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2-(2-1)契約者

「いや……、だから、確率が高いとは言ったが……」

「高いって……。高いどころかっ! 五本とも、全てインチキでしたよっ! 睡眠時間返して下さいっ」


 逃げ腰の大山に、耕平が、すごい剣幕で食ってかかる。

 超自然科学研究部の、いつもの風景。

 耕平と大山か、ほのかと大山か、いずれにせよ、大山が責められるという構図は変わらない。

「だ、だが、偽物だとは言い切れないんじゃ……! ……いや、まあ、もちろん浅倉君がそう言うなら、間違いないわけだが」

 再び言い逃れようとした大山だが、耕平に睨み上げられ、口を閉ざす。


「はいっ、お二人さん、そこまでっ。てか、耕平も、ちょっとは落ち着く」

 ほのかが二人の間に割って入り、白いテーブルの上に湯気の立つカップを二つ並べた。

「だって、ほのか……」

「とにかくっ、まずは飲もうよ。せっかくあたしがアップルティー美味しく入れたのに、冷めちゃったら台無しじゃん?」

 ほのかの微笑みに、耕平は、ばつの悪そうな顔で口を閉ざす。

「……うん」

「すまない、神崎君」

 耕平は、息を吐くと、ほのかに促されカップを手に取る。

 甘い香りと少し渋みのあるその味に、少し気分が落ち着く耕平。

 先ほどの興奮と、お茶の熱さで、じっとりと汗がにじんでくる。

 ほのかは、一年を通して熱い飲み物しか出さない。

 ほのかの祖母が「暑いときは熱いもの」と言っているのを、どうやら忠実に守っているらしい。

 耕平も大山も本当は冷たい物が欲しいのだが、それを言って、ほのかが機嫌を損ねたら何かと大変なので、黙って飲んでいる。

 もっとも、ほのかの入れるお茶は、素直に美味しいと思うのだが。


「っで、耕平は、どうしてそのデータがインチキだって断定したの?」

 カップを揺らしながら、ほのかが耕平を見る。

 そう、その話。

 耕平は頷き、カップをゆっくりと置くと、大山を見た。

「うん、……あ、先輩。ちょっと先輩のノート貸して下さい」

「あ、ああ」

 大山は、頷くと、鞄からB5サイズのノートパソコンを取り出した。

 耕平はパソコンを開き、昨日のUSBメモリを差し込む。

 僅かの後、画面内でウィンドウが開く。

『激写! フー・ファイター』と言うフォルダの隣に、『ありえねー』と言うフォルダがある。

耕平は『ありえねー』フォルダをクリックし、開いた。

 画面いっぱいに画像ファイルが並び、それぞれに飛行機のような物体が二体映っている。

 まるで、一機がもう一機を追いかけているように見える。

「先輩からいただいた動画をフレーム分割して、ラスターに展開しました」

「ごめん、耕平。いきなりついて行ってない」

 ほのかが戦線離脱を宣言する。

「簡単に言えば、一コマずつ静止画像に直したって事だよ」

「ああ、そういうこと」

「じゃあ、そうやって言えばいいじゃん」と突っ込むほのかをちらりと見ると、耕平は、再び画面を操作した。


「次に、各レイヤー情報を展開したのがこれで……」

 二機の飛行機の部分が、それぞれ拡大表示され、その隣に、細かい数字の羅列が表示される。

 遠目に見ると、その数字も何となく飛行機の形に見える。

「なにそれ」

 再びほのか。

「それぞれの機体部分のパレット情報だよ」

「ふーん」

 わかんないけど、別にいいや、と言った感じで、ほのか。

「特に、おかしな所はないと思うが?」

 画面を覗き込み、大山。

「まあ、見てて下さい」

 耕平が、再びマウスを操作し、三角形のマークが付いたボタンをクリックする。

 画像がコマ送りで表示され、飛行機の背景が少しずつ変わっていく。

 同時に、数字の羅列も変わっている。

「わあ、面白い」

 ほのかが目を輝かせる。何をしているのかさっぱりではあるが。

「わかりました? 先輩」

「すまん。何も」

 見上げる耕平に、大山は頭を掻いた。

「じゃあ、これで……。もう一度いきますよ?」

 耕平は、画面を操作すると、再び同じボタンをクリックする。

 大山が顔を近づけた。

 再び、数字の羅列が変化していく。

 と同時に、追いかけられている機体の周りが赤枠で囲まれる。

「! そうかっ。……でも、これは?」

「周りとの色差を計算し、ある閾値以上の部分を表示させてます」

 ちらり、と、ほのかを見つつ、耕平。

 ほのかは、既に興味なしと言った感じで、お茶を飲みながら、テーブルの上の書類に目を通している。


「普通、自然の映像であれば、背景は画面内で徐々に変化していますから、突然色相が変わることはありません。こちらは……」

 耕平は、追いかけている側の機体を指差し、

「本物です。ですから、急激な変化がありません。でも……」

 追いかけられている側を指差し、

「こちらは、確かに飛行物体ですが、この部分で激しい色差が生じています。つまり、連続した画像ではない、適当な画像を元の映像と合成したって事ですよ」

 耕平は、そこまで言うと、カップを手に取った。

「そうか……、それは残念。他のも同じかい?」

 大山が、窓際に向かう耕平の背中に声をかける。

「はい。全く同じ方法で合成されていました。多分、投稿者同じじゃないんですか?」

「いや、名前は違っていたが」

「コンテンツID確認しました? 表示名なんて、簡単に操作出来ますからね。複数の投稿者が投稿したように見せかけて、本物だと思わせる狙いでしょう」

「すまん、そこまでは……」

 コマ送りで表示される画像を眺めながら、大山。


「全く、こんな初歩的な合成で投稿するなよな~。ありえないし」

 ぼやく耕平を見ながら、大山は、「いや、普通は判りませんから、判るあなたがおかしいですから」とぼそぼそ呟いた。


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