閑話03王国のその後と獣王国
罠とモンスターの情報を募集します。
出せるかわかりませんが、よろしくお願いします。
王都
王城に存在する会議室では、暗い雰囲気で会議が行われている。
「では、アレクサンドラは見つからないのだな」
「はい。姫様が着ていた衣服の破片が散らばっていた事から……」
「そうか……」
部下の報告に力なく上座の席に身を沈める国王。王妃は嘆き、寝所に篭っている。王子も元気がない。
「こんな事ならわがままを許すべきでは無かったな……」
「はい」
「現れたモンスター共は?」
「全て討伐されましたが、討伐に参加した冒険者の中には人を連れてた人型の何かを取り逃がしたという報告も来ていますが、兵や住民達の証言とは違っています」
「そうか……街はどうなっている」
「それが……かなりまずい状況です。既に第2区画まで浸水しています」
「くっ、この忌々しい雨めっ!!」
王都はあの事件以来、雨が降り止まず、一部は水没してしまっている。その雨にしても、次第に勢いをましている。それに伴い、王都周辺以外では雨が降っていない。
「何者かの力が関与しているとしか思えませんな……」
「魔法で吹き飛ばせるか?」
「それなりの人数と触媒が有れば可能ですな」
「では、そのように手配いたします」
「ああ。他に報告はあるか?」
「数日前に精霊樹にダンジョンが発生したとの事です」
「なら、軍を送らねばならぬな。確か、事件で戦力がかなり減っていただろう」
「いえ、精霊樹の森の所有者が拒否したようです」
「待て。あそこは領主の直轄地だっただろう」
「それが、大量の水精霊の霊薬で販売したそうです。何でもエルフ達が精霊樹を元に治療する為だとか」
「馬鹿者め。視察を送っておけ」
彼らにとってはダンジョンも儲け場所なのだ。だが、その得る為に税金を取る事は出来ない。全て自己責任だ。それゆえに厳しい検査を行う事になる。これが領主なら色々と税金を出させるか、免除を理由に支援金を回収できる。なにより国内が潤い、活性化するのだ。
「はっ。妨害はなさいますか?」
「いや、回復してくれるならまた精霊核が取れるだろう。エルフ共が信仰している精霊が何者かも知れんが、我々には都合のいい存在だ」
「そうですな。では国外の事ですか、エルフ達の国に動きがあるようです」
「具体的には?」
「こちらに戦争を仕掛ける準備を行っているようです」
「ふん。ならば、乗ってやれ。国境に戦力を集めろ。個体で強くとも、数は少ない。それよりも、ダンジョンはどうだ?」
「現在、我が国の周辺には4つのダンジョンが確認されております。先ず、先程議題にあがった精霊樹のダンジョン。続いて、国内にある竜の巣についてですが、1、2階層ならば普通に攻略できます。出現するのはリザードが基本でたまに走竜の子竜ぐらいですから」
プレイヤーが作り出した恐竜を始めとしたドラゴン、龍などの為に作り出したダンジョンだ。
「それいこうはどうだ?」
「罠や走竜が増えていますし、毒を持つ蛇も多数存在します」
「ドラゴンが現れてはシャレにならんが、素材は美味いな」
「はい。兵や冒険者達の実力もあがりますから、有効です。ギルドの方から優先して素材も貰えますからね」
「そっちは現状維持で構わんな。攻略しつつ素材の確保だ。精霊核の御蔭でドラゴンどもでもなんとかなるからな」
「はい。では、隣国にある獣王国ですが、そちらは魔獣の森に強力なモンスターが発生しているとの事です」
「魔獣の森は我が国も少し隣接しているな」
「ただ、ダンジョンの可能性はありますが、位置までは確認できていないそうです。獣王国も国内にダンジョンを幾つか抱えていますね。大概が魔獣関係ですが」
「我が国との国境をまたいで一つあったな」
「不死者の魔宮ですね。我が国と獣王国の主戦場でしたから、その者達が不死者となり、かなり危険な場所となっているそうですが……今のところは問題無いかと」
現在は休戦し、お互いに人を出し、結婚させて関係改善を図っているところだ。長年に渡る争いで両国は共に疲弊し、争いどころではなくなっていた。特に数年前から魔獣を始め、モンスターが大量に増えてきているのだから、それどころではなかった。
「他は?」
「残念ながら、わかりませんな」
「そうか。では、この鬱陶しい雨を排除した後、エルフ共を蹴散らして捕らえるとしようか。捕らえたエルフどもは奴隷とし、売り払えばいい。獣王国とはしばらく戦えんが、エルフ共なら話は別だ。獣王国と違い、人数は我らの方が優位だからな」
「そうですな。奴らは生む量も多ければ成長も早い。我々人間とはまさに別です」
「戦うにしても、奴らは後回しだ。ああ、そうか。エルフを捕らえてハーフエルフを増やすのも良さそうだ。戦力になるからな」
「ええ。ドワーフ達は何時もの通り、鉱石を渡しておけば問題ありませんからな」
「よし、これぐらいでいいだろう。我は戻る」
「はっ。後はお任せ下さい」
王は妻の元に戻り、配下の宰相達は仕事を与え、これからの準備を行う。彼らはわからなかった。この雨が精霊達の反撃の一手で、戦力差を覆す仕掛けでもある事を。ただ、水の精霊は笑うのみ。
獣王国
城壁の上から獣人達の中で最強の王は周りを見ながら警戒する。獣王の彼はライオンの頭に鍛え抜かれた肉体。髪の毛と同じ金色の鎧を身に纏っている。
「国境に存在する亡者共も恐ろしいが、魔獣の森の魔獣共も様子がおかしいな」
「はっ。上空から偵察したところ、魔獣達の一部は明らかに何者かの指示に従っているようです。それと、偵察に出した一部の者が帰りません」
白い翼や黒い翼を持つ者達が獣王の隣に降り立ち、頭を垂れながら報告する。
「喰われたか。さて、どちらを攻めるべきか……」
「我が国内は多数のダンジョンを抱えています。危険なのは街や村々に隣接して居る場所でございます」
「そうだな。だが、吸血鬼を復活させようとしていたヒューマンの者達が居たはずだが……そいつらはどうした」
「魔獣の森に消えたままでございます」
「魔獣共に食われていればいいが……いや、魔獣達が統率されているという事は生き残って配下を増やしている事も考えられるな」
「その通りでございますが、現在、我々の脅威度から考えるに、やはり村や街の近郊に出現したダンジョンの調査を優先すべきでございます」
「食料の問題もあるか……よし、わしも出る。国境に回した兵以外はダンジョンの攻略だ!」
「御意。最低限の守備を残し、全軍で攻略にあたりましょう。それと、レオンハルト殿下はどうなさいますか?」
「ふん。掟通りレオンハルトも連れていく。そうだな。ドワーフ達に装備を作らせたはずだ。それで構わん。食料確保も兼ねての狩りだ。もろもろの準備はしておけ」
「御意」
獣王国は強者こそが正義。前線に出て戦わない王など必要無い。例え王が死んでも、その次に強い者が王となる。ただ、暴力的な強さだけが求められる訳ではない。各分野毎に強者が選出され、それらの者達をちゃんと扱えるかの試練を選出された者達が出し、獣王候補に従うかを調べる。その試験に合格し、初めて獣王として認められる。獣王が不適切だと判断されれば、選出された者達が獣王をその座から下ろすこともできる。ただ、それなりの理由が居るが。そして、殿下は獣王候補であり、英才教育を受けている存在の事だ。現在はレオンハルトが次期獣王としてほぼ内定している。他の候補は補欠だ。そして、獣王と殿下は戦場に出る時は一緒に出る。ただし、それぞれが離れて、獣王が死んだ時、即座に代わりになるようにとの事だ。良くも悪くも戦い、生きる事しか考えていない連中である。
「不死者の魔宮と魔獣の森。どちらも嫌な気配がするが……いや、もう一つあるか……苦しい戦いになりそうだ」
獣王は遥か遠くに聳え立つ巨大な樹木を見ながら呟く。そして、彼の視界には一瞬だけ雲が晴れ、光り輝く物が精霊樹の頂上に見えていた。それはリアが配置した風の精霊核に加護と力を与えた結果、巨大な竜巻が発生した為に見えた光景だった。そして、これを見たダンジョンクリエイターの少女はこう叫んだ。
「竜の巣だ……あの木、凄い」
「ぐるるる?」
「なんでもないよ。いつか行こうね」
「がう」
日本の一つの文化を気に入っている少女のダンジョンクリエイターは強化された馬鹿げた身体能力で、昼間だというのに遥か遠くの事が見えていた。それも、眼に力を集中させて青い炎を灯しているせいだろう。