっ。それでこそ、浅倉君だ」

「でも、断られたら、それ以上努力しませんよ?」

「それはない。保証する」

 何故か自信満々の大山。

「頑張ってね~、耕平」

 ほのかの声を背中に受けながら、耕平は部室を後にした。


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