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2-(1-3)

 張りがあり明るく、すなをと同じぐらいの歳の少女の声。

「ぼーっとして歩いてたら、こけるぞ?」


 すなをは、今度は少し悪戯っぽい雰囲気の声がした、右方向に顔を向ける。

 青色の引き戸にもたれかけ、意志の強そうな切れ長の瞳で、興味深そうにこちらを見つめる少女。

 奥でボールを追いかけている少女達と同じ服装をしている。

 背は、すなをよりも顔一つ分以上高い。

 百七十、いや、百七十五センチぐらいか?

 黒髪を後ろで一カ所にまとめ、垂らしている。

 多分、普通に伸ばせば、肩胛骨あたりまで有るに違いない。


「え?」

 何も思いつかず、曖昧な返事をするすなを。

 どういう訳だが、逆らう気が起きない。

 少女が白い歯を見せた。

「何だ、コスプレ研の子かと思ったら、学校見学か」

「こすぷれけん?」

 少女の視線の先にある、『入構許可証 柊すなを』と書かれた、自分の胸の名札をちらりと見ると、すなをは首を傾げた。

「いや、あんたさ、面白い格好してるし、てっきり、あっち系の人かと……。まあ、いいや。あたしは葵、よろしくっ」

「あおい……ちゃん? あれ、何してるの?」

 葵の後ろを覗きながら、すなを。

「何って、バレーボールの試合してるに決まってんじゃん。おかしな事聞く子だね。それよりもさ、すなを……で良いかな? もしかしてバレーに興味有るの? ちょっとおいでよ」

 葵は、不思議そうな顔をしていたが、再び笑顔を見せ、すなをに近づくと、手を取った。


 いきなり手を引っ張られ、焦るすなをだったが、やはり、その手を振り払う気になれなかった。

 耕平の時と同じか、と言うと、少なくともそれは違う、と断言出来る。

 何て言うか、従うのが当然というか、よく知っているような感覚。

 奇妙な感覚に戸惑うすなを。

 そんなすなをの様子に気付いていないのか、すなをの手を引っ張り、葵は室内に入る。


「ひゃっ!」

 突然、すなをの眼前に迫る白い物体。

 すなをは、情けない声を上げると、首をすくめ目をつぶる。

 ポスッと軽い音がし、恐る恐る目を開けると、葵が無造作にボールを掴み、投げ返していた。

「ごめ~ん。ありがと! 作本さん」

 葵に声をかけ、ボールを受け取る少女。

 クツクツという声に、すなをが横を見上げると、葵がすなをを見下ろし、笑っている。

「ふふっ、すなをって面白いね」

「やっ、あのっ、たまたま、い今は、油断してただけで……」

「しっかし、暑いね~。身体が溶けちゃいそうだ。あんた、そんな厚着してて良く平気でいられるね。何て言うか、目立ってるよ、うん。本来は暑いんだ。とにかく、ここでは目立つのはあまり良くないな」


 すなをの言い訳を聞き流し、すなをの服を改めて見直す葵。

 その首筋には幾筋もの汗が光っているし、白い服はあちこちが透けている。

 何が良くないのか解らないが、確かに、すなをが着ている紺色の服は長袖で、厚手の生地で出来ているし、おまけにショートブーツを履いている。

 暑そうだと思われても不思議ではないかもしれない。

 もっとも、すなをには、暑いとか、寒いとか、そう言う感覚はないのだが。


「暑い?」

「うんっ! 暑いっ! 全く、かき氷を頭からかぶりたい気分だよ~。つまり、そゆこと」

 葵がぼやく。

「氷?」

「ん? だって、そうすりゃ、少しは涼しく――」

「作本さーん! 交代~」

「あっ、呼ばれちゃった。まあ、ゆっくり見てって。でさ、良かったら、入学したときにうちにおいでよ。てか、あんまりうろうろするなよっ。……あ~、くそっ、それにしても暑いっ」

 葵は、すなをに一度微笑むと、集団の中に走っていった。


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