表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全ノープラン宣言  作者: 想多メロン
伝えたいこと
25/51

それでも君を

「ちょっと行ってくるわ。ここにお金置いておくから勘定だけ頼むね」

「分かった、でも僕は待っている。あの店にいるから」

「先輩……私……」

「了解。天井川、さっきお前本気で喜んでくれたよな。嬉しかったよ」

そう言って店から出た。

まだそれ程遠くへは行っていないはず。

と言ってもどこに行ったのかは検討も付かない。

携帯も持っていないし、連絡も取れない。

お金は辛うじて少し持たせてはいるが、ちゃんとその使い方を理解しているかどうか怪しい。


迷子の猫を探すみたいだ。


さてどうする。


「千丈川さん」

振り向くとそこには葛川さんが立っていた。

「良かったよ。突然飛び出して心配したよ」

「申し訳ありません。どうしても居た堪れなくなってしまって」

「少しは落ち着いた?」

「落ち着きましたが、何も解決していません。また解決する方法も見つかりません」


「何を解決したいの?」

「私は実態も曖昧です。家族もいません、子孫を残すことも……」


「千丈川さんへの気持ちは、前にお伝えしたとおりです。しかし、私は何も出来ません。こっちの世界では完全にヒロイン失格です」


「あのさぁ」


「何でしょうか。何なりと仰って下さい。覚悟は出来ています」


「お店に帰らない?」


「でも……」


「俺は、葛川さんが好きです。愛しています」


「でも……」


「それでも好きです。愛しています」


「有難うございます」

「葛川さんが気にしていた件に関しては、一度も欲しいと思ったことはありません。寧ろこうやって楽しい時間が減ることが、勿体なくて仕方がありません」


「千丈川さん……」

「さ、店に戻りましょう。最上川達も心配していましたよ」


「本当にすみません。私……」

「ま、こういうのも恋愛の醍醐味ですよ」


「まだ小説には上手く反映は出来ていないようですね」


言いやがったな! この野郎! 


それから店に戻ったが、既に閉店していた。

最上川が待っているだろうから、飲茶家飯盗に行った。


「おかえり。さっきはごめんね。何か気に触ることを言ったみたいだったね」

「いえ、こちらこそ心配をお掛けしてしまって」


「あ、良かったぁ。帰ってきたんだね。さっきはゴメンナサイ」

トイレから出てきた天井川。

コイツも待っていたのか。律義なヤツだ。


「で?」

最上川が俺を見る。

「大丈夫」

ヤツとはこれで通じる。話が早い。


「こんばんは、千丈川さん」

マスターがやってきた。

「今日は賑やかだね」


「ええ、あ、紹介します。最上川は良いとして、こちらが葛川さん、そしてこっちが後輩の天上川」


「露骨ですねぇ、先輩。"こちら"と"こっち"で差別化ですか?」

「いや、"区別"しただけだ。気にするな」


「あはは、よろしくお願いします。この店のオーナー件店長の木曽川きそがわと申します」


「「こちらこそ」」


「しかし、木曽川さんですか。モガ、最強のライバルですね」

天上川は最上川に言った。

「モガって誰?」

思わず聞き返す。

「え、最上川さんのことですけど」

相変わらず悪びれもせず天上川が答える。


「最上川って"モガ"?」

最上川に聞く。

「何か、そうなった。僕が"テン"って読んだら、"何? モガ"って」


いつからそういう関係になったんだ? この二人。


「でしたら、私も千丈川さんを"セン"とお呼びした方が良いですか?」

「だったら、俺も"カツ"って……ってそこは見習わなくって良いですよ。葛川さん」


「私、"キソ"って呼ばれるのは抵抗があるな……」

マスターが独り言。


「でも良いですよね、相性で呼び合うのって。私、憧れちゃいます」


「日頃は何て呼んでいるんですか? 先輩」

「"葛川さん"だけど……」

「そりゃダメですよ」

「ダメなのか?」

「そりゃそうですよ、特別な人には特別な呼び方してもらいたいもんですよ、女子は」


「香子ちゃん」

思わず言ってしまった。

「はい」

元気良く葛川さんは返事をした。どうやら気に入ってもらえたようだ。

「個人的には呼び捨てでも……」

「とりあえず、これで勘弁して下さい」


「あはは、もう僕たちは必要なさそうだね。そろそろ帰ることにするよ。またな、千丈川」

「おう、心配かけたな。また連絡くれよ」

「次はちょっと先になるかもしれないよ。じゃ、行くよ。準備しな。テン」


そう言って、二人は店を出た。

「あの二人がねぇ」


「じゃ、俺達もそろそろ」

「了解」

「香子ちゃん、帰ろうか」

「はい、千丈川さん」


どうも俺の呼び方は変更なしの様です。

ま、それで良いんだけど。


帰り際にマスターが香子ちゃんに何やら話しかけていた。

彼女はよくわからない表情をしていたけど。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ