22リアちゃんの1日
リア
お兄ちゃん達が出て行った。だから、リアはリアのできる事をするの。だから、道具をソリに乗せて畑に移動するの。
「んしょ、んしょ……」
リアの役目は新しい配下を生み出す事と、体調管理。今も足は大丈夫だけど、お腹から上が凄く痛いの。でも、頑張る。
畑さんに付いたので、少し休憩。休憩が終わったら、大きな大きなカボチャさんと勝負なの。でも、その前にバケツさんにお水さんを汲んでおくの。
「……開、始……」
ギザギザの刃が付いた大きな剣を持ったゴーレムさんにお願いして、大きなカボチャさんを真っ二つにしてもらうの。
「ごー」
「……あり、がと……」
終わったら、カボチャさんの中身をシャベルで掻き出して、持ってきてもらった大きな鍋さんに入れていくの。刳り貫いて全部入れ終わったら、お鍋さんにたっぷりの水の精霊のお水さんを入れてかき混ぜるの。台に乗って、神聖水樹の枝でぐるぐるとかき混ぜながら火をつけてぐつぐつ煮込んでいくの。
「……足り、ない……もっと……いる……」
「ごー」
カボチャさんを沢山追加して、ドロドロにしたらそれを別の容器に流し込んで冷やしておくの。取りあえずはこれでいいの。
「……次……」
次は神聖水樹さんと精霊樹の枝を用意するの。痛いけど、とっても痛いけど我慢するの。精霊樹の枝を細く切って、叩き(たたき)鑿と玄翁とかいう道具で、削って無数のパーツにしていくの。細かい作業で何度も失敗しながら形を整え、シズクちゃんが調べたデータを元に形成するの。この作業は数ヶ月前からやってるので、もうちょっとなの。
「……骨、できた……次……」
数時間で、木で出来たスケルトンが完成したの。そこにカボチャさんを塗りつけて、鋼糸を束ねて捻って取り付けていくの。神聖水樹を食道と股間に使うの。
「……心臓……とって……くる……」
地底湖の中に飛び込んで、進化のクリスタルと魔晶石をとってくるの。他からも魔力の結晶である魔晶石を確保して、合成魔法陣の上に並べるの。そこに回収出来た精霊核と心臓の形に作ったカボチャさんも置いて一気に合成するの。
「……完成……」
カボチャさんで出来た心臓さんや臓器さんを取り付けて、身体の中にも精霊核をいっぱい取り付けて、筋肉繊維も作って完全な人型にしたの。
「……後は……空いてる、子……クロネ」
「にゃあ。ここに」
リアの後ろに影から現れたクロネちゃんにお願いするの。
「……生贄、持って、きて……魔力、多いの……特殊、能力……歓迎……」
「女?」
「……女……今日中……」
「にゃあ」
クロネちゃんが影に溶けて消えたので、安心。生贄の儀式を用意しながら準備するの。それが出来たら更に改造するの。
「……そう、いえば……あれ、もらうの……」
リアは念話を繋げて、外に居る古い娘に声をかけるの。商売しているから、持ってるはず。
『珍しい所から連絡が来ましたわね。大丈夫ですか、お母様』
「ん。ダンジョン化……した……なんとか、平気」
『やっちゃったんだ……まあ、それしか生き残る方法は無いけど。それで、何を御所望かな?』
「死霊結晶、闇と光、時、空間、毒の魔晶石……あと……」
『ちょっと待てー! 高い! どれも高いから!』
「……持って……る……はず……」
『いや、持ってますけど、こっちも商売人だから……』
「……精霊樹の杖……あげた……霊薬……あげた……」
『いや、貰ったけど、貰いましたけども!』
「……料、金……貰って、ない……」
『ちくしょう、タダより高い物はないって事か……』
「……すぐ……用意……する、なら……店、出させ、あげる……」
『詳しく聞きましょうか』
リアは闇の上級精霊エルシアレにお父様が作っている街の計画を説明してあげるの。
『お母様、直ぐに参ります!』
「……待って、る……」
エルシアレはリアが産んだ最初の子供の1人で、生きている中では多分、一番強いと思うの。人間共に襲われた時は呼べなかった。エルシアレは契約したマスターが残した商会を大事にしているし、あの時は子供に頼るのはいけないと思って、そのままリアだけで頑張ったの。でも、それが間違いだと気づかされたの。だから、今度は恥も何もかも飲み込んで、倒すの。少なくとも、巻き込んでも大丈夫だと思えるくらいには力が回復したの。
「お母様、お久しぶりですわ」
「……ん……」
虚空からにじみ出るようにして現れたエルシアレは黒いドレスが皺になるのも気にせずにリアに抱きついてきたの。でも、銀の髪、鬱陶しいの。
「小さくなったお母様も、とっても可愛いですわね」
「力、なくなっ、た……成長して……元に戻す……」
「では、お手伝いいたしましょう。商売関係ならまかしてください。そうですね、取りあえずご要望の品です」
「ん。質、良い……」
「4504年ものの怨霊がたっぷりたまった死霊結晶ですからね」
「……あとは、生贄……」
「しかし、禁忌とされている方法で作っていますが、コレはなんですの?」
「……リア専用……戦略級……兵器……予定……」
「え、まさか……出るつもりですか?」
「そ、う……出るの……ふふふ」
これはリアの外専用ボディ。全ての精霊の力を扱えるようにした決戦兵器なの。禁忌だろうが、なんだろうが、もうリアにとってはどうでもいいの。精霊を怒らせるとどうなるか、人間共に教えてやるの。たっぷり、じっくりと。