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2-(2-4)

「――!」

 絶望感に苛まれながら『その瞬間』を待ち、すなをは身体を緊張させた。


「……」

「? ……ほーふぇい?」

 あれ? まだ身体の感覚が……、て言うか痛いんだけど。

 すなをがゆっくりと目を開けると、耕平が、厳しい表情ですなをの両頬をつねっていた。

「……」

「ひはい、ほーふぇい」

 頬を引っ張られ、上手く喋れない。

 すなをは、耕平の手を掴み、引きはがそうとする。


「ごめんなさいは?」

「ふえ?」

「約束破ったでしょ? ごめんなさいは?」

「はっへ~」

「契約解除されたいの?」

 耕平は指の力を強める。

「……ほ、ほへんふぁはい」

 すなをが謝ると、耕平は微笑み、指を離した。

 すなをは涙目で両頬をさする。

「もー、本当に頼むよ? もし、すなをが悪魔だってばれたら、僕じゃどうしようもなくなる。すなをだって、どうなるか分からないんだよ?」

「え?」

 耕平の言葉の意味がわからず、すなをは耕平を見上げる。

「だからっ、もしそうなったら、僕ではすなをを守ることが出来なくなるって事っ!」

 耕平は、顔を赤くし、怒りを含んだ声で言った。


 それって、どういう……。

 それに、今回も契約解除されなかった。

 どうして? すなをは、頬の痛みを感じながら、目の前の耕平を理解しようと努めていた。

「まあ、いいけど。……もう、収まったみたいだし」

 耕平は、視線をすなをの後ろに投げる。

 耕平の言う通り、いつの間にか、女子生徒の叫び声は聞こえなくなっていた。

 何故かは解らないが、不完全なすなをの魔法が効力を失ったのだろう。

 耕平は、すなをの頭にぽんっと手を置いた。

 すなをの鼓動が速くなる。

 何故か、耕平の手を振り払う気になれない。

「いい? 絶対に約束は守ってね? 飛ぶのは仕方ないって言ったけど、人前で魔法は禁止。どうせ上手くいかないんだから。失敗したらさっきみたいに騒ぎになるし。次からは気をつけてよ? わかった?」

 耕平は、すなをの頭をぐりぐりやると、

「叔母さんが連れてきてくれたんだろ? もう、理事の権限を乱用して~」

 恨めしげに、後ろを振り返りながらぼやいた。


 耕平の言う通り、すなをが部屋で暇をもてあましていると、美佐がやってきて、「耕平が行ってる学校見に行く?」と言ったのだ。

 勉強をする場所の学校には興味がなかったが、『耕平が行ってる』と言う点にすなをは食いつき、美沙に付いてきたのだ。

「……ちょっと片付けてくるから、そこで待ってて。いい? すぐ戻ってくるから、絶対動いちゃ駄目だよ? 一緒に帰ろう。……まあ、余計なお世話かも知れないけど」

 耕平は、ちょっと固い笑みをすなをに向けると振り返り、建物の向こうへ歩いていく。


「うん」と言いかけたすなをは、焦てて言葉を飲み込んだ。

「そっ、そうね! 迷子の子供じゃないし。……でも、コーヘイの言うこと聞かないと契約解除にされちゃうから、ここで待ってるわっ」

「そういうこと。よろしくっ!」

 耕平は、振り返らず、軽く右手を挙げると、そのまま建物の角を曲がっていった。

 すなをは、大きく息を吐き出す。

「まったく、あの人間、悪魔の扱い方を完全に間違えているな」

 コロップの呆れたような声は、すなをの耳に届いていなかった。

「『一緒に帰ろう』……かぁ」

 何でだろう、泣き出したいような、でも、暖かいような……、不思議な感じ。

 すなをは、耕平の手が乗っていた部分の髪を、いつまでも撫でていた。


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