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27精霊樹の大弓、試し射ち

 





 昨日は時間も遅くなっていたのでそのまま眠りに付いた。リアの体温で気持ちよく目覚めたら、今日の予定を確認し、朝食を食べる。今日は皆が居たので賑やかだった。

 朝食中にラクロアとリコリスに日本刀の作成方法が書かれた指南書を渡し、リアと共にDCルームへとやって来た。

 ベッドでは可愛らしい小さなリアが眠っている。


「さて、この寝ている本体は大丈夫か? 心配する声も出ている」

「大丈夫だよ。本体に1割、分体に9割に分割してる。こっちのリアが死んでも、本体のリアが復活するだけだし、本体に力も供給してるから全然平気」

「そうか。なら、いっそ回復を早める方法はないのか?」

「ん~あるね」

「あるのか……なら、それをしよう」

「じゃあ、ちょっと待ってね」


 リアがパソコンを操作して棺を購入した。まさかと思ったが、その中に本体のリアを入れて、地底湖の方へと持っていく。


「シズク~」

「なんですの?」


 リアの声に直ぐに地底湖の湖面にシズクが出現する。リアは棺をそのままシズクに押し付けた。


「地底湖に沈めて回復させておいて」

「……分かりましたの。確かにダンジョンコアですから、安全かつ回復できる場所が重要ですの」


 本来、ダンジョンコア自体、動き回る事が間違っているのだから、こっちの方があっているのかも知れない。地底湖の底にも祭壇が設けられ、そこに棺が安置される。


「しかし、操作は大丈夫なのか?」

「平気だよ。だって、こっちのリアから本体へのリンクを通してダンジョンコアとしての機能は使えるから。ん~外部端末?」

「なるほど」


 簡単にいうと、ルーターを使ってるパソコンに無線LANでアクセスしてネットを使っているノートパソコンみたいな感じか。


「じゃあ、こっちは問題無いな」

「うん♪」

「試し撃ちに出るか」

「そうだね。アイディリアも連れてこうよ」

「ああ」


 アイディリアを呼んで、蝶の羽を消させた後、一緒に転移して地上へと出る。

 地上は急ピッチで建設が行われていて、既に村といえるくらいには立派だ。街には住民の数が足りてないしな。


「結構すごいね」

「ああ。ドワーフ達の技術力が凄まじいな」

「エルシアレのお店も準備されていますね」

「買取はエルシアレに全部任せたしな」


 話しながら出口の方へと移動し、エルシアレから馬車を借りる。ちょっとお使いも頼まれたけど、まあいい。取りあえず馬車を使い、石畳で綺麗に整理された桜の並木道を通り、門へと到着する。門は自動で開き、橋が下ろされる。


「なんというか、無駄に門はハイテクだな、おい」

「面白いね!」

「楽でいいです」


 橋を渡り、草原をしばらく進む。ある程度離れたら、馬車を停止して、降りる。


「さて、実験だ」

「わくわく」

「楽しみです」


 精霊樹の大弓を取り出し、特別性の精霊剣矢を取り出して番える。狙いは無く、適当だ。弦を引きしぼる。すると、茶色の光が放たれ、剣が形成される。大弓全体からも神々しい光が溢れる。それを全力で引いた状態から解き放つ。

 放たれた矢は衝撃波を発生させ、音を置き去りにして1キロくらい離れた場所に突き刺さると、その力を解放して直径100メートルくらいに巨大な石の杭を無数に地面から突き立て、ネズミ色の霧を発生させる。その霧は周囲に拡散し、周りを石化させた。


「おい、どんな破壊力だよ……」

「まだ続きがあるよー?」

「ですね」


 言われて震源地を見ると、矢を中心に黒い点が現れる。すると、景色が歪んでみるみる内に半径100メートルに存在した物が吸い込まれて消滅した。後には範囲外だったが、余波で石化した草が少しだけあるだけだ。


「後処理も完璧です」

「証拠隠滅も大丈夫!」

「矢の回収とかは?」

「嫌ですよ、父様」

「はは、だよな……」

「使い捨てですよ」


 高価な魔剣を使い捨てか……待てよ、俺に矢を渡すって事はアイディリアもこの剣を撃てるんだよな……強いな。


「どちらにしろ、威力が高すぎだ!」

「えぇー人間共を殺しまくる為に作ったのにー」

「残念です」

「残念じゃないだろう。精霊樹の内部で撃ったらどうなるか……」

「あ、それは大丈夫です」

「この精霊樹から生まれた精霊の力が精霊樹を傷つける事は無いよ? むしろ、残った力の残滓を吸収して元気になるぐらいだし」

「通路に居た精霊以外の存在は保証できませんけどね」


 精霊限定の敵味方識別システムか。えげつないな。


「取りあえず、普通の矢でも試すか」


 普通の矢を番え、弦を引く。すると、同じように神秘的に光ると、光が矢に移る。辺りを見渡して、適当な獲物を探す。すると、だいたい1.5キロ先に丘のような物があったので、それを目標にして矢を放つ。矢は高速で飛んでいき、周りを吹き飛ばしながら目標物に着弾すると同時に大穴を空けて貫通し、そのまま向こう側に消えていった。空いた穴からは、盛大に血液のような物が吹き出す。


「グゥォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォッ!!!!!!!!!!!!!」


 そして、丘が吠えた。丘は動きだし、亀のような姿になった。その周りに無数の防壁が出現する。


「フォートレスタートルだ!」

「名前からして硬そうだな」

「あの防壁も全部、ダマスカスですね」

「そりゃまた硬いな」


 その防壁がどんどん作られてこちらに迫ってくる。フォートレス……要塞ね。防御の硬さと要塞を作るような戦闘方法から付けられたか?


「まあ、ぶち壊せばいいか」

「いけいけーお兄ちゃんなら大丈夫!」

「父様なら楽勝です」


 武器の力が悲しいが、先ずは通常矢で先程と同じようにするが、今度は更に力を貯める。1分、そこで待ってから矢を放つと、今度は飛来する途中で無数に分裂して横から降りつける雨のように襲いかかる。防壁はどんどん貫通され、穴だらけになった。そして、防壁に空いた大穴から見えるのは無数の矢が突き刺さったフォートレスタートルの姿だ。ただ、矢は光となって全て消滅した。


「討伐完了ですね」

「おめでとう、お兄ちゃん!」

「ああ、うん。とりあえず、力を落とそうか」

「えぇ~~」

「こんなの、危なすぎて気軽に使えねえよ!!」

「ちぇー」

「残念です」


 本当に精霊以外には優しく無い弓のようだ。


「見てみて~」

「ん?」


 最初に撃った土属性の矢の方を見ると、何もなくむき出しになっていた場所に急激に草が生える。その草は更に成長して大きくなっていく。周りにあるサイズの数倍はでかい。


「精霊の加護です。自然にも優しいですよ」

「破壊の後に再生ありだね」

「そうだな」


 自然を司る精霊は怒らせたらマジで怖い。それがよくわかる。自然は大切にしないとな。


「まあ、どっちにしろこれは弓じゃなくてミサイルとか機関銃だな。今度は軽く撃つか」


 弦を引ききらずに軽く撃つが、威力と射程はある程度落ちた。だが、それでも強力な武器には代わりがない。


「封印するか。ちゃんと引き絞れないのはやりずらい」

「んーじゃあ、封印を施すねー」

「頼む」


 精霊樹の大弓には8つの封印が施された。属性封印だ。これで分裂や高速射撃などは使えるが、複合効果による破壊効果は封印された。解除方法は非常に簡単にで、解除すると思えばいいだけだ。


「矢の方はどうしますか?」

「回収できるように頼みたいな。残るようになると誰かに取られたら、そのまま剣として使われそうだし」

「それもそうですね。では、回収なので転送と修復を使いましょうか」


 精霊剣矢も空と時の属性で俺の意思で矢筒に戻るようにされた。その上、矢筒に戻ると修復されるように設定された。力自体は精霊樹の大弓から封印されて余っている膨大な出力を貰う事で問題無い。ちゃんと属性を持った精霊剣矢が用意されたのでなんの心配も無い。


「これでいいか」

「父様、素材回収してきますね」

「ああ。売れそうなのは残してくれよ」

「はい」

「リアもやるー」


 アイディリアをリアが追っていったので、俺は大弓を背中に戻して、馬車に戻る。調教された馬なので素直に従ってくれた。だから、馬車を走らせて先程の所に戻ったのだが、ダマスカス製防壁は全て回収され、フォートレスタートルもリアの指示で別けられた。


「よく知ってたな」

「エルシアレに聞いたからね」

「後、父様。こんなのがありました」

「ん?」


 渡されたのは光り輝くカード。カードにはフォートレスタートルの名前とスキルが書かれている。スキルは更に詳しく、レベル1が防壁作成・土。レベル2が防壁作成・石、レベル3が防壁作成・金属、レベル4が防壁作成・上位金属、レベル5が防壁作成・特殊金属と書かれている。


「リア、わかるか?」

「ん~エルシアレが言うには、モンスターからごくまれに手に入るマテリアルカードだって。モンスターの持ってるスキルが手に入るらしいよ」

「スキルレベルは?」

「スキルレベルは同じスキルのカードを重ねて融合させる事で強化できるんだって。武器や防具に使うらしいよ。後、一度使うと外せないんだって」

「ちょっと待て。あれ程殺した白い悪魔……ホワイトアント達のはどうした?」

「どうなんだろ?」

「アイディリア?」


 俺達はアイディリアを見ると、そっぽを向いていた。


「食べました」

「え?」

「だから、食べました」

「纏めて?」

「纏めて。多分ですけど、増殖ってスキルじゃないですか?」

「それだって」

「それならレベル5を超えて進化した無限増殖というのを覚えています。それで剣とか糸を増殖させてますから」

「まあ、そのまま解体もせずに渡していたから気づかなかったな。まあ、アイディリアの力が増えたんだから構わないか」

「そうだね」


 取りあえず、この問題は終わらせて次に向かう。


「フォートレスタートルでも狩りまくるか?」

「要望は来ているけど、数が少ないよ?」

「駄目だな。エルシアレから頼まれたお使いもあるし、このまま街まで行くか」

「人間共、殺していい?」

「まだ駄目だ」

「むぅ~わかった。お兄ちゃんがそういうなら、嫌だけど我慢する。だから、甘えさせて!」


 リアはその大半の憎悪を俺の為に押さえてくれるようだ。だから、俺もたっぷりリアを甘えさせる。


「母様だけずるいです。私も……」

「ああ、おいで」


 馬車の御者席に座り、隣にアイディリアを座らせ、膝の上にリアを座らせる。そして、そのまま街を目指して進んでいく。転移座標を覚える為にも、2人と一緒にピクニック気分で移動するのは充分に有効だ。ましてや、精霊魔法で馬と馬車の速度をあげているから、時間的ロスもあまりない。






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