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完全ノープラン宣言  作者: 想多メロン
あの葛川さんは
32/51

アルバム

帰りの車。

ホタルを満喫した香子ちゃんは、ずっと上機嫌だった。

「凄かったんですよ! フワァ~っていくつもの光がいくつもあちこちに……」


ま、高校卒業するまで毎年見ていたから、知っているけどね。

これだけ喜んでくれたら連れてきた甲斐があるというものだ。


「そう言えば……」

「ん?」

「どなたかに声をかけられました」

「え?」

「私の顔を見るなり、駆け寄ってきて……。人違いだったみたいですけどね」


……ま、そりゃそうか。


「どんな人?」

「女性の方でした。同い年くらいの」

「へぇ」

「私のことを"カオルコ"って読んでいました」

「似ているね」

「そうなんです。私も最初返事しそうになりましたから」

「『どうしてここに? 心配したんだよ!』って」


……"カオルコ?"どっかで聞いたような……。


「それで、私がその"カオルコ"さんでないことを説明したら、随分がっかりされていました」

「よほど似ていたんだろうね」


「その方、"多々羅川たたらがわ たたら"と言う方でした」

「名前聞いたの?」

「いえ、その方が自分で……。何度も仰ったので……」


……ん? その名前は覚えがあるぞ! 幼稚園の時、めっちゃくちゃ意地悪されたヤツだ。

中学でも何かと俺に突っかかってきて、周りから"千丈川は多々羅川 たたらに祟られている"って笑われたな。

思い出したくない名前だ……。


それにしても、"カオルコ"ってどこかで聞いた名前なんだよなぁ。

今日、帰りにお袋に持たされた荷物に、卒業アルバムがあったな。

帰ってからそれでも調べてみるか……。


いろいろ考え事をしていて、危うく"じゃがべー"を忘れそうになって香子ちゃんに怒られたりしながら、何とか家に戻ってきた。


部屋につくと、程なく香子ちゃんは消えた。


玄関の荷物を部屋の中へ。

紙袋に何冊も入れていたせいだろう、アルバムの入った袋が敗れてその場に散乱した。

今回、実家に寄った理由はこれだった。


幼稚園のアルバムを開く。

全部で二クラス。もも組とさくら組。

今考えたら、どうやって色分けしたんだろうな。

両方ピンクだし。


あ、いたいた。俺。何でよそ見してんの? 集合写真なのに。

視線の先は……葛川さん!?


……"葛川かつらがわ 薫子かおるこ"

葛川さん、"薫子かおるこ"って名前だったんだ……。


うわぁ、めちゃ可愛いな。俺の目に狂いはないって言うか。

隣にいるのは……、ゲゲッ!"たたら"だ。この頃いつも一緒にいたな。

だから、葛川さんに近づけなかったんだった。

葛川さんに話かけようと思ったら、必ずたたらが来て、追い返されたもんな。


まあ、アルバム持って帰ってきた収穫はあったな。

それにしても、香子ちゃん。たたらが間違うくらい似ていたんだな。

たたらもたたらで、何をそんなに心配していたんだろう。


まあ、いいか。 今日は疲れた。 明日以降に考えるとするか……。

そして俺は眠りについた。


数日後……


「千丈川さん」

数日ぶりに現れた香子ちゃんが言った。

今週は、お互い忙しくて殆ど合っていない。

「何でしょう?」


「私、千丈川さんのパソコンをお借りして、教えて頂いた"葛川さん"を調べてみたのです」

「何か分かった?」

「どうもフリーライターだった様です」


意外だな、そんなアクティブなイメージはなかったんだけどな。

どちらかと言えば、線の細い、少しか弱い感じだったはずだけどな。写真でもそんな感じだったし。


「自然災害の被害に合われた地域でお手伝いをしながら、全国にその様子を伝えていたようです。記事も読みましたが、非常に"魂"のこもった良い文章でした」


……すごいな。


「ところがですね……。彼女のブログが一年ちょっと前に更新されたっきりになっているのです」

「へぇ。どうしちゃったんだろう」


「この間、私がお逢いした多々羅川さんも、何やら心配されているようだったので、少し気になってしまって」

「確かにそれは気になりますね……」


「では、私は今日はもう……」

「最近忙しそうですね」


「すみません。いろいろとあって」

「謝る必要はないよ。お互い様です」

そう言って、香子ちゃんにキスをした。

そして、彼女は消えていった。


ちょっと気になるな……。俺も調べてみるか。

疲れていたが、何だか胸騒ぎがする……。


ネットでいろいろ調べていくうちに、意外な事実と遭遇した。


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