表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全ノープラン宣言  作者: 想多メロン
究極の選択
44/51

香子ちゃんと一緒に

俺は執筆をしていた。

そもそも、俺と香子ちゃんがモデルになっている恋愛小説なので、話の内容的にはいつでもハッピーエンドで終わることができる。


しかし、まだ終わるわけにはいかない。

一つは薫子さんへの読み聞かせがいつまで続くか分からないこと。

それともう一つは、執筆を終わらせると香子ちゃんが消えてしまうかもしれないということ。


そんなわけで、正直現在の話は、イベントを盛り込み、無理に引き延ばしているような状態だ。

これといったアイデアも出ないまま時間だけが過ぎていく。


ふと時計を見ると、そろそろ準備をしなくてはいけない時間。



「千丈川さん、今日も病院ですか?」

「うん。とりあえず今日も行ってきます」


「私も付いていっていいでしょうか」

「どうだろう……」


「あ、万年筆の中にいますから」

「それならば構わないと思いますよ。帰りに出てきてどこか食事でもしましょうか」


「了解しました」


「あ、それと、病院の看護師さんで、この小説を読ませて欲しいって人がいるんだけど、構わないかな?」


「え? 私の了承なんて……」

「そうはいかないよ。一応パートナーなんだし」


「あ、そうですか。全然構いませんよ。ファンが増えるのはいいことです。」


にっこり微笑む香子ちゃんは、本当に美しい。

この笑顔を失わないためにも執筆を続けなければ……。


そんなわけで、一緒にお出かけ。

鞄に万年筆を入れて、出発。


いつもの高級外車。

私の執筆の為と中にはノートパソコンが設置されている。

行き帰りはどうしても二時間程度かかるので、その時間を執筆に当てている。


しかも、お気に入りの缶コーヒーが入った小型の冷蔵庫も完備してある。

その他にもいろいろと提案されたが、全て断った。

コーヒーの件は、俺がコーヒーを買うためにいちいち車を止めてもらうのに気が引けるからだ。


ノートパソコンは、専用の金具で俺の打ちやすい角度に設定して固定している。

執筆専用車両だ。


さっきの続きでアイデアを練る。


町の風景を見て、いろいろアイデアを探すのも習慣になっている。


結局、何にもアイデアが出てこない内に病院についた。


いつもの病室へと向かう。


廊下を歩いていると、この間の看護師さんに出会った。


「こんにちは」

「あら、今日はお連れさんも一緒なのね」


……! ちょっと待て! 何だって?


万年筆は、鞄の中、香子ちゃんは現れていないはず。


「あ、私、見えるんだ。こんな仕事しているとね」

「何がですか?」

「魂かな……。で、その人が小説のパートナー?」


「ええ、まあそうです」

「小説の件、いい返事もらえました?」

「ええ、今日コピーを持ってきました。どうぞ」


そう言って鞄から原稿のコピーを取り出し、渡した。


「うわぁ! ありがとうございます。仕事終わったら早速読みますね」


そう言って、看護師さんは、去っていった。


その後、いつものように朗読。

特に今日も大きな変化はない。


二回の朗読が終わって、帰ろうとしたとき、おばさんが言った。


「病気自体はもう治っているはずなんですよ」

「先生がそう仰ったのですか?」


「ええ」

「では、何故目を覚まさないのでしょう」

「それは私にもわかりません」


前から思っていたことをこの機会に言うことにした。


「実はですね、たたらにこの状態を説明してもいいでしょうか? 酷く心配しているので……」


おばさんは少し考えて、言った。


「そうね、たたらちゃんは知っておくべきかもね」


「後ですね……。俺の親友二人にも事情を話したいのですが」


「千丈川さんが親友と仰る人であれば、構いませんよ」


にっこり笑ってそう言った。


「私たち夫婦がこのことを伏せていたのは、この子のことをインターネット上で酷い中傷が広がったことがあったからなんです。それさえなければ特に問題は……」


「ああ、その件でしたら既にさっき言った親友が片づけました。二度とそんな気を起こさないほどにね」


「犯人がいたのですか?」

「ええ、しっかり証拠も掴んで、完全にねじ伏せたようですよ。もう安心して下さい」


「何だか……、何から何まで……、ありがとうね。感謝しています」


「いえいえ、こっちが勝手にやったことなので。あ、ちょっとトイレに行ってきます」


何だか延々とお礼を言い続けられそうだったので、一旦話を切って部屋の外に出た。


「千丈川さん……」

横には香子ちゃんがいた。


「私、さっきの看護師さんとお話がしたいので、ナースステーションに言ってきます」


「いいけど、もう朗読も終わったし、おばさんに挨拶してから地下の喫茶店でまっているよ。車もちょっと遅らせてもらっておく」


「ありがとうございます。ではまた後で」


そう言って、香子ちゃんはナースステーションへ向かった。


三〇分後、喫茶店に香子ちゃんは現れた。

一度飲んでみたかったと言っていたメロンソーダが飲めて、ご機嫌の様子。


「では、そろそろ戻ります」

そう言って、香子ちゃんは消えた。


帰宅後、たたらに電話をした。

現在の様態、病院の場所、それから芥川のこと……。

たたらはずっと泣きながら聞いていた。


そして、不本意ではあったが、小説には芥川の話を書いた。

実際より、更にボコボコにしてやった。

香子ちゃんの審査通るかな、ちょっとR15かも。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ