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32竜の巣へ①

 





 冒険者が街に来てから数ヶ月が経った。順調に侵入者が増えて害虫も冒険者も死んでいく。冒険者達に運ばせたディオネアは5階層や上の階で順調に育ち、キラーマンティスを捕食している。多数の冒険者の侵入によって、上層がみるみると攻略されて支配領域が増えていく。それに伴って、資金力もかなり増えているし、CPもRPの稼ぎもいい。人型に進化したキラーマンティスを始め、圧倒的な破壊力を持つリア本人がアイディリア達を率いて上層から殲滅を開始しているのも大きい。

 次々と解放される階層にバレないようにこちらのキラーマンティスを送り込んだり、細工を行っているが、どうしても地下に来る連中も居るが、そちらは普通に殺されているので問題は無いだろう。


「あははは、いけーそこだー!」

「そこです、そこ!」

「おめーら、遊びすぎだって」


 リアとリコリス、ラクロアが楽しそうに見ている画面では今までにないマンティスが整列している。そいつらは鎧を身に纏い、手に大鎌を装備している。そいつらの中心部でキラーマンティス対アーマドマンティスの戦いが行われている。


「鎧の機能ってなんだっけ?」

「身体能力強化と自己再生かな」

「装甲はアダマンタイトで表面にミスリルのコーティングをしています」

「魔法も跳ね返すし、加護もあげたから強いよ!」


 冒険者達もそれなりの装備をしているが、こちらはレベルが違う。上層に存在するシンクイムシやカイガラムシ、ソルジャーアントにキラーマンティスの上位種ウォーロードマンティス達相手にマトモに戦えている。むしろ、圧倒している。大鎌に関してもちゃんと強化装備が取り付けられているからだが。


「制圧も順調というか、順調すぎるな……」

「殆どの強者が鎧武者に殺られてるからな」

「ああ」

「最初の一ヶ月で、リアとアイディリアが鍛えたからね」


 希に最上階まで突破してくる強者が居たが、そこには2対2でリアとアイディリアの親子相手の練習相手をしている強者が存在している。

 そして、殆どが怪我を負い、リソースを殆ど削りきった状態での到着となる。その状態で守護者との戦いは彼らに絶望を与える。それでも、味方の犠牲の御蔭で1人だけ突破した奴が居たが、勝ったと同時に疲れ果てており、10秒に間に合わずに1階へと転移された。そして、至宝については伝えられたが、その後鎧武者がデータを更新した為、まず勝てなくなりだした。なので、現在は上層の下から中辺りまでを冒険者が攻略し、上からは俺達の支配領域が増えていっている。


「もう殆ど害虫の処理も終わってきたね」

「そうだな。まあ、しばらくは現状維持だな。ようやくダンジョンらしくなってきたし」

「うん♪」


 上層1階から最上階までは50層存在する。現存する中で最大のダンジョンだ。ちなみに上階が制圧された事で、どんどん下に害虫が逃げていく事態が発生しているので、害虫被害は中層が一番多い。しかも、クロネ達がドラゴンの姿になって大暴れもしているもんだから、冒険者達は大変だ。

 取りあえず、遊んでいるリア達を置いて、別の場所に移動する。


「さて、二重スパイはどうなっている?」

「偽装情報を出しまくっていますの。それと、エルフとの戦いが始まりそうですの。援護しますの?」

「いや、その前に資金源を落とす」

「へぇ……やりますの?」

「ああ。ダンジョンクリエイターとして、やってやる。こっちは楽になったしな。リアがかなり回復したみたいだから、任せても問題無いだろう」

「まあ、今はお母様が勝手に迷宮化させて遊んでおりますもの」


 ドライアード達も無数に発生し、それに伴いトレント達も無数に出現している。迷宮で惑わせ、壁に擬態したドライアードとトレントが襲いかかり、幾人もの冒険者や害虫を駆除している。そこに徘徊する警備兵である鎧武者も出現しているので、掃除は早い。鎧武者に出会ったら逃げろと言われているぐらいだ。何より、ドライアードに殺されると木人として蘇り、人を襲うモンスターとなる。ドライアードの正体はぶっちゃけていうと、リアが指揮するゴースト達を加護で精霊化させているだけなので、肉体を得て蘇るのだ。


「じゃあ、連れて行くのはキリルとハクア、クロネとリンでいいか。冒険者の精霊化はどうだ?」

「68%の半精霊化に成功。順調ですの。バレないようにゆっくりと侵食して、支配権を奪って気づかれないように同化するので、本人の意思と思って行動しても、全てこちらの都合がいいようになりますの」

「なら、そっちはそれでいいか。じゃあ、こっちは竜狩りにでてくる」

「分かりましたの」


 それから、キリルとハクアを連れて竜の巣へとクロネを使って転移する。竜の巣は巨大な穴から入る形式で、無数の敵が存在している。俺が竜の巣

 へ入ると同時にシステムメッセージが出現した。


【ダンジョンクリエイター・シンゴ様制作の竜の巣にダンジョンクリエイター・リクトが侵入しました。これより、ダンジョンクリエイター同士の戦いを開始します。両者のダンジョンに対してモンスター転送が可能となりました。なお、ダンジョンの壁への攻撃は全て無効化されます】


 こんなシステム聞いてねえぞ、おい。まあ、平気だけど。でも、戦争なら負けないぞ。俺は大弓を構えてハクアに乗りながら降りていく。


「にゃあ。敵、いっぱいくる」


 ハクアに乗って、穴の底に入ると10個の大きな入口があるのだが、その全てから大量のモンスターが押し寄せてくる。


「はっ、楽しみだな、おい!」


 精霊剣矢を揃えて、封印を半分解放状態で大弓で入口向かって射る。射た先で容赦無い爆発が起こる。精霊剣矢を使うと大弓の完全状態の通常攻撃並みの威力はある。第2射を即座に用意して、次々と矢を放ってモンスターを滅ぼしていく。


「流石に対応が早いな」


 俺達が居る広場みたいな場所に直接巨大な八本くらいはある大きな足をしたトカゲが17体召喚された。そいつらはこっちに瞳を向けて光線を放って来る。


「させないよ、ミラーシールド!」


 リンの声が響いて俺達を囲むように全方位に反射のシールドが展開されると、召喚されたモンスター達は光線を跳ね返されて自らの瞳を破壊された。


「これはバジリスクか。確か通った後には即死するほどの猛毒……待てよ、まさかこれを泉に放り込んだのか?」

「可能性はありますね、父さん」

「まともに触れれば危険だな。なら、クロネ。上に全員を飛ばせ」

「にゃあ」


 指示に従って瞬時に俺達はバジリスクの上空に移動する。そこから水属性の精霊剣矢を放ち、穴の底の空間を指定し、水で満たして数十トンの水圧で押しつぶし、溺死させる。眼を潰されたバジリスクには逃げる事が出来ない。


「父さん」

「ああ、助かる」


 キリルに抱えられて俺は下ろされる。ハクアは尻尾と身体で上手いこと衝撃を殺した。クロネはハクアの身体を滑って降りてくる。


「ハクア、食っていいぞ。バジリスクの毒は浄化してある」

「シャー」

「にゃあ。私も食べたい」

「じゃあ、いいぞ。キリルは護衛をしてくれ」

「はい」


 ハクアとクロネがかじりつくが、辛そうだ。


「解体するか……ちょっと待ってろ」


 俺は太刀を抜いて、バジリスクの身体に振り下ろす。大した抵抗も無く、輪切りにされていく。


「にゃあ。凄い。流石、ママとお姉ちゃんの加護」

「そうですね」


 キリルが新たに現れた走竜を真紅のデスサイズを軽く片手で一閃して斬り殺していく。不気味なオーラを出すこのデスサイズもアイディリアとリアの加護が入っている。1本しか使っていないが、かなり余裕そうだ。だが、キリルはポニーテールから三つ編みに変えて三つ編みの先端もデスサイズの刃に作り直した。


「さて、追加はなんですか?」

「こないな……」

「にゃあ。罠? はむはむ」


 バジリスクをみるみると吸収して取り込んでいく。その後、2人のステータスを操作して猛毒と猛毒耐性を習得させる。どちらも最大値で簡単に習得できた。ハクアに関しては肉体が巨大化している。


「今回はハクアの強化が目的だから、手に入れられる物は手に入れるぞ」

「にゃあ。任せて」

「はい。全て叩き切ります。では、スキャンが終了しましたので移動しましょう」

「クロネとリンは隠れてろ」

「にゃあ」


 クロネが瞬時に闇に溶けるので、俺達はハクアに乗って進んでいく。罠の解除なんてしない。精霊剣矢で文字通り破壊しながら進んでいく。


「先程の攻撃に巻き込まれたのか、冒険者が死んでいますね」

「ハクア、食っていいぞ。どうせなら利用させてもらう」

「シャー」


 口に含んでボリボリと金属鎧などそのまま喰らっていく。ハクアの牙には輪っかが取り付けられていて、色々と強化してくれるのでこれくらい軽い。


「後方に転位反応。前方に巨大な空間を確認。高エネルギー存在を確認しました。父さん、どうしますか?」

「決まっている。キリルは後方を頼む。キリルは俺が放った後に盾を展開。クロネとリンはキリルの援護」

「「「「了解シャー(にゃあ)」」」」


 精霊剣矢を取り出そうとして、手を止める。


「キリル、属性はわかるか?」

「解析します。前方の空間に存在するのは10メートル級、属性は水。不純物の存在は確認されません」

「そうか、ありがとう」

「いえ。先に伝えするべきでした」

「気にするな」

「はい」


 火属性の精霊剣矢を取り出し、番えて目の前の遥か遠くの空間へと放つ。放たれた精霊剣矢は瞬時に音速を超えながら広い通路いっぱいに分裂し、無数の精霊剣矢になりながら火の力を盛大に発動させて空間へと飛び込み、702発もの連鎖爆発を巻き起こした。こちらに衝撃が来る前にハクアが防壁を展開する。俺は大弓を放り捨てて太刀を2本引き抜いて地面にさしながら守護結界を発動させる。全属性の障壁を順番に展開して衝撃に備える。完全開放でなくても、その威力は凄まじく防壁を挟んだというのに障壁が6枚まで破壊された。


「オーバーキルだな。というか、何本に分裂するかわからないから怖いな」

「シャー」


 前方の空間は太陽のような光球が今なお出現していて、熱気をこちらに放ってきている。後を見ると、そちらでは龍の頭にライオンの上半身、ワシの下半身、鉤爪のような蠍の尾を持つ走竜のような存在と戦っているキリルとクロネが居た。


「強いですね」

「にゃあ。早い」


 そいつは決してキリルのデスサイズには触れないように距離を取りながら圧縮された毒液のレーザーを放ったり、ブレスを吐いてくる。バジリスクで手に入れた毒耐性が無ければ辛いだろう。


「これでどうですか?」


 キリルは鎌を囮に蹴りで相手の顎を叩き上げる。


「グッ!?」


 瞬時にクロネとリンが闇の爪で相手の影を突き刺して行動を止める。そこに光の鎖で雁字搦めにクロネが拘束する。次々に破壊されて、クロネも必死に止めているようだが、こんな隙を見逃すほどキリルはお人好しでもない。


「チェックメイトです。私の騎龍になるなら命は助けます」

「……」


 大人しく恭順したように見えるが、その瞳は爛々と輝き、扱えるものなら扱ってみろと目で語っている。


「では、このダンジョンを攻略後、私の物になってもらいます。父さん、いいですか?」

「いいぞ。それまではクロネの中に入れておけ」

「はい。お願いします」

「にゃあ。任せて」


 クロネが取り込んで3人がこちらにくる。


「さっきのは……」

「パパ、あの子を知ってる?」

「ああ。ムシュフシュだな。古代メソポタミアの伝承に登場する霊獣だ」

「それは儲けものですね」

「シャー」


 話しながら通路の先に向かうと、細い橋が広大な空間に存在し、中央に円形のリングが存在する。そのリングに東西南北から4本の橋があり、下は見えないほど黒いが何が居るかはわからないし、おそらく落ちたら助からないだろう。そして、中央には引きずった後があり、そこら中の壁や橋の上に無数の肉片が存在し、反対側の奥にはドラゴンだったであろう死体が胴体に風穴を開けられて下半身だけ存在した。


「頭部は?」

「にゃあ。あそこ」


 クロネが指差した方向を見ると、ドラゴンの角が天井付近の照明に引っかかって、首だけ存在していた。


「死体は食べていいけど、アレはどうやって回収するかね」

「にゃあ。任せる」


 クロネが闇を伸ばして鞭状にして回収する。本来なら崩壊してもおかしくない威力だったが、あのアナウンスの通り、壊れなかったようだ。

 それにしても1人が通れるような所にドラゴンを配置し、容赦無くブレスとか撃って殺す作戦だったんだろうが、哀れだな。それと、ハクアが頭部を食べると角が生えて来た。もうちょっとだ。


「リア、そっちはどうだ?」

『ドラゴンもどきとか、いっぱいで楽しいよー! アイディリアが竜系ウマーだってぇ。エルシアレは素材ウマウマーって言ってるよ』

「戦力は余裕あるか?」

『ボスちゃん達だけかなー。鎧武者は別にレベル上げる必要ないし、いらなーい』

「じゃあ、こっちに送ってくれ。素材回収用に猫をつけてくれ」

『うん。承認!』


 巨大な魔法陣が起動し、大ボスの鎧武者2体が出現した。落ないように気を付けてだが。


「右と左に別れて進軍し、殺し回れ」

「「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォッッッッ!!!!」」


 雄叫びを上げた青と赤の鎧武者は左右に別れて移動を開始する。ちょっとここのクリエイターが可哀想だ。ドラゴンとか龍は最強種なのにな。


『あははははは、ドラゴン種や龍種ごときが本気になった世界を支配し管理し、理を制御する精霊達の女王たるリアを相手に勝てると思ってるの!! その程度でドラゴンロードなんて名乗っちゃ駄目だよ』


 繋がりっぱなしの回線から楽しそうなリアの声とドラゴンロードの悲痛の叫びが聞こえて来る。


『リアを倒したければ全属性のドラゴンロードを揃えてきなよ! それからだよ!』


 精霊樹の瞳で確認すると、7体のドラゴンが倒れ伏し、3体のドラゴンロードがボコボコに殴られ、身体に風穴を開けられて横たわっている。そして、最後の1体だろうドラゴンロードは決死の1擊だろうドラゴンブレスの巨大なエネルギーの塊たる奔流を指先一つで止められている。正確には指先の障壁にだが。


『よ~し、覚えたよ』


 リアの指ぬきグローブに埋められた宝石が光ると、リアは空いた片手で拳を握って、殴る構えをする。拳に膨大な虹色の光の粒子が集まり、光り輝く。


『お返し、いっくよー。ドラゴンブレスッッ!!』


 拳を振り抜くと、ドラゴンのブレスと同じ……いや、それ以上の大きさで放たれたそれは、奔流となってドラゴンロードの半分を消し飛ばした。


『リアの世界内で、ましてやリアの精霊樹で、リアに喧嘩売るなんて自殺志願だよ』


 ぶっちゃけ言うと、世界の半分+αを相手にしないといけないんだよな。リアの本体も回復して全快に近いし。世界を壊すようなバランスブレイカーや神でもない限り、精霊樹内でリアは最強だろう。外に出たら弱くなるけどな。精霊樹が強化オプションだし。具体的にどれだけ違うかというと、高性能演算装置1個と1000個くらい並列接続したぐらいに処理能力が変わってくるらしい。

 まあ、あっちは心配無いし、このまま攻略を進めるか。さて、ドラゴン種や龍種は強いが、こっちはいわば神だ。今まで溜め込んできた財を頂こう。恨むならこの国にダンジョンを作った事を恨みな。こっちはこの国に大して自然の力による焦土作戦を行うつもりだからな。資金稼ぎのここがあったら困るんだよ。







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