30大ボス配置
転移で帰宅した俺達は一つ思いついた事もあって、クロネにグリフォンで頂上に行って貰うようお願いした後、我が家の鍛冶師達の所に向かった。
「ラクロア、居るか?」
「ああ、お帰り」
「お帰りなさい」
ラクロアとリコリスが声だけで迎えてくれる。2人は相槌を行っている最中だった。
「悪いけど、しばらく待ってくれ」
「日本刀……刀の完成系がそちらの棚にあるので見ておいてください」
「わかった」
2人から離れて、アイディリアとリアの共に下がり、作られた武器を見る。
「綺麗だね」
「はい。この刃紋が素晴らしいです」
アイディリアとリアも刀を見ている。俺も見させて貰うが、かなりの出来だ。中には緋色と藍色の刀身を持つ日本刀……いや太刀だな。刀身も70センチあるし、全長で90センチだ。ただ、柄とかは存在していない。
「これはいいな」
「気に入ったなら貰う?」
「父様は接近戦用の装備も持った方が良いですし」
「ん~そうだな。この二つは貰うか。後は木で柄と鞘を作って完成だし、もうちょっとかかるだろうけど」
「それじゃあ、リア達で作ってくるね」
「ああ、頼む」
出て行く2人を見送って、改めて他の剣も見るが、太刀に使われた技術が使われているようで、西洋の剣に折り返し鍛錬された後がある。鍛造なだけあって、かなりいい性能だ。
「お待たせしました」
「ん? なんか2本が無くなってるな」
「それなら、リアとアイディリアが持っていった。俺の物にするって」
「そうか。まあ、アタシ達も旦那様用に作ったから別にいいんだけどよ」
「はい。それより、他にも色々と作ってみましたが、どうですか?」
「どれどれ……」
モーニングメイスやフレイル、大剣、長剣、槍、鎚、斧など様々な武器がある。これは結構いいな。
「あと、おもしれーもんも作ったぜ」
「こっちです」
「ああ」
案内された所にいくと、そこには鎧武者が存在していた。なんていうか、無茶苦茶だ。だって、そもそも3メートルもあって、動くんだから。
「ゴーレムか?」
「はい。ヒヒイロカネとミスリル、アダマンタイトで作成した複合ゴーレムです」
「こいつにこの大太刀を装備させるんだ」
「というか、大きいな」
緋色の鎧を着た姿は武田信玄みたいな感じだ。それに藍色の巨大な大太刀を持ってきた。それを2本だ。
「もう一体居ます」
「まだいるのかよ……」
「こっちは槍装備だぜ!」
藍色の鎧の同じくらいの鎧武者が緋色の槍を持っている。
「思考能力は無いから、リンに頼んで寄生できるようにしておいた。血液の代わりにシズクの所に居る水の精霊が入っているから、戦闘でも問題ねぇーぜ」
「拠点防衛に使おうかと思うんですけど、どうですか?」
「そうだな。いいかも知れないが、念のためにこいつらの配置場所はてっぺんにしよう」
「てっぺんか……」
「頂上……」
「ダメか?」
「いえ、大丈夫です」
「所詮は試作型だしな」
「一応、扱いとしてはラスボス扱いだけどな」
「でも、普通に頂上までこれる冒険者なら、倒されるのでは?」
「このままならそうだな」
話していると、リアとアイディリアが戻ってきた。
「ジャジャーン!」
「頑張りました」
2人の持ってきた刀は色や形こそ同じで、鞘と柄、鍔が取り付けられただけだ。だが、うちに秘める力は全然違う。また自重していない加護が込められている。
「俺は近接戦闘があんまり得意じゃないんだけど……これなら大丈夫そうだな」
「私の戦闘情報を学習できるようにしておきました。後はその子達が父様の身体を守ってくれます」
「それは便利だ」
自動防衛システムか。俺には助かる……待てよ、これは面白いな。
「リア……って、何してんだ?」
「この面白いのに登ってるの」
鎧武者でさっそく遊びだしたリア。色々と叩いたりして、確認している。
「リア、アイディリア。その鎧武者2体と装備に自重せず加護をくれてやってくれ」
「いいよ」
「わかりました」
「リコリスとラクロアは刀と剣を除く各種武器を持ってきて」
「はい」
「了解!」
「お兄ちゃん、ちょっと合成してくる」
「ああ」
それから、寄生精霊と水の精霊が合成され、アイディリアとリアの加護でゴーレムだったはずが、魔王と思えるような存在感を放つ、化け物が2体生まれた。
「持ってきた武器には半分程度の加護をやって」
「了解だよ」
「はい。半分ですね……これくらい?」
「ちょっと多いけど、大丈夫じゃないかな」
「ああ、それでいい」
精霊の加護が与えられた充分強力無比な装備になった。鎧武者達の本体と武装は破壊されたら自動で転移するように加護で設定してもらう。武器は常に鎧武者の元に転移されるよう設定。これで奪われる事は無い。
「リア、本体を通して社を購入してくれ」
「ん、買ったよ」
「じゃあ、それをクロネに取り込ませてここに呼んでくれ」
「うん! クロネ、社を取り込んで来て」
直ぐに影からクロネが猫耳幼女モードで現れる。
「にゃあ」
「クロネ、頂上にはついたか?」
「にゃあ。問題無い」
「なら、この鎧武者を取り込んで俺とリアを連れて転移してくれ」
「にゃあ。いく」
瞬時に闇に飲み込まれて移動する。直ぐに視界が開けて精霊樹の頂上へと俺達はやってきた。ここは空気が薄い。雲がかなり下に存在している。頂上は風の精霊核が木々に絡まってある。
「リア、枝をどけて広場にできるか?」
「任せてよ! んーーー!」
リアが力を込めると直ぐに精霊樹が成長して横に広がり、木々がどいて広い広場ができる。
「クロネ、端っこに社を出してくれ」
「にゃあ。これでいい?」
「ああ、いいぞ。リア、社を時と空で固定化してくれ」
「わかった!」
完全に社を固定化し、その社に祀るように転移装置を配置する。次に土の精霊の力で台座を作成してもらい、精霊の加護が入った武器達を広場を囲うように設置した台座にセットする。わざと剣と刀、拳、大弓の場所は台座だけ配置しておく。これでここに到達した冒険者は拳、剣、刀、大弓が無くなっているとわかるだろう。
「にゃあ。どうせなら絵も書く」
「それがいいね」
クロネとリアが台座に絵を子供っぽい絵を書いていく。弓を始め、結構適当でもある。
「リア、台座の空間を閉じて取れないようにしてくれ」
「いいよー」
「解除方法は転移装置の起動で一つのみだ。転移装置には鎧武者2体を倒さないと起動しないようにしてくれ」
「うん。どうせなら、転移装置の起動で強制転移が発動するようにしようよ。そうだね、タイム制限は10秒で。それまでに回収できなければ1階からやり直し」
「いいなそれ」
楽しそうに配置を行っていく。クロネは風の精霊核を社の上座に安置する。こちらは取ろうとするとリアとアイディリア、シズク、神聖水樹のウッドゴーレム10体が出現するように設定する。
「倒すまで撤退不可能にしておいたから、これでよしだね」
「学習するから、どんどん強くなるしな」
「あっ、そっか……なら、暇を見てリアも戦おうかな」
「俺も練習がてらに戦うか。どうせなら、こいつともリンクさせよう」
「いいよー」
「にゃあ。面白そう」
「もう一つの問題はアレだな。グリフォンとかで外からこれる事だ。リア、どうにかできないか?」
「任せてよ。風の精霊核に力を……待て、どうせなら……クロネ、グリフォンちょうだい」
「にゃあ。何する?」
「進化させる」
「大丈夫だって」
「じゃあ、呼んで」
クロネが出したグリフォンに風の精霊核の一部を切り離して、リアが両手に包んで圧倒的な程の風の加護を込める。
「君は充分生きてるし、耐えられるはずだよ」
「グルッ!!」
グリフォンも頷く。それを確認したリアは精霊核をグリフォンの額に入れる。すると、姿が代わりながら膨張し巨大な鷹のようなモンスターになり、膨大な力の奔流を空に解き放ち、雲を吹き飛ばした。
「ん~今日から君はフレースヴェルグだよ!」
「キュイィィィッ!!」
「にゃあ、かっこいい」
「リア、その名前って……」
「お兄ちゃんの部屋にあったのからとった!」
北欧神話の本か。そういえばあったな。
「じゃあ、早速で悪いけど、ここを雲を巻き上げてこの位置以外封鎖してくれ。嵐と雷も起こしてくれていい。正規の手段以外の侵入者は全て排除だ」
「キュィー!!」
俺の指示に従い、飛び立って直ぐに周りを雷雲で覆ってくれた。本人は社の上の方に休める所を作ってあげたので大丈夫だろう。神聖水樹のウッドゴーレムも1体配置して、水飲み場と果実を好きなだけ飲んだり食べたりしていいようにした。
「よし、戻るぞ」
「うん」
「にゃあ」
戻った後は鎧武者を20体ほど作成してもらい、半分程度の加護を与えてダンジョン内に見敵必殺モードで配置。例外は逃走する人型の存在のみ。それ以外は殲滅対象。もちろん、こちらのモンスターと精霊は除く。これでいろんな武器を持たせてダンジョン内をランダムに移動させて殺させる。出会ったら初撃でほぼ死ぬが、瞬時に逃げられれば助かるといった感じだ。主に未攻略エリアに叩き込むので上層の低階層では平気だ。ぶっちゃけ、CP稼ぎと戦闘経験を稼ぐ為の端末だな。
「アイディリア、それはどうしたんだ?」
「どうせなら、父様とお揃いがいいですから、太刀を貰って自分で加護を与えました」
「そうか」
アイディリアが持つ太刀の刀身には黒い桜の花びらで書かれた蝶が何匹も飛んでいる。藍色の刀身と合わせてなんとも怖い代物に仕上がっている。特にベットで二人っきりだったので少し怖かった。その日はリアに遠慮してもらってアイディリアとキリルだけだ。2人とした後は、皆と一緒に楽しむのだが、なんていうか7人同時はかなり無理があった。次の日はまったく動けなかった。