25リアとアイディリアの新ボディ
今日は2話目です
ダンジョンに潜っていた奴らを回収し、地上に送り届け、リコリスに任せた後、急いで最下層に転移した。最下層では知らない銀髪の女性がリアを抱きしめていた。
「リア、その人は?」
「……昔の、子供……」
「エルシアレと申しますわ。こちらで店をさせて頂きますので以後、お見知りおきを」
「ああ、わかった。それより、緊急事態だ。援軍が欲しい」
俺は見ていた赤いキラーマンティスの事をリアに話して追加の援軍を送る為に準備を行おうとした。
「お父様、その必要は有りませんの。取りあえず、追加で神聖水樹のウッドゴーレムと同胞を30体ほど送っておきましたの」
背後の地底湖から水柱が出来上がり、直ぐその中からシズクが現れた。どうやら、報告を聞いて手をうってくれたようだ。これであちらは少なくとも最初の増援を含めればウッドゴーレム2体、水の精霊50体、キリルの配下10体が警護する事になる。
「それなら大丈夫か」
「……キリル達、レミ、ニンス……1人、欲しいって……」
「ああ、進化したみたいだしな。シズク、ラクロアに言って1人送ってもらってくれ。んで、できれば防衛拠点の作成も頼んでおいてくれ」
「はいですの」
水中に再び消えたシズクを見送り、改めて周りを見ると人型をした青く光る不気味なオレンジ色の存在がある。周りには明らかな人魂とかあるし、怨霊まで見える。
「リア、それは?」
「……リア、の、ボディ……ダンジョン、コア……動かせ、ない……」
「だから、身体を作ったと……」
「……そ、う……」
話していると、直ぐにクロネが転移してきた。その手には裸にされた金髪の美少女が捕まえられている。
「離せ、無礼者っ!!」
「にゃあ。五月蝿い」
「あぎゃっ!? ぐ、ぐるし……ごふっ」
首を絞められて、気を失ったようだ。またお土産か?
「ママ、パパ、ただいま」
「……おかえ、り……」
「お帰り」
「ママ、頼まれてたの」
「ん」
「パパにはこっち」
少女をリアに渡し、俺にグリフォンとペガサス、ユニコーンを差し出して来た。
「ペガサスはリアラの所でいいだろう。ユニコーンはこの地底湖で生活させればいいか。泉ってイメージだし、襲われたら困るしな。グリフォンは……クロネが連れていろ」
グリフォンはクロネの後から動かない。主はクロネだと言いたいのだろう。
「にゃあ。困った子。でも、飛べないから、助かる」
クロネが撫でてると嬉しそうにしている。ユニコーンはそのまま地底湖に向かって、水の精霊達と戯れだした。
俺達がこのような事をしている間に、エルシアレの協力の元、リアが合成魔法陣を準備している。
「生贄はこの小娘ですね。容姿もスタイルも問題無いですし、魂は定着の動力に変換して、身体は融合させて人型形態として完全な物にしましょう。お母様、そちらのお方とお楽しみになられるなら、人間ベースがいいですわね」
「……ん……それでいく……」
「では、殿方が喜ばれる身体に内部を改造しましょう。外は融合の都合上無理ですが、ちゃんと子供も生めるようにしましょう。ああ、どうせなら精霊達も融合させましょう」
「……ん、それは……」
「生まれたばかりで自我の無い子なら大丈夫ですわ。ただ、問題はシズクという子ですね」
「こちらなら問題有りませんの」
背後から水の精霊が1体、現れた。どうやら、これを融合するつもりだ。
「……いい……?」
「まあ、本人達がいいというならいいんじゃないか?」
「……わかっ、た……聞い、て……見、る……」
直ぐに精霊達が集まった。集まったのは若い奴ではなく、傷ついて回復中の奴らだった。一度死にかけまで負傷した彼らはリアの力になるならと志願している。どうしても、直ぐに戦える連中から回復する為、回復に時間がかかり、戦闘に復帰できるのは当分先だからだそうだ。精霊達は確かに強いが、水精霊の霊薬でも人間と違って密度も違う上に、持ち前の属性が邪魔してちゃんと回復出来ないのだ。
「水、土、光、風か……火と闇、空と時が無いのね。ちょっと、生に飽きた者達や狂った者達を呼び出しますわ」
「……よろ、しく……」
そして、少しして上級精霊達が召喚された。彼らは狂っていたり、虚ろだったりしたが、要件を話すと直ぐに了承した。特に作られているのが禁忌の代物だと知ったとき、楽しそうに笑っていた。
「では、楽しい儀式の始まりです」
「……融合……生贄……開始……」
改造された魔法陣が多数の精霊達と人型の何か。そして、少女を飲み込んで虹色に輝き、繭となった。
「ところでさ、どんなのができるんだ?」
「この規模ですと、精霊の主だったお母様が元ですから精霊王や精霊女王ですね。まあ、その雛形ですので最初からそれ程強くは有りませんが、基礎能力はかなり強いです」
「そっか。じゃあ、これからは一緒に行動できるのか」
リアは基本的にここから出られないからな。
「……そう……それ、じゃあ、ちょっ、と……いって、くる……」
「ああ」
リアの身体が倒れてくるので、抱きとめる。リアの身体から何か淡い光を放つ物が繭の中に入る。そして、少しすると繭が罅割れて、内側から爆発する。
「あは、あはははははは」
笑い声が聞こえ、煙が晴れた後、そこに居たのは身長140から150cmくらいの長い金髪ツインテール少女で、瞳は赤と青のオッドアイ。髪の毛の下の方は虹色になっている。胸は少しあり、掌に収まるくらいの少女ボディだ。だが、問題は何より、その身に宿る膨大な力。周りの空間を捻じ曲げ、デフォルメされたゴースト達を無数に呼び出す。三角帽子を被ったジャックランタンも出現している。
「おお、凄いですの」
「にゃあ。凄い」
「そうですわね」
「しゃー」
「お前達、遊びに行くよ!」
元気いっぱいになったリア。でも、なんか微妙に性格が……いや、かなり変わってる。
「性格が変わってるけど、どうなってんだ?」
「元となった少女の人格が影響して、昔の好奇心旺盛だった頃のお母様に戻っただけですわ。だいたい、体調不良も非道い状態でしょうし」
確かに改めて考えると、末期ガンの状態で痩せ我慢しているような感じだな。
「ほら、リクトお兄ちゃんもリアと遊びにいこ!」
「ああ、遊びに行くのはいいけど、どこに行くんだ? というか、先ずは服だな」
「あっ、そっか。じゃあ、蛆虫共を殺しに行くのは後でいいや。エルシアレ、リアの本体を持ってあそこの部屋に運んで」
「はい、畏まりましたわ」
「お兄ちゃんはリアを抱っこして」
「ああ、良いぞ」
新しくなったリアの身体を抱き上げると、甘い良い匂いがしてくる。パンプキンパイの様な匂いだ。元になった少女も美少女な上、リアの完成された美しさも入って、元気な女神っぽい感じになっていて、魅力的だ。そんな子が俺に頬っぺたを擦りつけてくる。だから、お望み通りお姫様抱っこしてDCルームへと運んだ。
「さて、買い物だが……どうせなら作ってもらった方がいいか。ちゃんと防具にして」
「確かにそっちの方が良いよね。動きやすくて、こんな感じのがいいかな」
リアが指定したのはゴスロリ系の奴だ。まあ、ラクロアも忙しいから時間が……いいや、取りあえず買って改造すればいいか。
「着るものも無いし、買うか」
「じゃあ、これでいいや」
赤いブラウスに紫のコルセット、黒いミニスカートに紫のフリルがあしらわれた物。背中には大きな紫色のリボン。首元には黒をメインにオレンジ色があしらわれたリボン。髪の毛をツインテールにしている物とはオレンジが緑になっただけで、他は一緒だ。ガーターベルトで支えられたニーソックスはオレンジ色と紫色のストライプ。パニエもある。
「指ぬき手袋も欲しい」
「じゃあ、これでいいか」
縁がオレンジ色になった黒い指ぬき手袋を買って渡してやる。全てを着替えたリアの手袋には大きな虹色の宝玉が埋め込まれている。さっきまで無かったが、出現したようだ。
「それと、狩りに出るのは戦闘訓練が終わった後だな。武器も調整しないといけないし」
「んー、お兄ちゃんがそういうならわかった。でも、これからはリアも一緒に行くからね」
「ああ」
エルシアレにリア本体を任せて、リアを連れて外に出ると、キリルが戻っていた。その手は人間の物だ。
「お帰りー」
「お帰りキリル、アイディリア」
「ただいまです」
キリルは直ぐにリアだと気づいたようで、何時もの通りに接してきた。
「アイディリアは?」
「ここですね」
背中を向けると蛹がくっついていた。しかし、目覚める気配が無い。
「リアに任せて」
リアが近づいてアイディリアに触れる。その後、膨大な力がアイディリアに流し込まれていく。すると、蛹に罅が入って、背中が割れた。そこから青黒い綺麗な蝶の羽が出現し、長い黒髪の美少女が質量を無視して出てくる。虹色に輝くふた振りの剣と共に。
「剣の精霊とはまた、珍しい物がでたじゃねえか」
「そうですね」
後ろを振り向くと、ラクロアとリコリスが居た。彼女達に聞くと、剣の精霊は剣を無数に作り出して戦う精霊で、作られる剣の属性は生まれ持った剣の属性に由来するらしい。だが、アイディリアの場合は虹色で、全属性らしい。リアの腕が入っているのと、さっき力を流し込んだ事が原因だろう。どちらにしろ、属性は問題無いので後は材質と質の良い剣を与えれば戦力は強化されるとの事だ。それと、アイディリアの力で魔剣を作って貰えるらしい。その魔剣を鍛冶で鍛え直し、他の武器とかに転用も可能との事で、ダンジョンの宝箱や罠にすれば出費を抑えられるし、強い物はこちらの戦力強化に使える。どちらにしろ、ドワーフ達にとっては土の精霊と同じく信仰対象だそうだ。