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私の住むせかい ~ 一つの願い事 ~  作者: みずはら
(第一章)雨の中で……
11/68

(4-2)

 ぼんやりと青い光で照らされた暗闇では、虫の鳴き声が木霊し、時折吹き抜ける夜風が、耕平の頬をそっと撫でる。

 そんな中、耕平は、木目調のドアの脇で息を潜め、中の様子をうかがう。


「セキュリティは作動してないから、外部からの侵入者とは考えにくいんだけど」

 鼓動は最高潮に達している。

 すなをがどうなっているか判らない。

 すぐにでも踏み込みたいが、タイミングがある。

 鍵がかかってないドア。無防備に寝ている少女。

 状況から考えられる事は、何者かの侵入。凶器を持っているかも知れない。


 この時点で、耕平は、最悪の事態を想像していた。

 自分の鼓動の音で、部屋の中の音がよく聞こえない。

「くそっ。鍵かけるように言うべきだったな」

 耕平は、銀色の鍵を握りしめると、呟いた。美佐から、すなをに渡すように書き置きのあったものだ。

 あんなことがあったから、渡す雰囲気じゃなくなっていたのだ。

 部屋の中のレイアウトを思い浮かべ、すなをの場所へ最短距離で駆けつける方法を――

 (いだああっ! ――っ!)

「動くなっ! 撃つぞっ!」

 すなをの悲鳴に、耕平の頭がスパークする。

 耕平は勢いよくドアを引き開け、エアガンを構えた状態で、すなをの部屋に飛び込んだ。

 段取りが無茶苦茶であるが、とにかく暴漢の行為を止めなくては!

 耕平は、無我夢中で、エアガンの狙いを対象に定め、安全装置を外す。


「お願い、やめてえぇ――」

「?」

 薄暗い部屋の中で、赤い光線がすなをの布団の当たりを指向し、耕平が目をこらす先で、すなをは激しく身体をのけぞらせていた。

「すなを?」

 すなをは、まるで身体に何かが絡みついているかのように、身体をかきむしるように両手を動かし、悶えていた。上にあるはずの掛け布団は、部屋の隅でくしゃくしゃになっている。

 すなをが身につけている、少し大きめのゆったりとした黄色い衣服は、美佐が用意したパジャマであろう。こちらもくしゃくしゃだ。

 部屋の中には、耕平とすなを以外誰もいない。

「もう、しないか……っ、」

 シンとした室内に、再びすなをの悲鳴が木霊する。


「すなを!」

 耕平は、エアガンを投げ捨てると、すなをの所に駆け寄った。

「悪かっ……、やめ……っ」

 すなをは激しく悶える。

「すなをっ! 目を覚ませっ」

 ……夢にうなされているのか!

 耕平は、すなをの肩をつかんで揺さぶる。

 すごい汗だ。

 それにしても、何て華奢な身体なのだろう。

 耕平は、気をつけないと折れてしまいそうな、初めての感覚に戸惑う。


「すなをっ! 起きろっ!」

 すなをの目が開き、耕平と一瞬目が合った。

 その瞳が耕平を捉え、耕平を認識する。

「お願いっ、コーヘイ! もうしないからっ。次はちゃんとするからっ! だから、だから……っ」

 突然すなをは、耕平にしがみついてきた。


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