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完全ノープラン宣言  作者: 想多メロン
俺にとって
18/51

契約彼女

「どうして? あの後ずっと無言で、お友達随分気にされているように見えましたが」

帰宅後葛川さんはそう言った。


「説明しても信じてもらえないよ」

「友達でもですか?」


「誰でも。普通あり得ないから」

「それにしたって、無言はちょっと」


「話、聞いていたの?」

「少し聞こえていました」


「どう言えば良かった?」

「どうって」


「だって説明できないでしょ、君との関係。なんて説明したらいいのか分からなくって、ずっと考えていた」


「そうだったんですか」


「葛川さんだったらどう説明する?」

「私ですか? 私は誰からも聞かれることがないので」

「じゃ、小説の中で聞かれたとしたら?」

「その台詞を決めるのは、私ではなく貴方ですから」


「葛川さん、ヒロインじゃない」

「ヒロインも台本持っています。ヒロインが勝手に台詞を考えたら、逆に怒られちゃいませんか?」

極めて正論なだけに、すこし馬鹿にされているような気分になった。

それに何だか一人だけ勝手に悩んでいるようで、段々腹が立ってきた。


「手伝ってくれるんじゃなかったの?」

「執筆のお手伝いは全力でさせて頂いているつもりです。勿論貴方が意見を求めた時だけですが、台詞の選択、状況の提案、イベントの立案。それからほんの少しですが、執筆に集中できるように身の回りのお手伝い。でも、今回は、貴方自身のプライベートなお話です。私が口出しすることではないように思います」


「じゃあ、俺が最上川といる間、ずっと黙っていたことだって、プライベートなことだろ? 最初に口出ししてきたのは葛川さんの方じゃないのかなあ」

「私は……ただちょっと心配になって……」

多分そうだったんだと思う。葛川さんのことだから、俺のことも最上川のことも心配してくれたんだろうな、と。


頭ではわかっているんだけど、少し頭に血が登っている。

「葛川さんは気楽で良いですね」

「そうかもしれません……。すみません。お力になれなくて」


「仕方ないかな。よく考えたら、大体"人"ですらないのだから、分かんないよね。小説の中の友達だって、全て俺が用意するんだし」

「そうですね。ありがとうございます……」


「と言うことは、俺が決めたらその通りになるってことか。この際、恋人にしようかな。どうせ実体はないわけだし。出てきた時だけの契約彼女。いい考えだな、どう?」


葛川さんは俯いたまま座っている。彼女の膝に何かが落ちて光っている。


しまった! 最低だ! 俺!

ようやく我に返って自分の失言に呆然とする。

それでも気力を振り絞って、何とか声を出した。


「あの……、葛川さん?」


声をかけた瞬間、葛川さんは消えた。


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