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完全ノープラン宣言  作者: 想多メロン
あの葛川さんは
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ドライブ

探すと言っても、どうする?

知ってそうな人に片っ端から連絡して聞きまくるとか?

ちょっと怪しくないか?

ってかそこまで絶対に見つけないといけないわけでもないし。


もし情報が集まったとしてもどうする?

いきなり会いに行くわけにもいかないし、言ったところで、相手は引くわな。


とりあえず、何かを調べるにはまずはネット。

検索サイトで"葛川"と。


うわ、ダメだ。この地名あちこちにある。


"葛川さん"ならどうかな……。

お、今度は人がヒットした。

結構多いな……。画像検索してみるか……。


小一時間ほど眺めていたが、いい加減飽きてきた。

多分、絶対に無理!


と言うことで、一時間で捜索打ち切り。


とりあえず、今日は休みなので、香子ちゃんが現れるまで執筆を進めておくか。



香子ちゃんは昼過ぎに現れた。

「何か手がかりは見つかりましたか?」

辺りを甘い香りが漂う。

休日の癒される瞬間だ。


「いや、全然」

「そうですか」


「今日はお出かけに行かないのですか?」

「どこか行きたいところがあるのですか?」

彼女から誘ってくるなんて珍しい。どこかリクエストがあるのだろう。


「出来れば……で良いのですが、千丈川の故郷を見てみたいです」

「別に構わないけど、何にもない田舎だよ」


本当に何にもない田舎なのだ。

と言っても田んぼだらけとかそういう感じでもない。


駅前にはそれなりにいろんな店があるが、そのほとんどが全国チェーンのお店という感じの田舎。

後、人が入っているのを見たことがないのに何故か潰れない個人商店がチラホラ。

観光名所が無いわけでもないが、教科書とかには載らないレベル。


「あ、間に合うかなぁ、近所にホタルが出る小川があるんだよ。運が良ければ見れるかもね」

「ホタルですか……。実際に見たことないです」


車で二時間ってところか。


早速お出かけ。

近所のガソリンスタンドでレンタカーを準備。

半日レンタルだから安い。


「そう言えば、私、車に乗るのも初めてかもです」

「シートベルトをして下さいね。では、出しますね」


実家へは高速使って二時間くらい。

途中のサービスエリアで買った"じゃがべー"が香子ちゃんのお気に入りだったようで、帰りにも必ず購入するという誓約を強要された。

あれ、確かに最初は美味しいけど、最後飽きてくるんだよな、俺の場合。


「実家にも来る?」

聞いてみた。

俺の故郷まできて、親に合わせないのも何だか気が悪い。

ただ、事情が事情だから、香子ちゃんだって色々思うところはあるだろう。

とりあえず、その判断を彼女に委ねてみた。


「千丈川さんに用事があれば、別に構いませんが」

そういう事であれば、今回はやめておこう。

あのお袋のことだ、面倒なことになるのは間違いない。

大体、あのお袋のマシンガントークに香子ちゃんが対応できるわけないだろうし。


丁度、二時間で実家最寄りの駅前に。

駅前ビルの駐車場に車を止めて、ブラブラと。

俺自身、大学時代から殆ど帰っていたなかったので、俺も懐かしい。


ただ、懐かしむ隙がないほど、変わっている。

初めて来る場所みたいだ。


「随分変わったな……」


たまに電話するお袋が全然変わらないから、何か勝手に町も変わっていないと思い込んでいたのかも。

ま、そりゃそうだよな。

三年ぶりだし。街も変わるわな。


「香子ちゃん、やっぱり俺の実家に行こう」

「分かりました」


俺の実家は駅からは十分もかからない。

まもなく実家に到着。


「ただいまぁ」

「あら、あんた何よ! いきなり帰ってきて!」

「ああ、近くまで来たからついでに」

物凄く驚くお袋。ま、想定内だけど。俺も電話くらい入れといたら良かったかな。


「あ、お袋、こちら香子ちゃん。葛川香子ちゃん」

「初めまして。葛川香子です。こんにちは」

香子ちゃんがペコリとお辞儀。


さすがのお袋も固まっている。

「ちょ、ちょっと! あんた! この方、あんたの彼女?」

「そうだよ」


「……そう。分かったわ。こんにちは、香子ちゃん。こちらこそよろしくね。さ、上がって。散らかっているけど」

こういうところ、切り替えが早い。あんまり考えていないだけかもしれないけど。


「お腹すいてる? 何か作ろうか」

まずお袋というのは腹の心配。これはどこでもそうなんだろうな。

「いや、高速のサービスエリアで食ってきた」

「あらそう。じゃ、お茶でも入れるわね」


「あ、お母さん何かお手伝いさせて下さい」

「いいのよ、長時間の車で疲れているでしょ、ゆっくりして頂戴」


……と、まあテンプレ通りの会話が交わされて。


「あ、あんた、今年はまだなのよ」

「何が?」

「ホタルよ。7月に入っているっていうのに、今年はまだ出てないの」


「香子ちゃん、後で見に行こうか?」

「はい、是非行きたいです」

にっこり微笑んだ香子ちゃんの姿を見て、お袋がため息をついた。


「香子ちゃん、本当に綺麗よねぇ……。私の若い時を見ているようだわ」

はいはい、これもテンプレ通りね。


「香子ちゃんみたいな美人のお嬢さんが、……こんなので良いの?」

そう言って、俺を指さした。


「千丈川さんにはいつも感謝しています。何と言っても私の……」

「ちょっといい!?」

俺は会話に割って入った。

話がややこしくなる気配がプンプンする。


「何よ? 二人で話している時に」

「いや、お茶をもう一杯欲しいかなって」


「そんなの自分で入れなさいよ!」


まあ、何とか誤魔化せた。

暫く他愛もない話が続いて……。


「もうこんな時間か」

時計を見ると、八時。

「行ってきたら? ホタル」


「香子ちゃん、行こうか」

「ええ」


二人で出かけた。

近所の川までは数十メートル。本当に目の前だ。


「おや?」

結構人がいる。ひょっとして……。


こんな偶然あるのかな。本当にホタルが出ている。

「香子ちゃん、ラッキーだよ。ホタル出ているよ」


思わず香子ちゃんの手を引いて走り出した。


「すごい…」

香子ちゃんは両手を口に当てて、ホタルに感動している。


高校卒業するまでは、男の俺でも毎年これを見て感動していた。

ホタルって凄いんだよな。


「千丈川さん、向こうにも……」

「好きなだけ見てくればいいよ。ずっと川沿いだから、迷子になることもないだろうし」


「では、お言葉に甘えて……」


香子ちゃんはドンドン上流に向かって歩いて行った。


結局香子ちゃんが帰ってきたのは三十分後だった。


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