13皆でホワイトアント狩り
4階層から5階層へと登り、攻め込んで行く。パーティー内容はリコリス(前衛:アタッカー)、クロネ(前衛:スカウト)、シズク(後衛:ヒーラー)、俺とリン(後衛:アタッカー)という役割だ。リンには俺の低いステータスを補助してもらう為に俺の内部に居てもらう。ちなみにクロネの中にも寄生精霊が居る。シズク達水の精霊には入れないので、そちらはいない。
「にゃあ」
通路を進んでいると、クロネが鳴いた後、器用に立ち上がって爪を両手で6本立てる。6体のようだ。隣に居て、俺の手を握っているリコリスは分かっていない。だって、暗いしね。リコリスにとっては肝試しにに来ている感じだろう。
「6体か……通路の長さは横8メートルで直進か。2体が同時に来るには充分な広さだ」
「取りあえず。蹴散らすか」
「近づいて来たら光を出してあげて」
「にゃあ」
俺は通路から躍り出て矢を引き絞って放つ。放たれた矢は勢いよく飛んでいき、突き刺さる。ほぼ即死毒なので普通に死ぬ。次を射抜く。残り4体。相手はこちらに気づいて走ってくる。もう一体殺して、俺は下がった。
「にゃにゃ、にゃぁぁぁぁぁんっ!」
クロネが目からまばゆい光線を放つと、脳内でリンがにゃんこ、フラーシュッッ!!と叫んでいた。急激な光によって、白い悪魔達はのたうちまわっている。
「リコリス、もう目を開けていいぞ」
「は、はい」
目をシズクに閉じるように言われていたリコリスは目を開けてシロアリを直視する。そして、悲鳴をあげた。
「いやぁあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
そして、直ぐに意識が堕ちて崩れ落ちるので抱き上げる。
「あらあらまあまあですの」
「……ん」
そして、直ぐに立ち上がったリコリスはさっきと違って、人間味が一切感じない状態になり、純粋に怒りだけが湧き上がっているようだ。
「……」
リコリスの全身が赤く光り、掌から巨大な炎弾が放たれる。炎弾は通路を一切燃やさずに対象である白い悪魔達を飲み込んで燃やし尽くす。燃やし尽くした後、炎は消えた。
「えっと、これは?」
「リコリスの中に居る寄生精霊が火の精霊核と融合して架け橋と同時に操ってますの。だから、リコリスが気を失ったから出て来ただけですの」
「そうか。しかし、リコリスは虫が苦手か」
「というより、あんなわらわらいて気持ち悪いのを好きという奴の気がしれませんの」
「それもそうだ。リコリスの感情は操作できないんだよな?」
「無理ですの。完全に取り込んでないので、その子達では無理ですの」
「そうか」
「にゃあ?」
「シズクならできるか?」
「無理なのはその子達であって、私達は可能ですの。それでは、お邪魔しますの」
シズクはリコリスの体内へと入っていく。そして、無理矢理リコリスを起こした。
「あ、れ?」
「これから、リコリスの身体をシズクが操りますの」
「え?」
「そこでそのまま見学しているといいですの。クロネ、次に案内するですの。多い所を希望ですの」
「にゃあ」
「ひっ!? いや、嫌ですっ! や、やめ……いやぁぁぁぁっ!!」
リコリスはクロネの先導に従って、敵の多い広い所までやって来た。そこに居る個体数を確認したところ、62体も居た。
「や、やだ、こないで……」
シズクはリコリスの言葉を無視して、バトルアックス片手に突っ込んでいった。
「いやぁぁぁぁぁっ!!」
「ふはははは、無双ですの! お前も遊ぶですの! シズクは自分を抑えるので、暴れるですの!」
バトルアックスを片手で振り回し、斬り刻みながら火の精霊核を起こす。起きた精霊核はバトルアックスを持っていない方の手に炎を集めて、振り回す毎に火を巻き散らかして殺していく。
「凄いな」
「にゃーお」
それは演武のような綺麗な戦いだ。計算された軌道を最少の動きで通過して、効率よく殲滅していく。俺達の援護を必要としていない。ただ、リコリスが泣き叫んでいるが。
「ふぅ、次に行きますの」
「いやぁぁぁぁっ!!」
何個か潰していくと、巨大な大部屋に着いた。ここは白い悪魔の繁殖所のようで、羽アリがうようよといる。
「あは、あははははははは、殺してやります……」
「ふう、ようやく慣れたようですの」
「いや、これは壊れたっていわないか?」
「言いませんの」
明後日の方向を見るシズクがリコリスから出てくる。身体のコントロールが戻ったリコリスは泣きながら、白い悪魔の巣へと特攻し、全身を炎に包ませ、炎の鎧とし、バトルアックスにも炎を纏わせて斬る毎に爆発を起こさせて、蹴散らしていく。馬鹿力が増幅された状態になっている現状、炎では大丈夫だが、根を傷つけている。
「いい子、いい子ですの~痛いの痛いの飛んでいけ~ですの~」
その傷ついた場所をシズクが癒して治していく。当然、シズクと俺、クロネにも襲いかかって来る。
「羽虫風情が、シズクの邪魔をするなですの」
背中から現れた水の鞭が縦横無尽に動き回り、纏めて数十体を切断していく。ただ、シズクの身体がほんの少しずつだが、小さくなっていっている。水が無い為、自身を構成する水を使っているのだから当然だ。治療にも同じ事が言える。
「うにゃにゃにゃ!!」
そして、クロネは俺に近づいて来る連中を影から出現させた刃で貫いていく。俺もどんどん矢を放つが纏めて殺せていない。
「というか、シロアリはゴキブリだよな。巣に毒を流し込んだら終わらないかな?」
「にゃあ?」
「やってみたら~」
さあ?という感じで小首を傾げるクロネに、取りあえずリンは賛成みたいだし、物は試しとやってみる。羽アリが取れて、巣の部分が露出した場所がある。そこを狙って射抜く。リンのサポートも有り、問題無く命中して、奥深くまで食い込んだ。その部分から変色が始まったので、俺は次々と射ていく。リコリスの方は、相変わらず大量の白い悪魔をなぎ払い、巣へと近づいていく為にそちらに敵が集中してくれる。爆発で纏めて殺されたスペースに大量の羽アリが直ぐにでも埋めてくるので倒す事は大丈夫みたいだ。怪我はすぐにシズクが癒しているし、基本的に横振りがメインになったようで、根は大丈夫だろう。
「ん?」
「援軍だ~」
重い振動がどんどんこちらに近づいて来る。そして、現れたのは神聖水樹のウッドゴーレムとその護衛であるキリル達と水の精霊達。
「やっと来たですの」
「呼んだのか?」
「ジリ貧になるだけですの。駄目、でしたの?」
不安そうに聞いてくる身長30センチくらいの幼女。流石にここまでなっていて、駄目なんて言わない。
「いや、良くやってくれた。どうせ撤退する予定だったしな」
「まあ、普通に数が違いますの……」
「kgkaags」
「gaapker」
「htyaj」
キリルの指示で次々とカマイタチが放たれて大量の羽アリ達が殺されて行く。それと同時に床には大量の水が流れて来る。俺はシズクを抱き上げて、ウッドゴーレムの場所まで移動する。
「ふふふ、私達、一斉射撃ですの!」
シズクの号令に従い、流れ出てくる水を圧縮してレーザーのように放ってなぎ払う。毒を受けていた巣は崩れ落ち、中から大量の死体が転がり出てきた。どうやら、矢に付いた毒を飲んだりしたようだ。そのうちの1本が巨大な白い悪魔に突き刺さっている。そいつの周りにいるのが、特に被害が大きい。まだ微かに生きているようだが、その姿を確認した瞬間。クエストが現れた。内容はホワイトアント・クイーンの討伐。視界に入らないとクエストは発動しないようだ。だが、もう仕留めたのも同じだ。毒矢を追加で射てやるとあっけなく死亡した。ひょっとすると、リアが頑張って浄化していたから、こいつらは毒にやられずに生きていたのかも知れないな。毒は地底湖だったし。そして、その後も後続として、アイディリアがシャドウキャットやクローラー達を率いてやってきて、鋼糸や剣で虐殺していく。一匹も残さずに殲滅した。ただ、上の階層にもまだ居るが、巣は破壊したのだし、数は減るだろう。