(4-2)
ぼんやりと青い光で照らされた暗闇では、虫の鳴き声が木霊し、時折吹き抜ける夜風が、耕平の頬をそっと撫でる。
そんな中、耕平は、木目調のドアの脇で息を潜め、中の様子をうかがう。
「セキュリティは作動してないから、外部からの侵入者とは考えにくいんだけど」
鼓動は最高潮に達している。
すなをがどうなっているか判らない。
すぐにでも踏み込みたいが、タイミングがある。
鍵がかかってないドア。無防備に寝ている少女。
状況から考えられる事は、何者かの侵入。凶器を持っているかも知れない。
この時点で、耕平は、最悪の事態を想像していた。
自分の鼓動の音で、部屋の中の音がよく聞こえない。
「くそっ。鍵かけるように言うべきだったな」
耕平は、銀色の鍵を握りしめると、呟いた。美佐から、すなをに渡すように書き置きのあったものだ。
あんなことがあったから、渡す雰囲気じゃなくなっていたのだ。
部屋の中のレイアウトを思い浮かべ、すなをの場所へ最短距離で駆けつける方法を――
(いだああっ! ――っ!)
「動くなっ! 撃つぞっ!」
すなをの悲鳴に、耕平の頭がスパークする。
耕平は勢いよくドアを引き開け、エアガンを構えた状態で、すなをの部屋に飛び込んだ。
段取りが無茶苦茶であるが、とにかく暴漢の行為を止めなくては!
耕平は、無我夢中で、エアガンの狙いを対象に定め、安全装置を外す。
「お願い、やめてえぇ――」
「?」
薄暗い部屋の中で、赤い光線がすなをの布団の当たりを指向し、耕平が目をこらす先で、すなをは激しく身体をのけぞらせていた。
「すなを?」
すなをは、まるで身体に何かが絡みついているかのように、身体をかきむしるように両手を動かし、悶えていた。上にあるはずの掛け布団は、部屋の隅でくしゃくしゃになっている。
すなをが身につけている、少し大きめのゆったりとした黄色い衣服は、美佐が用意したパジャマであろう。こちらもくしゃくしゃだ。
部屋の中には、耕平とすなを以外誰もいない。
「もう、しないか……っ、」
シンとした室内に、再びすなをの悲鳴が木霊する。
「すなを!」
耕平は、エアガンを投げ捨てると、すなをの所に駆け寄った。
「悪かっ……、やめ……っ」
すなをは激しく悶える。
「すなをっ! 目を覚ませっ」
……夢にうなされているのか!
耕平は、すなをの肩をつかんで揺さぶる。
すごい汗だ。
それにしても、何て華奢な身体なのだろう。
耕平は、気をつけないと折れてしまいそうな、初めての感覚に戸惑う。
「すなをっ! 起きろっ!」
すなをの目が開き、耕平と一瞬目が合った。
その瞳が耕平を捉え、耕平を認識する。
「お願いっ、コーヘイ! もうしないからっ。次はちゃんとするからっ! だから、だから……っ」
突然すなをは、耕平にしがみついてきた。




